問題は何も変わっていないのに、悩みが消えた日。
問題は、何ひとつ解決していませんでした。
相手も変わっていない。状況も変わっていない。
それなのに、昨日まであれほど苦しかった悩みが、急に小さく見えたのです。
変わったのは、問題ではありません。私が立っている場所でした。
悩んでいるとき、私たちは「どうすれば解決できるか」を考えます。
相手を変える。
状況を改善する。
自分がもっと頑張る。
しかし、何をしても動かない問題があります。
以前、仕事上のある出来事が頭から離れなくなったことがありました。
こちらはきちんと説明したつもりなのに、相手には伝わらない。何度話しても、同じところですれ違う。
「どうすればわかってもらえるのだろう」
そう考えるほど、相手の言葉や態度が気になり、頭の中で何度も会話をやり直していました。
ところが、あるとき、こんな問いが浮かびました。
「これは、わかってもらわなければ前に進めない問題なのだろうか?」
その瞬間、少し景色が変わりました。私は問題を「相手に理解してもらうこと」として捉えていました。しかし、本当に必要だったのは、相手の理解ではなく、必要な情報を伝え、自分の役割を果たすことだったのです。
相手が納得するところまで、自分が責任を負う必要はありません。
問題そのものは何も変わっていません。
相手の考えも、態度も同じです。
ただ、「相手を変えなければ終わらない問題」から、「自分の役割を果たせば区切れる問題」へと、見え方が変わりました。すると、不思議なほど気持ちが軽くなったのです。
人事や管理職の現場でも、似たことがあります。
何度注意しても行動が変わらない部下に対して、上司が「本人に反省させなければ」と悩み続ける。
しかし、本当に必要なのは反省でしょうか。
期待する行動を具体的に伝えることかもしれません。業務の仕組みを変えることかもしれません。配置や役割を見直すことかもしれません。
「反省させる」という視点に立つと、相手の内面を変えなければ問題は終わりません。「再発を防ぐ」という視点に立てば、打てる手は増えていきます。
良い問いは、問題を消すのではなく、問題に支配されない場所へ自分を移してくれます。
私たちは悩んでいるときほど、ひとつの見方に閉じ込められます。
「こうなるべきだ」
「相手はこう考えるべきだ」
「この問題は解決しなければならない」
その思い込みに気づかないまま、同じ場所から答えを探し続けます。
相手の話を聞いているつもりでも、自分の経験や助言が頭をよぎり、目の前の相手への集中が途切れることがあります。こうした心の動きは「ブロッキング」とも呼ばれます。
悩みについて考えるときにも、似たことが起きているのかもしれません。
「普通はこうする」
「私が何とかしなければ」
「わかってもらう必要がある」
そうした頭の中の声が、別の景色を見ることを邪魔しているのです。
では、今抱えている悩みを、別の人の立場から見たらどう見えるでしょうか。
一年後の自分なら、どの程度の問題だと感じるでしょうか。
そもそも、その問題は本当に「解決」が必要なのでしょうか。
質問力とは、正しい答えを出す技術だけではありません。
自分が無意識に立っている場所を見つけ、別の場所へ移動する力でもあります。
問題を動かせないときは、問題の前で立ち尽くすのではなく、自分の立ち位置を少し変えてみる。すると、問題はそこにあるままでも、悩みではなくなることがあります。
今日のひと言
良い問いは、問題を消すのではなく、問題に支配されない場所へ自分を移してくれます。
今日の問い
あなたは、誰を変えなければならないと思っていますか?
その問題は、本当に解決しなければ前へ進めませんか?
別の立場から見たとき、その悩みは何に見えるでしょうか?
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