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【noteでBL】春たけなわの

※こちらは企画参加作品です。

皆様こんばんは、四四田です。

素敵企画 #noteでBL 2回目の参加です。
参加表明ちゃんとしてないことに気づいたのが締め切り前日。
というか、日にちと曜日感覚が失われていて、参加する気満々で書いてないことに気づいたのが締め切り前々日(なんでいつもそうなのか)。

今回のお題は、
卒入学式・ヤンキー・スポブラでした。

難しそうすぎて最初にお題を拝見したとき笑ってしまったのですが、なんとか形になりましたでしょうか……!

ちなみにまたバレエダンサーです。
いつもバレエダンサー……。
前回がちょっと苦しい感じだったので、軽くて阿呆な感じを目指しました。
なみさん、今回もありがとうございました。
ご笑納頂けましたら幸いです。

ちなみに本文の文字数は3363文字でした✨

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「この季節になると思い出すな……潤がヤンキーだった頃、スポブラ姿で俺に迫ってきたことを……」


春だ。
春の昼下がりのポカポカしたダンススタジオ。
バレエ学校の卒業記念公演の稽古中。
卒業するのは俺たち、ではなく、小さな未来のバレリーナたちだけれど、俺たち団員ももちろんゲストとして出演する。
卒業する後輩たちのための稽古途中、休憩時間にスタジオの中でストレッチをしていたら、聞き捨てならない言葉が聞こえて、咄嗟に顔をあげてしまった。
床に寝っ転がったまま、こちらを見てニヤリと笑っている桂木先輩の顔と目が合う。ああこれは、わざと俺に聞かせるために言ったのだな、なんなら担がれたのかもしれない、と理解をした途端、スパンと小気味いい音を立てて、先輩の頭がはたかれた。

「ヤンキーじゃない、スポブラじゃない、そもそもお前なんかに迫ってない、嘘を吐くな嘘を!」
桂木先輩の頭をはたいた潤一さんは、奇麗な顔に青筋を立てて怒鳴った。

怒っていても顔が奇麗だなんて思ってることがバレたら、怒りの矛先がこちらに向きそうだから言えないけど。

怒鳴られ、はたかれた、とうの本人はと言えば、頭はさすっているけれど何も響いた様子はない。
「えええ、潤ちゃんたら忘れちゃったのね」
などと軽口を叩いている。
「お前の減らず口はどうやったら閉じるんだ。縫うか? 縫えばいいのか?」
「やーだもう、潤ちゃんこわーい」

けらけらと笑いながらこちらへ逃げてくる桂木先輩に、勘弁してくれよ、と思いながらも強くは出られない。
俺は潤一さんには滅法弱い自覚があるし、桂木先輩にもそのことはバレているけれど、なんやかんや桂木先輩本人にも頭が上がらないのだ。
いつの間にか関係なかったはずのじゃれ合いに巻き込まれてしまっていると思っていたら、
「国枝、潤ちゃんのヤンキースポブラ姿見たいよねえ」
悪魔の囁きが聞こえた。

「え」
「は?」

やたらドスの効いた潤一さんの声が聞こえたなと思ったのと、目の前に桂木先輩のスマートフォンが突き出されたのはほぼ同時で、そこには若かりし頃の金髪の潤一さんが写っていた。

ていうかスポブラって……、

「ただの衣装じゃないですか」

「あったりまえだろうが何ちょっと残念そうな声出してんだ!」
まずいと思った時にはもう口から言葉が出ていて、結局俺まで潤一さんから怒られる羽目になった。

「でもまあスポブラに見えなくもなくね?」
潤一さんのクレームはどこ吹く風で、桂木先輩はスマートフォンの中の写真をしげしげと眺めている。身長差のある二人は、桂木先輩が立ち上がってスマートフォンを高い位置に掲げてしまえば、潤一さんは到底届かない。片手で押さえ込まれながらも、抵抗してぴょんぴょん飛び跳ねている潤一さんははっきり言って愛らしい。
踊っている時は発揮できる跳躍力も、こんなシチュエーションだと役に立たないものなんだなあと、我ながら阿呆なことを考える。
「いや、どう見ても衣装ですよ。まあ、舞台上にいるのがわかるせいかもしれないけど。っていうかこれ何の時です?」
「20年前の卒業公演。なんだっけ?」
「当時うちに教師としていた、コリオグラファーのマルセル・エルンストの作品な。わかると思うけどコンテンポラリー。ちなみに髪色も指定があって金髪にしてるだけって何写真送ってんだよ!」
「えーいっ」
という声と共にウインクが飛んでくる。そうして俺のスマートフォンがシューズバッグの陰でブルッと振動した。
咄嗟にスマートフォンを掴んで立ち上がったのは不可抗力だ。
「あ! 国枝テメェこのやろ」

さっきはいきなり目の前に突き出された勢いで、きちんと見られなかった潤一さんの写真を見つめる。
金髪に、スポブラというよりは、不可思議に短いタンクトップ姿の潤一さん。
若い。
可愛い。
奇麗だ。
どんな作品なのかこれだけじゃわからないけれど。
「てか、金髪なだけでヤンキーって、ヤンキーの解像度低すぎませんか、桂木先輩」
「だって本物のヤンキーなんて見たことないもん。でもまあ、ヤンキーって言ってもちょっと納得できるでしょ? 潤ちゃんちょっとガラ悪いし」
「はあ? ふざけんなっ」
キャンキャンと吠える潤一さんは確かに少しガラが悪いかもしれないのだが、俺の目からは可愛くしか見えない。惚れた弱みかもしれないが、本人にはそんなこと言えない。ただ桂木先輩の生ぬるい視線は、俺が今考えたことが筒抜けなのだろうなと思うと鬱陶しかった。
潤一さんは、さっきまで桂木先輩にやっていたみたいに、今度は俺の周りをぴょんぴょんと飛んでいる。俺の身長は桂木先輩とほとんど変わらないから、桂木先輩からは、さっき俺に見えていたのと同じような様子が見えているだろう。
それがなんとなく嫌で、俺は潤一さんが飛び跳ねないで済むように、身を屈めた。スマートフォンは死守しながら。
「なんですか」
「なんですかじゃない。消せっ」
「いいじゃないですか、過去の作品の写真でしょ。ダンサーなんて見られてなんぼなんだから」
「そういう見方してねえことはわかってんだよ。ろくでもない目で見てるくせに」
ギクリとした隙に、ヒョイッとスマートフォンを取られてしまう。
「あ」
俺のスマートフォンをまんまと手に入れた潤一さんは、勝手に操作をしてあっという間に自分の写真を削除したようだ。
「いや人のスマホを勝手にいじらない。ていうかなんで俺のパスワード知ってるんですか」
「お前が俺の入団日をパスワードにしてるのが悪いんだよ。ってか変えろって言ったのになんで変えてない」
「変えてたら写真消せなかったくせに」
悔しまぎれにそう呟くと、潤一さんは、
「あ、そっか。じゃあそのままでいいよ」
と、あっけらかんと言い放った。そうして、ぽいとスマートフォンを投げ返してくる。
「国枝おまえ、パスワード変えるなよ」
俺のスマートフォンの写真を削除して気が済んだのか、潤一さんはくるりとスタジオを出て行こうとする。
「どこ行くんすか」
「休憩なのはおまえらだけで、俺は今日は上がりなの。まったく余計な時間食った……」
ぶつぶつと文句を垂れながら、ロッカーに向かおうとしている潤一さんに、桂木先輩はひらひらとスマートフォンを振ってみせる。
「潤ちゃん、俺のスマホは消さなくていいのー?」
「よく考えたら、お前その写真自体持ってるだろ。スマホ消しても原本があったら意味ねえわ。あ、だからって国枝にもう変なの送るなよ」
じゃあな、と言いながら去っていくのを桂木先輩と二人で並んで見送る。
「ざーんねん、送るなって言われちゃったから送れないや。ごめんね、国枝」
「なんなんですか、理不尽すぎませんか。桂木先輩のせいで、潤一さんに怒られただけで終わったんですけど……」
「恋のキューピッドしてあげようと思っただけだけど」
桂木先輩の余計な一言に動揺してバーに頭をぶつけてしまう。
揶揄われている。
動揺と、予定外の痛みにうずくまって涙目になっている俺の頭の上に、タオルがバサっとかけられる。
「もう、なんなんすかっ」
と、勢いよくタオルを振り落とすと、至近距離で潤一さんの顔があった。
予定外に予定外が重なって、もう一度バーに頭をぶつけてしまう。二度の物理的な衝撃を喰らって、言葉を発せないままうずくまった俺の上に、潤一さんのため息が降ってくる。
「おまえ、ほんと俺の顔好きだな」
顔以外も全然好きですけど、という反論をうずくまったままググッと飲み込む。
めちゃめちゃ好きだが、潤一さんにとっては自分なんか範疇外なのはわかっている。なんかちょっと厄介な後輩に懐かれてるなくらいにしかどうせ思われていないのだから。この居心地の良い状況をぶち壊して、可能性の低い賭けに打って出られるほど、俺の心臓は強くない。

「もしかして結構顔以外も好きなわけ?」

ぼそりと聞こえた声にびっくりして顔をあげようとするのを、上から押さえつけられる。
「今のなしっ!」
やたらと力強い声で潤一さんは宣言すると、ダッと駆け去った。駆け去る瞬間、潤一さんの横顔が見えた。

真っ赤に染まった潤一さんの顔が。

「は?! え、今のなんですか、どういうことですか!」
「なんでもねえ、いいから稽古戻れっ」
「え、無理でしょ、ちょっと詳しく」
「うるせえっ」
逃げ去る潤一さんを追いかけようとする俺の背後で、桂木先輩の鬱陶しい声が「春だねえ」と言った。

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