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【noteでBL】そうして部屋は片付かない

※こちらは企画参加作品です。

皆様こんばんは、四四田です。

素敵企画 #noteBL 3回目の参加、今回もよろしくお願いいたします。

今回の企画は、短歌でBL。
月は東にさんの短歌二首がそのままお題になっています!

①セーラー服※ワード指定
セーラー服の襟なびかせて歌いおる「水兵、リーベ、僕の…」 君の、

あまりにも好きである

②元彼のラブレター
「字が好き」がとっとく理由になるってさインクの染みはあまりに碧い

ヒリヒリする…っ

3つ目のお題は「ゴールデンウィーク」

「ゴールデンウィーク」と月は東にさんの短歌を使ったブロマンス〜BL小説を5000文字以内、です。


月は東にさん、素敵な短歌を有難うございます。
なみさん、楽しい企画を有難うございます。

四四田は、②の短歌を使わせていただきました。

②元彼のラブレター
「字が好き」がとっとく理由になるってさインクの染みはあまりに碧い

①も大好きなので盛り込みたかったのですが、蓋を開けてみたら②のみになってしまいました……。
ちょっと無念です。
でも楽しく書かせていただきました!!

いつもとは違う職業の男です。
よろしくお願いします。


ちなみに本文の文字数は5000文字ピッタリでした✨

※画像はみんなのフォトギャラリーからお借りしました。


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ゴールデンウィークは、一緒に部屋を片付けよう!
という提案をしたのは、俺のほうで、そもそもが文哉は乗り気じゃなかった。

文哉の仕事は書道家だ。
そんな彼の家は足の踏み場がないほど散らかっている。
アーティスト特有のものなのか、はたまた、文哉がただただ個人的にだらしないせいなのか、それは俺には判断がつかないけれど。

創作の仕事自体は、別に借りている作業場でやっているから、作品や道具はそっちにあるはずなのに、それでも家の中は物であふれていた。

捨てていいのかだめなのかわからない仕事絡みの物。
買ってきてそのままにしたのだろう生活雑貨。
使いかけてそのままにしたらしい様々な“何か”。
そんな多様な物が、粗雑に転がっている。

俺は、それが気になって気になって……まあ別に、同棲してるわけでなし。彼の家というプライベート空間を、彼がどうしようが、気にする筋合いは本来無いのかもしれないけれど。それでも、気にして口を出すのも恋仲の権利じゃないかと。
ぐだぐだと言い訳をしたけれど要するに、恋人ぶって口出しをしたかったのだ。

そういう下心があるせいでバチがあたったのかな、と今となっては後悔していた。余計なものを見つけてしまったからだ。

嫌そうにしつつも、片付けの提案に応じた文哉の集中力が続いたのは最初の20分が限界で、やけに静かだなと思ったら資料を読み込み始めてしまっていたし。
それを指摘すると、今度はバラバラになっていたコーヒーのドリップパックを並べ直すという“今はそれじゃない”というような作業に夢中になってしまっている。

結局俺が、ごみを片付け、床に散乱していた本や書類を仕分け、買い物袋に入ったままになっていたものを、それぞれ置いてあるべき位置へと、せっせと仕舞い直していくことになった。
そんなことをしていたら、なぜか台所の棚に仕舞われていた風呂用洗剤と、貰い物らしい入浴剤を見つけたので、脱衣所のほうに持っていく。
そうして脱衣所の、普段は開けない棚の扉を開けると、びっくり箱のようにタオルが飛び出してきた。

「うわぁ!」

無理矢理詰め込まれていたらしい。
タオルみたいな柔らかいものでも、一度に降ってくるとそれなりに衝撃だ。ぶつぶつと文句を言いながら拾い集めていると、やたら可愛らしいお菓子の空き箱が、真っ白いタオルの中に守られているかのように、ぽつんと転がっている。

誓って言うけれど、開けようと思ったわけじゃない。けれど、掴んだ位置が蓋だったのか、手にした途端、箱が開いて中身が零れ落ちた。

出てきたのは、綺麗な白い紙に青いインクで書かれた手紙だった。

《この頃ボクは文ちゃんがお菓子なら頭から食べてしまいたい位可愛い気がします》

そう、書いてあった。

ドキドキしながら拾って裏返すけれど、書いてあるのはこれきりで、他には何もない。差出人の名前もなかった。

「文ちゃん……」

これは、文哉宛ての手紙だ。

そんなものが、どうしてこんなところにあるのかはわからない。
俺が知る限り、彼を文ちゃんなんて呼び方をする相手は知らない。
綺麗な紙、綺麗なインクの色、綺麗な文字だった。

「食べてしまいたいって……」
しかも、可愛い、だなんて、これはどう考えても、
「ラブレター……?」

「良平、どしたー?」
と、リビングから文哉が現れた。
咄嗟に、手に持った手紙を後ろ手に隠してしまう。
なんとなく、俺がこれを読んだことを知られたくなかった。

「あちゃあ、飛び出してきちゃったかあ」
散乱するタオルを眺めた文哉は、特に悪びれた様子もなく、かといって俺に怒ることもなく、全体的に他人事みたいな口調で言った。
「あーうん、ごめん」
「全然いいよ。こっちこそ、ごめん。おどろかしたよね」
「そうだね、戸棚開けたらいきなりタオルが降ってくるから」
「だよねえ、開けたら飛び出してきそうだなと思って、開けられないでいたんだよねえ」
「まさか、それが理由で台所に入浴剤置いてた?」
「え? 入浴剤なんてうちにあったっけ」
「あ、ちがうわけね、よくわかった」
タオルを片付けようとしたのか、かがんだ文哉が、お菓子の箱を見つけて拾い上げる。

「わ、懐かしい。これこんなところにあったんだ」

朗らかな声を上げる文哉に、ちくりと胸が痛くなる。
中身なんて覚えてないだろう。そうだろう。きっとそうだ。
こんなにだらしなくていいかげんな文哉が、自分でどこに何を置いたのかわかっちゃいない彼が、大事に誰かから送られた手紙を綺麗な箱に仕舞ってるなんてそんなの、
「ねえこの中に手紙が入ってなかった?」

そんなのは、俺の勝手な思い込みだったみたいだ。

俺は、隠していた手紙を文哉に渡した。

「ああ、そうこれこれ。どこに仕舞ったのかわからなくなってたんだよね。良平、有難う」

文哉はニッコリと笑うと大事そうに手紙を開いた。

「それ、ラブレター?」
「え?」
文哉がびっくりした顔をしている。
違うって否定してほしかった。
それか、自分が恋人の前で何をしでかしているのか、せめて自覚してほしかった。
それなのに、文哉は、
「よくわかったねえ」
と言った。

「いや、それは、……わかるでしょ」
「けど、これしか書いてないのに」
「文哉だって、わかったわけでしょ」
「それは僕は知ってるから、けどさあ」

「あのさ」
と思わず大きな声が出た。

「良平?」
「それ、なんで取っといてるの?」
「なんでって……もらったから?」
「もらったからって、全部そういうの、とっとくわけ?」
「いやあ、全部じゃ、キリがないよ」
「……キリがない」
「これは、そうだなあ、字が好きだったから、かな」
俺の焦りや苛立ちは、必要ないものなのかもしれない。
ラブレターも、送り主も、文哉にとってはとっくに過去のもので、彼の今の態度こそが、俺への信頼や愛情の証だと、俺はうぬぼれても良いのかもしれない。

けど、どうしてこんなに無神経に俺の前で昔のラブレターをあけっぴろげにできるのだろうかと、いつになく鈍感な文哉に腹が立って悲しくて、そんな風に思う自分にも泣きたくなってきていた。
「それにしても懐かしい。久しぶりに連絡とってみようかな……」
と文哉が言ったことが耐えられなかった。

「帰る」
「え?」
これ以上ここにいたくなかった。

「ごめん、勝手に散らかして片付けもしないで、でも俺、これ以上は無理だわ」
「いや、べつに片付けとかはいつもこんなだし、気にしなくても良いけど」
「そうだよね、文哉べつに困ってなかったもんね。俺が悪かった。勝手に押しつけがましいことした」
「待って! どうしたよ」
「なにが」
「泣きそうな顔してる、急にどうした? え、俺なんかした?」
「急って……そんなのさあ、」

俺が悪いのだろう。文哉に頼まれたわけでもないのに勝手にプライバシーに踏み込んだ俺が。だから余計なものを見つける羽目になっただけで、文哉は悪くない。
けれども、あろうことかラブレターの送り主に、連絡を取ろうかなんて目の前で口走った、それはいくらなんでもひどいんじゃないだろうか。
段々と腹が立ってきて、俺は文哉を睨みつけて叫んだ。

「俺は、恋人が元カレのラブレターを大事にしてるの見せつけられて、平然としてられる人間じゃないんだわっ」


爆発するように言葉を吐き出した俺に、文哉は目を丸く見開いて固まった。
何を言われてるのかまだわかってないらしい。
俺と文哉の間で、お互いの関係性について、温度差があったということなのかもしれない。
とにかく、今は一人になりたい。
そう思って離れようとした腕を、ぱしんと掴まれる。

「これは、芥川龍之介のラブレターだよ」


「……は?」
言われている意味がわからなくて、自分でも思っている以上に低い声が出た。

「芥川龍之介が、のちに奥さんになる文夫人に結婚前に書いたラブレターだよ」
「え、でもさっき元カレのラブレターって」
「そんなこと言ってない」
「もらったって」
「もらったはもらった、だけど」
「字が好きだから取っといてるって」
「それは言った。字は好きだから取っといてる。いい字じゃない? こういう素直な字が書けるようでありたいなあと思うよ」
「いやだからさ、それが」

「何を疑ってるのか知らないけど、これは中学三年の女の子の作品だよ」

「え!? 中三女子に手を出したってこと!?」
「ちっがうし! やめてよ、問題にしかならない発言。ちょっと待って落ち着こう。はい、こっちおいで」
「おいでって……」
「いいから」
かみ合わないやり取りに焦れた文哉は、俺の手を引くと、強制的にリビングへと連れ戻した。
文哉が、リビングの床にあった俺が苦労して仕分けた色んなものをいっぺんに、ずさーと追いやると、床の上に座り込む。数時間の俺の苦労が水の泡になった気がするけれど、俺も文哉の前に座った。
しばしの沈黙。
文哉は、ええっと、と呟くと、きっかけになってしまった手紙を俺たちの目の前に置いた。

「まずこれは、僕が受け持ってる教室で出した課題の提出物、です。何年前か忘れたけど、手紙を作品化する、ってテーマで課題を出したわけ。ただ文字を綺麗に書こうってことだけじゃなくて、何をどう表現するのか、ってところにフォーカスした課題。カルチャーセンターの授業でね。ここまでOK?」

ふー、と文哉が呼吸を整えるためみたいな息を吐いた。
文哉の手は、まだ俺の手を握ったままだ。少し汗ばんでいる。

「好きな作家のでも、歴史上の人物のでも、アニメのでもなんでもいいから、手紙の文章を選んで。それを書いて、世界観を表現しよう。なんなら、普段は半紙と毛筆だけど、それにこだわらなくていいから、どんな筆記具でどんな紙に書くかも自分で考えて手紙を作ってください、あえて半紙と毛筆にしたいならそれでもいいし、っていう課題を出したわけ。実在の人物だったら書簡集とかさ、色々あるじゃん、他人の手紙の内容を知る方法って。それで、だからこれは、そのときの生徒の作品」

「作品……」
「作者は当時中三の女の子。たしか美大に進んで、個展とかも開いてんじゃないかなあ。芥川龍之介の手紙は、本当はもっと長い手紙で、でも彼女は『食べてしまいたい』って言葉にインスパイアされて、強調したんだよね。それで、入れ物も紙もお菓子にちなんでて……。まだ納得できない顔をしてるね」

「これが作品だってのはわかった。俺が、勘違いしただけってことも」
絞り出した声に、文哉は頷いた。
「けど、なんというか。わざわざ文哉に“文ちゃん”さん宛ての? 手紙を選んでくるって、なんかそれって」

やっぱりこれは、作品に見せかけただけの本物のラブレターなんじゃないだろうか。

「付け加えると、僕は仕事は全部、雅号で通してる。本名知らない人がほとんど。文ちゃんって宛名が僕の名前ぽいのはたまたまだよ」

あれだけ大騒ぎして、全部自分の無知から来る勘違いだったってことで。
それはそれでいたたまれなくて、ここからいなくなりたい。
黙って俯いていると、文哉が覗き込んでくる。その顔が、いつになく必死に見えて、
「ごめん」
と俺はようやく呟いた。

「ごめん、勘違いで騒いで」
「もう怒ってない?」
「怒るも何も、全部俺の勘違、」
「あーよかった!」
そう言うと、文哉が飛びついてきた。そのままぎゅーと抱きしめられて、ひっくり返りそうになる。

「呆れられて別れるって言われたらどうしようかと思ったああ」

「そんなこと言わないし。呆れるってんなら、文哉こそ」
「僕の説明が下手だった。ごめん、不安にさせたんだよね」
気恥ずかしくて否定したいけれど、あれだけ騒いだら今更取り繕うこともできない。仕方なしに頷くと、文哉は腕の力を強めてくる。

「部屋汚いし、すぐ気が散るし、今日は絶対呆れられて嫌われたって、焦ったんだよお」
「それくらいのことで、そんなわけないじゃん」
「わかんないじゃん!」
と、文哉が必死の形相で言い募る。
「ゴールデンウィークは部屋を片付けようって、言われたときから焦ってたんだから。これは最後通告なのかって」
それで、乗り気じゃなかったのか。
なんだ。
こっちこそ余計なことをしたかと思っていたのに。
というか、
「そんな焦ってたくせに、あんな調子だったの?」
「本当に片付けとかできないんだもん。だからって僕の良平への愛を疑わないで!」
「愛ねえ」
俺はおかしくなってきて、つい噴き出してしまう。
「疑ってる!?」
俺も文哉も、バカみたいでしょうもない。
散らかった部屋の、文哉の腕の中で、俺はいつまでも笑っていた。


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《この頃ボクは文ちゃんがお菓子なら頭から食べてしまいたい位可愛い気がします》
芥川龍之介 大正6年11月の書簡より引用

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