京都10日目の朝に思うこと
この11月、わたしはしばらく京都に住んでいる。
こんなにもスペシャルなタイミングは最初で最後、だろう。
このnoteは、ライターとしての場をつくろうと始めたため、エッセイのような日記のような、個人的な文章を載せることはほぼしてこなかった。
けれど、せっかくもせっかくである。
帰京するまでの間、5日分ずつ、ここに綴って残すことにした。
これは、伊豆の田舎に生まれ育ち、東京で長らく暮らしていたフリーランス5年目のアートライターが、しばらく京都で過ごす日常の記録である。
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京都6日目。
事前に申請をしていた「京都モダン建築祭」のツアーに同席させてもらい、その様子を取材する。
数日前、鴨川沿いをポタリングしながら、外観を撮影しておいたお店だ。
週末の昼下がり、司会の女性の声とBGM、拍手の音で、結婚披露宴の様子を想像し、幸せをおすそ分けしてもらった気分になった。
路地に面したエントランスや門構えからして、どんな空間が広がっているのだろう、とわくわくしていたが、建設当時の面影を残しながら、見事にリノベーションされていた。
建物は日々、人間の気配がないと、あっという間に空間がかげりだし、朽ちていく。使わない方が痛まないように思うのに、不思議だ。

ランチには、外観を撮影していたとき、大行列になっていたお蕎麦屋さんに立ち寄る。平日の昼過ぎだったからか、すぐに入れた。
傾いた机にそわそわし、どんぶりを慎重に持ってあっという間に完食。

一人で食べているのはわたしだけだったため、店内の空間にも全く落ち着かず、オーダー口の近くに居場所を陣取ってみたら、この店で食べるべきは別のメニューだったことに気づいた。
が、初めて食べた黄ニラと、ペースト状の紅しょうがが美味しかったので、これで良し、とした。もう一度食べに来れるだろうか。

そう、向こう側に傾いている
午後は、あちこちにある行きたかったお店に行き、観たかった展示を観て、日の入りの時間くらいには滞在拠点に帰ってきた。



ここで観られて嬉しかった

14座の風景と言葉 いつも胸に迫る
どれも厳しく美しい山々、特にK2が好きだ



帰り道の途中、街のパンやさんで朝ごはんのためのパンを買ってみる。
普段、朝は白いごはん派だが、自宅から予め送っておいた白米の残りの量を考え、ここ数日、パンにしてみている。
これはこれで、エンゲル係数を上昇させる。が、パンの街・京都では、せっかくだから、ちょっとはパンを食べておきたい。
京都7日目。
午前中は、出発時間までひたすらメールを返信する。
昼前から外出し、事前に申請をしていた「京都モダン建築祭」のツアーに同席させてもらい、その様子を取材。
ここにずっと訪れてみたかった。
でも、全くもって縁がないであろうと思っていた。
それなのに、こうして今、お仕事として、訪れることができている。
実は10月末にも似たようなことがあり、本当にうれしかった。
いつか行ってみたい、と言い、コツコツと仕事を積み重ねていると、こういうことがあるんだな、と再び思う。

限られた時間の中、すみずみまで見逃さないよう、めいいっぱい観察する。
何をどう伝えるのが良いのか。
読者の気持ちを考えながら、あちこちを見せていただき、写真を撮り、お話を伺い、ひたすら記事の構成を練り、考える。
ただただ、目の前に広がる景色を、そのままかみしめていられたら、どんなに良いだろう。
けれど結局、この素敵さをもっとたくさんの人に知ってほしい!お勧めしたい!と思ってしまうはずで、完全に職業病である。
この取材の直前まで、陶芸家 吉田直嗣さんの個展に伺っていた。
実は前日夜、毎週放送を楽しみにしている北海道ローカルのラジオ番組の出演者たちが、都内で行われた吉田さんの個展に出かけているのを聴いた。
フォローしていたはず、と、Instagramで吉田さんを探す。
いいなぁ、都内の個展、観たかったなぁ、と思っていたら、京都で個展を開催する、と書かれているのに気付いた。
まさに明日が、その初日だった。
しかも普段は静岡県内を拠点にする吉田さんが、在廊予定だという。
これはタイミングである。行くべきタイミング。

お店で、これだ、というお品物に決めた後、吉田さんと言葉を交わした。
吉田さんが出ていたあのラジオ番組を、たまたま昨夜聴き、今日、伺ったこと。
普段は東京にいるが、ちょうど今日は京都にいたこと。
実はわたしも静岡が地元で、と話し始めると、地名の話から、高校時代の部活の話になり、卒業した高校の話になり、ご両親の話になり、と、一瞬で誰もついてこれない超ローカルな会話に。
直近で出版された書籍のこと、作陶のこと、吉田さんの師匠のこと。
ほんの数分だったけれど、あっという間に話が転がって、爆笑して、またぜひ、と言ってお店を後にした。
この先の暮らしの中で、購入したお品物を手に取るたび、この京都での日々と、吉田さんとのローカルトークを思い出すだろう。行ってよかった。

夕暮れ時、京都を訪れるとできるだけ立ち寄るお店へ伺う。今、どなたの展示をしてるだろう、とギャラリースペースをのぞくと、こちらでも、観られてよかった個展と出会う。
熱心に話してくださるスタッフの方と、作品について話が弾む。
「お仕事は何を?美術作家の方ですか?」と尋ねられた。
観て、感じ、語る言葉が、やっと少しは磨かれつつあるのだろうか。
すっかり真っ暗になった帰り道。
あぁ この風景を観て、あの作品は描かれたのか。
ふと見上げた空に、慌ててシャッターを切る。美しかった。

京都8日目。
「京都モダン建築祭」の取材のため、どこまでも自転車で行く。
何度となく名前を聞いていた画家の邸宅、美術館、大学、教会。
限られた時間の中で、京都の街をひたすら走る。
天気がとても良かった。ほんのり涼しい、でも暖かい、秋の晴天だった。
京都9日目。
「京都モダン建築祭」がついに最終日をむかえた。
最後の最後まで、あちこちを巡る。
京都3日目、奈良に出かけた日の朝、パラパラっと降られて以来の雨。
結構な本降りでも、移動がわずらわしくなっても、なんだか嬉しい。
京都に来て初めて、ちゃんと降った雨だった。
結局、滞在している間は、最初で最後の、雨の一日、になるのかもしれない。石と緑が多い京都は、絶対に雨の日が似合うのに、“晴れ女パワー”がさく裂しているようだ。
やっとの思いで滞在拠点にたどり着く。
まだ18時過ぎでも、疲れすぎており、昨夜のお鍋の残りと、白いごはんをレンジであたためていただく。
お昼の休憩時間も惜しんで、あちこちを巡っていたが、念願の建築祭に参加でき、本当にうれしかった。

京都10日目。
一歩も外出しない、休日、というか、デスクワークの一日を過ごす。
あちこちのことを考えながらメールを送り続けていたら、一瞬で夜になっていた。
さて。
明日は、岡山へ行こうか、それとも滋賀へ行こうか。
週末は、いつ何を観に行こうか。
仕事の都合ももちろんある。
気づいたら、いま、6つほどのお仕事が同時進行していた。
しかし、まずは自分自身のために、京都にいる時間を使いたい。
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