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【風まかせ文芸部】蝋燭【600字小説】
蝋燭が段ボールでまるっとひと箱届いた。
注文したのは自分だし、必要があったから頼んでいるのだけれど。
とはいえ、ずしり、と置かれた音は、いかにも重そうな音だった。
ひと箱に500本の蝋燭が入っているのだから相当だ。
重すぎて腰が抜けそうだなあ、と庫裏の玄関先に置かれてしまった段ボールをぼんやり眺めていたら、
「運びましょうか?」
たった今段ボールを置いた宅配業者の青年が言った。
「え?」
「いや、あの、えーっと。その、おしょーさん? には、これ重そうだなって」
おしょーさん、という音が不安げに揺れている。
多分、わたしを何と呼べばいいのか迷ったのかもしれない。
わたし個人というよりは、僧侶全般に対して、だろうか。
それでも、考えながら、呼びかけ方を選んでくれたんだろうな、と思ったらなんだか微笑ましくて、思わずくすり、と笑ってしまった。
「あ、えっとなんて呼べば……」
「あ! 和尚、でも間違ってはいないですよ。合っていらっしゃいます。ただまあ」
それなりに高位の立場に向けて使われる呼称でもある。
それを、まだ若い坊主の自分に向けられると少し委縮してしまう。まあ、この寺には自分しかいないので、そう呼ばれても構いはしないのだけれど。
「そうですね、まあじゃあ普通に、これで」
そう言って、段ボールを指さした。正確に言えば、伝票の苗字を。
「えっと、泉田、さん」
わざわざじいっと目を見つめて呼ばれるのが、なんだかくすぐったかった。
すべりこみです!!!!!!!!
※見出し画像はみんなのフォトギャラリーからお借りしました。
