見出し画像

【noteでBL】惑星ロータス

ごめんなさあああああああああああああああああああああい!!

ものすごく遅刻しましたが、

今月の #noteでBL  です!!!!

どうにかこうにか8880字にまとめました。
本当に遅くなって申し訳ございません。

そんなわけで、挨拶は後回しだ。
とにかく投稿をさせてください、よろしくお願いいたします!

もうあのいろいろと問題アリアリなので、明日言い訳記事を別途出します!!

表向きは「生きる時間」ですが、あなたが思う「死」をテーマにしたブロマンス〜BLの小説を書いてください。
文字数は〜1万字以内。
8月11日(月)に各々のnoteに投稿してください!


--------------------------------------------------


宇宙のどこかに、ロータスという惑星がある。

ロータスはその名の通り、蓮の花に良く似た形をしていて、生きものは死ぬと、その惑星の花びらの上に生まれ落ちる。種族も、生まれも、何もかも関係なく、誰もが平等にロータスに生まれる。

「だからね、シーナラ。死んだ人にもし会いたくなったら、ロータスに行けばいいのよ。ロータスに行けば、またその人に会えるの」

そんな風に、母親から寝物語に聞かされた。惑星ロータスの話。
母が当たり前に話していたものだから、幼い僕は、みんなロータスのことを知っているんだと思いこんでいて、よその家では誰も、親からそんな話を聞いたことがないことを知ったのは、しばらく経ってからだった。
それで、ああ、あれは、母親が子どもに話し聞かせるための作り話だったんだと。飼っていた犬が死んで、落ち込んでいる息子を元気づけるための嘘だったんだと、そう思っていたのに。


今、目の前には、そのロータスからの使節団だという人々がいる。

「SDSSα-MI6900。前時代にすでに報告されていた、56億7千万光年先にある星だ。ロータスという星が持つ特異性については……、以前からまことしやかに囁かれてはきたが、いまだ具体的に解明されてはいない。その懸念事項について真剣に向き合うには、通常外交を結ぶ相手とは言い難い、物理的な距離があった。けれど、」
ロータスについて、一般職員へも丁寧に説明をしてくれていた上司は、ここで言葉を切った。

「正式に使節団が来てしまう以上は迎えないわけにもいかない」


惑星ロータスの特異性こそ、母が寝物語に語ってくれた話。
ロータスでは、我が星で死んだ者たちが、今も変わらず生きている。

これだけの特異性がある星との外交には、さぞ気を使うだろう。
何しろ、死者が生きているとあれば、それを取り戻したいと考える人間は引きを切らないだろうし、あるいは、死んだままでいてほしい、帰ってこないでほしいという思惑を持つ人間もいて不思議はない。
それらの思いは、立場や事情によって変わるけれど、ロータスの存在は、死、というものの意味それ自体を揺るがすものだ。
ロータスの特異性について、こちらが把握できているのは、かつて前時代に、偶然ロータスの地に立ち、伝えてきた者がいたからだ。けれど、ロータスからのアクションはこれまでの間何もなかった。だからこそ、外交を持たずに済んでいた、と言える。
こちらも、距離を理由に、積極的なコンタクトをはかったことはない。
決して一枚岩というわけでは無い現状の政府に取って、荷が重い存在だというのが正直なところ。
存在を知ってはいても、無いものとして扱って、死の概念が崩れかねない懸念事項を先送りにし続けてきた。
それが、今になってなぜ。


「インドラ?」

目の前にいる、見慣れない星から来た使節団の中にあって、ひときわ異質だったものが、僕の言葉に、ばふと元気よく返事をした。
そうして茶褐色の体格の良い犬は、僕に目掛けて飛び出してくる。
僕は、子どもの頃に亡くしたはずの飼い犬を抱き止める。母が、ロータスのことを教えてくれるきっかけになった僕の犬。
インドラは、僕のことがわかっているようで、尻尾をちぎらんばかりに振り回しながら、ひたすら僕の顔を舐めまわした。
間違いない。まさか、こんな形でインドラに会えるなんて、本当に。
抱きしめた腕の中、つるりと手触りの良い短い体毛の生え揃った皮膚の下で、筋肉質の温かい体がどくどくと脈を打っている。
生きているのだ。
顔を上げれば、上司が目を瞠っている。
流石に気まずくなって、どうにか興奮しているインドラを宥めようとするけれど、インドラは言うことをきかない。手をこまねいているうち、使節団の中から進み出た見目の良い青年が、僕の前に跪いてインドラの背を撫でた。

「ずっと会いたがっていましたものね。よかったですね、インドラ」

インドラは、青年を振り返るとその顔を舐めた。
青年は嬉しそうに、インドラの耳の後ろをかいた。

僕が、使節団を出迎える場を掻き乱すようにインドラと再会を果たしたことで、ロータスの特異性に対して懐疑的だった人たちも、納得せざるを得なくなったようだ。
インドラと僕が、半ばロータス側のプロパガンダになってしまったという点については、思うところがあるものの、再会が嬉しいのは紛れもない事実だ。
使節団は、会談の場へと去っていくけれど、インドラは僕から離れない。そして、傍らの彼もまた。

「シーナラさん」

青年は、当たり前のように僕の名前を呼んだ。
「なんで僕の名前……」
言いかけて、思い返す。
ロータスが死者たちのいる星なら、僕の母や、僕の名前を知っている人がいてもおかしくはない。
けれど、返ってきた言葉は予想とは違っていた。
「インドラから聞いてます。あなたがどれだけ大切な兄弟か」
インドラは、まるで言葉がわかっているかのように、ばふ、と声をあげる。
「インドラから?」
ほかの人間たちではなく?
当然の疑問は、なぜか口にできなくて、黙り込んだ僕に、見目の良い青年はにこりと微笑んだ。
「私のことはアルシュと」
恵まれた体格に、整った容姿。言葉遣いは洗練されていて、仕草は優美だ。
その美貌に、思わず見惚れてしまう。
何よりも、目が。
どこかで見たことがあるような目をしている。
僕は、アルシュから差し出された手に触れる。
ついさっき、インドラの背を撫でていた手は、触れるとひどく冷たかった。まるで、死者の手のようだ、と思うと背中がゾクリとした。
インドラは、あんなに温かかったのに。

アルシュはロータスで、インドラの世話をしてくれていた人物のようだ。
ロータスの人間ということは、彼もまた、こちらで一度死んだ人、ということになるのだろうか。
そう尋ねるのは不躾が過ぎて、聞くことはできないけれど。


使節団の他の人々は、政府の外交チームと共に迎賓館に入ったきりで姿は見えない。中で、一体どんな話をしているのかは、外にいる僕らにはわからない。
良く晴れた日だ。
風は気持ちよくそよいで、目の前では手入れの行き届いた庭で走りまわる犬がいる。
隣にいるアルシュとは、今日初めて会ったのに、なんだか昔から知っている友人だったような錯覚がする。
実際にはそうではないのだけれど。
「あの、僕はインドラにまた会えて嬉しいんですけれど、どうしてわざわざインドラが使節団に……?」
迎賓館の庭を駆け回るインドラを眺めながら、アルシュに尋ねる。
インドラは僕にとっては大切な兄弟だ。
だからと言って、外交の場に相応しいかといえば、それは頷けないものがある。
何より、犬だ。どう見ても。

「インドラは、私たちの王様ですから。ロータスのことは、インドラがいないと始まりませんよ」
とアルシュは言った。

なぞかけのような言葉を、どう捉えたらいいのか。
この青年が使節団のメンバーである以上は、この雑談の時間すら、外交と言えなくもない。
僕は、さっきまでの穏やかな錯覚を捨てて、気を引き締めなおした。
まるで、自分の一挙手一投足が試されているようだ。
アルシュの整い過ぎた容姿から来る、独特な雰囲気も、余計に緊張感があった。
目が合えば、微笑んでくれる。友好的な笑顔だ。それが、どうしてこんなに不安な気持ちになるのだろう。
手のひらに、急に冷たい感触があたった。
振り返ると、インドラが濡れた鼻を、僕の手に擦り付けている。
インドラのおかげで、空気がふっと軽くなった気がする。
「インドラは本当にあなたが好きなんですね」
アルシュはくすくすと笑って言った。
そう言われると、照れくさいような、誇らしいような気持ちになる。
ロータスに行けば会えるという、母親の言葉を信じた子どもの頃に、戻った気分だ。
「どうか、そんなに緊張しないでください。もっとも、そんなことを言われても、初対面の相手とこうやっていないとならないのは、あなたにとっては居心地が悪いものかもしれないですが」
「そんなことは……」
「じきに終わりますから、安心して」
「え?」
聞き返そうとしたときには、アルシュがインドラを呼んでいるところで、言われた言葉について尋ね直すことはできなかった。
「ほら、あなたが会いたがったからこうしてるんですから。ちゃんとシーナラさんの側にいないと」
インドラは、尻尾を振りながら、アルシュの周りをぐるぐると回っている。
まるで、小さな子どもが久しぶりにあった親戚に照れてでもいるかのよう、なんてたとえが頭に浮かんで、ほんの少し寂しくなる。インドラの家族は、僕のはずなのに。今では、アルシュとの距離のほうが近いと言われているみたいで。
僕は、地面に膝をついて、インドラを呼び寄せた。
「会えてうれしいよ、インドラ。元気だった?」
走り寄って来た彼の茶色い頭を撫でようと、手をかざした途端、インドラがぴたりと立ち止まった。いぶかしく思う間もなく、インドラは低い唸り声をあげる。
一瞬、自分に向けられたものかと思って、すぐに、そうではないことに気が付いた。
さきほどまでの、のどかさが嘘のように、いつの間にか周囲を、武装した見慣れない兵に取り囲まれている。
一体どこから現れたのか。セキュリティはどうなっているのか。疑問は次から次へと頭の中に浮かんでくるのに、異常事態を前に身体が動かない。
使節団がやって来ている場に、万が一にもこんな連中の侵入を許したとあっては、国益に影響が出る。来訪者の安全を確保しなくてはとアルシュを見れば、まるでこの事態をわかっていたかのように、笑みを崩さず佇んでいた。
「結局、そういう展開になりましたか」
兵士たちは、誰もアルシュには武器を向けない。
そして、僕に対しても。
「アルシュ……さん?」
一体何がと聞くよりも早く、爆発音が鳴り響き、迎賓館からの風圧で飛ばされそうになる。かろうじて、インドラを抱きかかえて、爆風から庇うことができたけれど、何から身を守ればいいのか。それがまるで見えてこない。誰が敵で、誰が味方なのか。
取り囲んでいた兵士たちが、いっせいに爆発した迎賓館のほうへと走っていく。
思わず追いかけようとした肩を、強い力で掴まれる。
「シーナラさん、私たちはここにいましょう」
「いや、でも」
「大丈夫です、さきほど申し上げた通り、すぐに終わります」
インドラは、まだ唸り声をあげている。
「はいはい、約束通り、あなたのご兄弟には、何もしていないじゃありませんか」
アルシュは肩をすくめる。
その言葉に、この状況を作っているのが、アルシュ、いや、ロータスなのではないかという可能性が、急激に現実のものとなっていく。

つまり、一言で言うならば、自分は今「敵」に、囲まれているのではないかと。

そうっと、距離を取ろうと動かした足が、足元の砂利を踏んで、大きな音を立てた。
警戒する僕の姿に、アルシュは今度は少し困ったような顔をした。インドラはくうんと鼻を鳴らすと、こちらの機嫌をうかがうように頭を低くして僕を見た。
僕の力で、この場を一人で打破をするのは難しい。一介の事務方職員に過ぎない。身を守る術も、誰かと戦う能力も持ってはいない。

「何の、話ですか」
「シーナラさん、落ち着いてください」
「何の話ですかと聞いているんです、答えてください」
声は、震えて思ったようには出なかった。
インドラがおろおろと僕の周りを歩いている。それは、懐かしい聞き覚えのある足音なのに、どうにも場違いに感じる。
「それよりもまず先に、あなたはロータスについて、なんて聞かされているんですか?」
と、アルシュが落ち着いた声で問いかけてくる。
「……死んだ人に、会える星だと」
「この星で生まれた人が、死んで、我々ロータスの花の元に生まれ落ちる、ということですね」
「ええ」
なんて、のんきな会話なのだろう。
爆発音と怒号、銃声や金属音それに、悲鳴。そんな激しい音が風に乗って、背後から響いている。
金属が燃える火薬の臭い、ほこりっぽい、土煙の臭いも漂っている。
目の前には、さっきまで眺めていた穏やかな庭と、見目麗しいアルシュの姿だけ。
背後から聞こえる音と、臭いと、目の前の風景の温度差に混乱していく。

「物事は一方向のものじゃない。あなたが今見ている景色にいるのは、この美しい庭と、僕が映っていて、僕からは迎賓館を背にしたあなたの姿が見えています。僕とあなたがいて、お互いに見つめ合っているからこそ、その視線が向かう先は向き合っていてバラバラだ。同じ風景を見てはいない」

この期に及んで、アルシュの言葉はなぞかけのようだ。
「何がおっしゃりたいんですか。物事は立場によって見方が変わるというならば、あなたがたの目的は外交ではなく、侵略だった、ということでしょうか」
迎賓館で使節団を迎えている上司は、同僚は、無事なのだろうか。
インドラは僕とアルシュの顔を交互に眺めている。まるで喧嘩をしている家族の仲裁を行おうとする、可哀想な飼い犬みたいに。
「侵略だなんて、心外です」
「そう言いたくもなります。仲間たちが危険にされされている可能性が高い状況ですから。自分自身の安全も気になりますし」
アルシュは、なるほどと頷いた。
「あなたに危害をくわえる予定は最初からないのですが。心情的にはお察しします。それでは、あなたのために、端的に申し上げるとしましょう」

そこで、しばらくの間押し黙ると、おもむろに口を開いて、
「つまり、逆なんですよ」
と、歌うように言った。

「この星で生まれ、死者がロータスに生まれると、あなたがたは言う。けれど真実は逆です。私たちは初めにロータスに生まれる。そうして、わざわざここにやって来るんです。好き好んで記憶を消して。そうしてここでの生活を終えると、今度は再びロータスに帰って来る」

インドラの姿を見つめる。
僕が子どもの時に死んだ飼い犬。
けれどそれは、嘘だったのか?

「だいたい、不思議には思いませんか。ロータスという名の惑星が、この星の一言語でロータスと名付けられた花の形をしている? あなた方の星の一言語が、扱っている言語も、習慣も、種族も何もかも違う遠い惑星の形を表すような名前に? あまりにも都合がよすぎる」

役者が、舞台の上で長セリフをしゃべっているかのように、アルシュは畳みかけてくる。

「この星の方は、自分たちの星の国益を守ることを考えて、自分たちの星の死者を、連れ戻すことはできないかと考えていたようですけれど、我々からすると本末転倒です。本来の生きる世界を捨てて、もう一度夢の中に戻ろうと、夢の中の住人に誘われているような。こう説明すると、現状が悪夢めいていることは、わかってもらえますよね」
「だとして、それが今、武装した兵士を迎賓館に送り込んだ件にどう関わりが……」
「主たるものがどちらなのかを、見誤ってしまうのが、このよくできた、よく出来過ぎた、臨場感に満ちたこの星のありようにあるのならば、一度なかったことにしてもいいのではと。そういう決議が出たんです。私たちは、その、現地調査のための使節団。この星を、終わらせて、ロータスの民を取り戻すために来ました」

「そんな!」
侵略よりも状況が悪いと理解して、思わず大きな声が出た。
「そんなことを言われても、すぐに納得することはできません。そんな、存在自体を否定するようなことを言われても」
それに、と思う。
「あなたたちの、ロータスの人たちは、どう思っているんですか。この星で僕たちと、家族や友人として過ごした人たちがいることは確かなんですよね」
「シーナラさん。この星の家族構成や友人関係と、実際のロータスでのそれは、全く違うものなんですよ。ロータスとこちらとで、関係性や人格、姿形が同じものは非常に稀です。だからたとえばそうですね。シーナラさんのお母様は、ロータスでは別の人間です。シーナラさんとは無関係な」
母親を恋しがるような年はとうに過ぎてはいるけれど、足元が根底から覆るようだった。
「じゃあ、それなら、インドラは……」
インドラは?
僕に会いに戻ってきたインドラは、なんだと言うんだ。
「だからこそインドラは私たちの王なんです。ごく稀に、一時代に一つしか現れない、ロータスとこの星とで、存在が変わらない無二の魂。それがインドラです」
アルシュがインドラの頭を撫でた。

「我々は、その時代に現れた無二の魂がどんな姿形を取っていても、王として従います。だから、今、あなたにだけはこうして話しているんです。インドラが願ったのが、今の、あなたのままのあなたとの、再会だったから」
インドラが身体を寄せて来る。
子どもの頃、母親に叱られた僕を慰めにきてくれたときと、同じように。

優しい手つきに、決して非道な人間だとは思えない。
彼の言い分は、きっと正しいのだろう。僕には到底、受け入れることができなくても。それでも、と思う。それでも、正しいかどうかなんて、今はどうでもいいじゃないか。

咄嗟に逃げ出そうとするけれど、あっという間に、足を払われ、その場でアルシュに押し倒される。ぐい、と肩の関節を押されてうめき声が出る。身じろぎひとつ取れない。
インドラが大きな声で吠える。首をひねると、アルシュに飛び掛かっている姿が見えた。
「痛い痛い。約束と違うと言われても、私はだいぶこれでも譲歩しましたよ。ここまで丁寧に話さなくたってよかったのに、あなたが彼を特別扱いするからじゃないですか、インドラ」
インドラが飛び掛かってくれたおかげで、アルシュから解放される。
押し付けられていた顔をあげると、インドラが申し訳なさそうに僕の肩に顔を乗せた。そうしてしばらくインドラの温かい身体を近くに感じた。
生きている温かさだ。インドラも生きていて、僕も生きているから感じる温かさだ。
これを、手放せというのだろうか。
「理不尽に感じるのでしょうけれど」
と、アルシュの声がする。
「本来の形に戻って欲しいだけなんですよ。だいたいあなたがたが、何もかも忘れすぎるのがよくない。レジャーの楽しさは、そりゃあ、理解もできますけれど」
アルシュの手から伸びて、こちらの額に当てられている見慣れない装置が、どういう形でかは知らないけれど、僕の命を絶つための武器だ、ということくらいはわかる。
銃口を突き付けられているのと同じようなことだ。動悸が激しくなっていく。
これは、どうしても仕方のないことなんだろうか。
引き受けなければならないことなんだろうか。

「あなたが逃げたところで、この星自体の消去も時間の問題です。そうなったら、不必要な経験もすることになるかと思いますが。僕としては、あまりおすすめしたくはない。星がひとつ滅ぶときに、生きたまま付き合うなんて」

インドラが鼻を鳴らした。
遠くでまた爆発音がする。
どこにも逃げ場はない。それが、どうにもやるせない。もう少し、何か方法を探れないものだろうか話そうと顔を上げると、思いのほか苦痛に満ちた顔で、アルシュが僕を見つめていた。
目だけが、相変わらず見覚えのある色で光っている。

「アルシュさん」
「なんですか」
「僕らってもともと知り合いだったんでしょうか」
特に深く考えたわけでは無い言葉が、ぽろりと口をついて出た。
「なんですって?」
これまで余裕めかした喋り方をしていたアルシュが、ぽかんとした顔になる。
その表情が、今まで見たどの顔よりも人間らしく思えて、張りつめていた気持ちが少し、楽になる。
「ロータスの人間関係と、この星で体験した人間関係に相互関係がないって、さっき説明してくださいました」
「それは、はい」
「じゃあ、ロータスでの僕の人間関係は別に存在はするって、ことになるでしょう」
「ええ」
「僕らって、知り合いですか?」

こんな状況で、そこまでのため息が出るだろうかというほど、大きなため息だった。そのまま、アルシュは地面にしゃがみこんでしまう。
「本当に、そういうところが……」
「ちがいました?」
「答えたくありません」
「……知らない仲じゃなさそうですね」
僕の言葉に、アルシュがパッと顔をあげる。
少し、怒ったような顔をしていた。なんだか、そういう感情的な顔をしていると、整いすぎた容姿が、かわいらしく思えた。
「じゃあ、まあ、あなたに会えるんなら、いいことに、しますよ」
「なんですか、それ……」
「なんて説明をされても、今の僕が死ぬことは事実なんですから、そりゃあ、怖いし嫌に決まってますけど、でも。死んだ後にもあなたに会えるんなら、それで、手を打ちます。その代わり、絶対また会ってくださいね」
「本当に、……ここは嫌な場所ですね」
知り合ったばかりの相手から、生まれ故郷をあしざまに言われながら、僕の生はこうして終わる。
最後に見るのは気づかわし気なインドラと、相変わらず怒ったような目つきのアルシュ。

その目を見て、なんだ、と思う。
なんだ、そうか、どこかで見たと思ったら。

アルシュ、僕の……




「本当に嫌な星、なんだってこんな場所で遊ぶことを思いついたんだか」
シーナラの姿はホログラムのように消える。
殺すわけじゃなくて、消えるだけだとわかっていても、アルシュの手は震えている。
わふ、と茶色い犬が声をかける。おざなりに頭を撫でてやりながら、アルシュは文句を垂れた。
「大体、あなたが兄弟設定になれたシーナラに会いたがったせいでこんなことに付き合わされてるんですから、理不尽すぎる。本当に嫌な仕事に割り振って。あなたは良いですよ。念願かなって満足なんでしょう」
茶色の犬、インドラは尾をたらしてしょんぼりとして見せる。
アルシュはまだ言い足りないと口を開きかけて、やめた。
こんなことをしている場合じゃない。はやく、帰らないとならない。
だいたい距離が遠すぎるのだ。56億7千万光年だなんて、中途半端に長い。帰るまでにどれくらいでいけるだろう。
未だ、破壊音が響いてくる荒涼とした大地を、一人と一匹は去って行く。
「早くロータスに帰りましょう。シーナラに会いたい。言っときますけど、あなたの兄弟のシーナラじゃなくて、本当の彼は僕の、シーナラなんですからね」

※見出し画像はみんなのフォトギャラリーからお借りしました。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集