5才からはじめるプリンセス入門②|第一章 婚約者、見たことない人でした問題
ある朝、あなたは目をさまします。
いつもどおり、ふかふかのベッドで、
いつもどおり、小鳥が窓辺でさえずっていて、
いつもどおり、朝ごはんにはイチゴののったパンケーキがのっています。
平和です。
そこに、お父さま(国王)が入ってきて、こう言います。
「来月、結婚することになったからね」
……は?
あなたは5才です。
パンケーキのイチゴが1個おおいか2個おおいかで人生が決まるくらいの、
大事な朝です。結婚とか、そういう話ではありません。
しかしお父さまは、もう出ていってしまいました。
残されたあなたと、小鳥と、イチゴ。
ここで、多くのプリンセス志望者は、次のどれかをやります。
① 泣く
② ドレスの色を気にしはじめる
③ 小鳥に相談する
全部、不正解です。
泣いても結婚は止まりません(むしろ予定通り進みます)。
ドレスの色を気にしている場合ではありません(まず相手が誰か知りません)。
小鳥はしゃべりません(これは重要な事実です)。
ではどうするか。
情報を、集めます。
政略結婚でいちばん最初にやることは、
ドレスを選ぶことでも、泣くことでもなく、
「婚約者が何者なのかを把握すること」 です。
なぜか。
相手がどんな人かによって、
この先5年の生存戦略がまるっきり変わるからです。
参考までに、婚約者パターンをざっくり分類しておきます。
パターンA:やさしい王子 いちばん楽そうに見えて、実はいちばん厄介です。やさしい王子は、たいてい国を統治する気がありません。あなたが全部やることになります。
パターンB:こわい王子 最初のひと月は地獄です。ただし、こわい王子は退屈しています。あなたが「おもしろい人間」だと判明した瞬間、関係は逆転します。
パターンC:無関心な王子 存在を忘れられています。これは、いちばん自由がききます。好きに国をいじれます。
パターンD:まだ3才の王子 …あります。政略結婚の世界では、よくあります。この場合、育てます(*これは②巻の範囲です)。
パターンE:会ったことのない王子 いちばん多いのがこれです。つまり「婚約者、見たことない人でした問題」の本丸です。
さて、ここで大事なことを言います。
見たことない、は、情報です。
「見たことないから、わからない」ではありません。
「見たことない、という状態そのものが、すでに何かを語っている」のです。
たとえば。
・なぜ、会わせてもらえないのか
・なぜ、絵姿すら届かないのか
・なぜ、名前しか教えてもらえないのか
これらはすべて、相手の国(あるいは自分の国)の事情を映しています。
見せられないほど何かがある、のか。
見せる必要がないほど力関係が決まっている、のか。
そもそも実在しない可能性も、ないわけではありません(ごくまれにあります)。
プリンセスというのは、与えられた情報ではなく、
与えられなかった情報から読む生きものなのです。
5才には、ちょっと早いかもしれません。
でも、大丈夫です。
あなたにはまだ、イチゴが残っています。
イチゴを食べながら、ゆっくり考えましょう。
「なぜ、わたしは、まだ会ったことのない相手と結婚するのか」
この問いを持てた時点で、あなたはもう、ただのお姫さまではありません。
次の章では、「情報の集め方(小鳥は使えないので別の方法)」 について見ていきます。

