【インタビュー】ガラスの"なりゆき"とともにある ものづくり 松岡ようじさん(ガラス⼯芸作家 )
日差しに春を感じる瞬間が、少しずつ増えてきました。澄んだ青空ときりっと冷たい空気に、あたたかい太陽の光が混ざり合う、冬と春のグラデーションのような いまの季節がとても好きです。
わたしは数年前に茶道を習いはじめて以来、お稽古もかね 自宅で薄茶を点てていただく習慣を続けていますが、ちょうど今頃なら"きらきらと日差しに映えるガラスのうつわでお茶をいただけたらいいのになぁ" と長らく思っていました。
そう、まさにこんなうつわで!!!

気をつけて楽しんでいます
たっぷりと厚みがあり、ほんのり淡い琥珀色をしたガラス。柔らかさとあたたかみを感じます。
自分がイメージしていた理想の、そのままがかたちになったかのようなうつわ。出会った時は本当に本当に驚きました。
もっと驚いたのが、お稽古もはじまっていないのに、社中の先輩に誘ってもらい、カルトナージュで自作したMY茶箱にぴったりサイズだったこと。

シンデレラフィット感
こんな素敵なうつわを、宙吹き、という吹きガラス の手法で制作していらっしゃるのが、ガラス工芸作家の松岡ようじさん。
現在、銀座一丁目の厨子屋 銀座本店の地下にあるギャラリーで、4月21日(日)まで個展を開催中です。
個展「 硝子のうつわ 松岡ようじ展 」
会期:2025年3月8日(土)~4月21日(月)
◎作家在廊日:3月23日(日)・4月6日(日)・4月12日(土)
会場:厨子屋 銀座本店 B1F ギャラリー
時間:11:00~19:00(最終日は17:00閉場)
休廊:火曜、3月26日(水) 入場無料
厨子屋さんといえば、2月に公開したこちらの記事。多くの方にお読みいただけていて、とても嬉しいです。ありがとうございます✨
なんと!厨子屋銀座本店を運営なさっている、アルテマイスターさまの公式noteにもご紹介いただきました。誠にありがとうございます。
こちらでご案内していました通り、先日、個展の準備中だった松岡さんにお目にかかり、たっぷりとお話を伺ってきました!

松岡 ようじ
ガラス⼯芸作家
1967年広島県⽣まれ。1990年多摩美術⼤学卒業。
1993年⼭梨県⾜和⽥村に⼯房を設⽴し、創作活動に⼊る。2003年静岡県⼩⼭町に⼯房を移転。2009年神奈川県⼤和市に⼯房を移転。現在⼤和市にて制作し、個展・グループ展を多数展開。
https://ameblo.jp/matsuoka-glassworks/
初めてお目にかかった松岡さんは、とってもほがらかで、おおらか。あたたかみのある方だなぁ、という印象。
作家として独立され、すでに30年以上のキャリアをお持ちにもかかわらず、とっても気さくにお話ししてくださいました。
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全国各地に本当に多くのファンがいらっしゃる松岡さんですが…そもそも、なぜガラスの作家になったのですか?
松岡さん:
「卒業した多摩美術大学では、クラフトコース(当時)に在籍していて、3年生になる前に先輩方の制作風景を見学し、金工とガラスのどちらを専攻するか選ぶんです。
最初は、溶接している様子や、大きな作品を作っているのを見て、"自分は鉄を扱う金工が合いそうだなぁ…"と思ったんだけどね。
ガラスって、冷えるとあんなに硬いのに、溶けるとオレンジ色に発光して、水あめみたいにぐにゃぐにゃになるし、先輩たちは全く思い通りにならないから悪戦苦闘しているし、で、びっくりして。
好きかどうかはわからないけど、自分の価値観にはなかったガラスという素材を選んでみよう、と思って始めたら、すっかりハマってしまって(笑)。」
「どうやっても全く形にならないから、本当に困っていたんだけど」という松岡さんは、科の副手の方の紹介で、後に師事された ガラス作家 高橋 禎彦さんの工房を訪ねます。
松岡さん:
「なぜそんなことができるんだ?と不思議でしたね。学校ではみんな、ままならない様子で扱っている素材なのに、彼はそれで本当にいろんな物を作り上げていくので。
夜中に仕事をする人だったから、相模原にある工房に夜な夜な通いつめてしまうくらい、面白くて熱中してしまい、大学卒業後も、しばらくそこでお世話になっていました。」
数年後に独立し、⼭梨県⾜和⽥村にご自身の工房を設立した松岡さん。
自らの特色となるようなアイテムを模索する中、偶然出会った古い切子のグラスからヒントを得ます。
松岡さん:
「こういう癖のない、だけどなんだか色が入っている、というバランスなら、他と違うよな、と。
それまで空色や若葉色、コバルトブルーなど、いろんな色のガラスを使ったり、オブジェの作品をつくったりもしていたんだけど、全てやめて、この色の生地だけにしたんです。
と同時に、作品を売って生きていくためには "道具"を作ろうって考えて、食器を作り始めたんですよね。
すると、展示している作品群に統一感が出てきたし、ガラスの厚みが違うだけで、並べている作品に変化をつけることもできて。
しかも当時は、透明でちょっと色があるガラスの食器も、他のガラス作家があまりしないような活動のスタイルも、仕事を頼みやすかったみたいで。
例えばNHKの『きょうの料理』や、料理本などの表紙にうつわを使ってもらったり、販売しているギャラリーとともに、雑誌の特集で若手の作家として紹介してもらえたりして。」
次第に活躍の場が広がっていった松岡さん。
その後、御殿場の北、富士山や箱根にもほど近い、静岡県小山町を経て、現在は、神奈川県のほぼ中央に位置する、⼤和市を拠点に、作家活動を続けていらっしゃいます。
そんな松岡さんの工房と制作風景の映像が、厨子屋さんの公式Youtubeで公開されています。今回の個展の直前に収録されたそう。ぜひご覧ください!
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今回の個展「 硝子のうつわ 松岡ようじ展 」で紹介されているお品物は、まさに、松岡さんの作品がもつ、"素材とかたちの魅力"を、普段の暮らしのなかに取り入れやすいものばかり。
丸みのあるフォルムが可愛い花入れは、折々の季節の草花を気軽に生けて、お部屋のあちこちに置いて楽しみたい、手のひらサイズ。

「まあるい」「豆ひょうたん」
下段 左から 水入れ「山なみ」「山なみ 平ら」
ゆるやかに重なり合うラインがきらめいていて、注いだ飲み物がより美味しそうに見えるであろう スリムで美しいグラスもあれば、


純米大吟醸の銘酒に見えそう…
ぽってりとした厚みがあって、見た目も口当たりも優しい、小ぶりのグラスや手のひらサイズの豆鉢も。

下段 「みなも豆豆鉢」
漆芸盤 / 藤野征一郎「両面盤 E」
そして、思わず明治期に建てられた日本の近代建築を連想した、ゆらぎのあるガラスが美しい、五角形のショットグラスに、


飽きのこないデザイン それでいて
お値段もかなり魅力的なんです…!
どの色にしようか相当迷ってしまう、落ち着いたカラーリングのプレートや鉢は、料理を盛り付けて使うのはもちろん、

有機的なかたちが素敵です
キャビネットなどの家具の上にディスプレイしたり、水を張って花や葉を浮かべ、窓辺に飾っても素敵なのでは…!

手前 「カラー四方皿」
ここまででも、かなり目移りしてしまいますが、もちろん食器だけではなく、花器もご紹介されています。
透明のガラスは、草花をひき立て、軽やかな印象を演出してくれます。
また、背の高い花材を安心して飾ることができるのも、安定感のあるガラスの花器ならでは、ですよね。

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ここまでにご紹介したのは、展示・販売されているお品物のほんの一部。
どれもこれも、つい見とれてしまうくらいにとても素敵ですが、わたしが特に気になったのが、これまでに見たこともないような、美しい流線形のうつわ。
水のうつわ「流」というお名前がついていました。
「これは今回初めてリリースします。まだどこにもお出ししていない、本当に最新作。」と松岡さん。

ガラスに閉じ込めたかのよう
松岡さん:
「僕がつくるものって、コンセプトや、予め構築したデザイン性のようなものがあまりなくて。
むしろ、自分が意図していないところへ"ガラスがなっていく"ことで出来るもののほうが、すごく良いんですよね。これまでに見たことがないようなガラスを見せてもらえると、すごく嬉しい!みたいな。
これも、うつわなんだけど、見る角度で表情が変わるし、佇まいが水の流れのようで、動きがあってね。
これからは、"こういうものが作りたい!"という衝動そのままをかたちにする、みたいなことをやっていきたいと思っているんです。」

見る角度ごとにラインがきらめいて、とても素敵
"ガラスがなっていく"ことでうまれる、思いがけない かたちの妙。
その"ヒントの宝庫"になっているのが、なんと、失敗して落ちてしまったガラスや、制作中にカットして出た端材などを集めている、トレイの中にあるんだそう。
松岡さん:
「一日の作業を終えて、トレイの中に集まったガラスを見ると、思いがけないかたちで冷えて固まっていて、それがめちゃくちゃカッコよかったり、面白いかたちになっていたりするんですよ。有機的で、どこか生っぽい動きとか、自然の力に任せた感じ。
そして、日々 制作しながら、"これをこうしたら"とか、"あの作り方でやってみたら"とか、これまでの自分のいろんな経験も組み合わせて考えていくうちに、新しいデザインが生まれてきますね。」
ガラスの表面に線をらせん状に描いていく技法を応用した、という、透鉢「紗」も魅力的。
等間隔に入った線が、ありそうでない絶妙な装飾になっているし、サイズも使い勝手が良さそうです。


松岡さん:
「昔、チャレンジしたときはできなかったんだけど、今回やったら、初めてできたんですよね。正直なところ、よーく見たら、精度が悪い、甘い、と捉える同業の作家もいるとは思う。
でも、僕が今やりたい、表現したことや感情を、このうつわに全てのせることができたなら、OK!って思ったし、これをやり続けていきたいですね。」

ふたつのうつわを、どんな手順で作っているのか、松岡さんがとても丁寧かつイメージしやすい表現で説明してくれたのですが…
伺えば伺うほど決して簡単な技法ではなく、30年以上のキャリアがあるからこそ成せる技であることが、よーくわかりました。
松岡さん:
「作り続けていると、なんだか難しいことをしてるっていう感覚がなくなっていくんですよね。
"こんなかたちが作れたらいいなぁ"ってイメージしたところへと、ダイレクトにポンっと飛んでいけるようなことができる人になりたいな、と。」
インタビューの終盤、そう話してくださった松岡さん。
その境地にたどり着くの、とっても難しそうです。
松岡さん:
「うーん、でも例えば、自転車競技の一つであるBMXの選手って、生身の身体で、ものすごい高さから自転車でくるくる回って落ちてきたり、あり得ないスピードで飛んだりするじゃない?あれって、BMXができない人間からすれば、絶対に無理だし難しい、と思いますよね。
でも選手たちにしてみたら、難しいかどうかは重要ではないし、やっていて楽しいからできているんじゃないかな。できる自分になることが大事だから、練習して、自然とできるようになっている、というあの状態、あの状態になりたいんだよね!」

ほがらかで、おおらかな方でした✨
気がつくと すでに2時間近くもお話しを伺っていてびっくり。
本当にいろんな話題に花が咲き、とてもとても楽しい時間でした。
わたし自身、ここ数年、ガラスのリングを愛用しているくらい、ガラスという素材が好きです。そしてガラスの素材を用いてものづくりをしている方々を、本当に尊敬しています。
松岡さん、貴重なお時間とお話を、本当にありがとうございました!!!
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松岡さんがつくるお品物の数々は、銀座・並木通りに面した厨子屋さんの地下にあるギャラリーで展示・販売されています。
お店があるのは、銀座の喧騒から少し離れた、銀座一丁目エリア。京橋や有楽町、東京駅も徒歩圏内という立地です。


個展の会期中、3月23日(日)・4月6日(日)・4月12日(土)は、松岡さんご本人がギャラリーにいらっしゃる予定です。
作品にまつわるいろんなお話を、直接伺える貴重な機会なので、ぜひぜひ。
個展「 硝子のうつわ 松岡ようじ展 」
会期:2025年3月8日(土)~4月21日(月)
◎作家在廊日:3月23日(日)・4月6日(日)・4月12日(土)
会場:厨子屋 銀座本店 B1F ギャラリー
時間:11:00~19:00(最終日は17:00閉場)
休廊:火曜、3月26日(水) 入場無料
"でも・・・キャリア30年以上の作家の方がつくる作品って、きっと手が出せないお値段では…?"なんて、ためらわれる方もいらっしゃるかもしれません。
ご安心ください。ここまででご紹介した花入れやグラス類は、3,000~4,000円台が中心。1,000円台で購入できるお品物もあります。
一つひとつ手作りの、唯一無二のお品物が!です。
もうすぐ春本番。"普段使いできる、特別なお気に入りの作品"を新しく日常に取り入れてみるのに、松岡さんのガラス作品はぴったりだと思います。
ぜひギャラリーで、きらきらしたガラス作品の数々を、楽しみながらご覧いただけたら嬉しいです。
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この記事は、松岡ようじさんと厨子屋さまのご協力のもとにお届けしました。
厨子屋 銀座本店
東京都中央区銀座1-4-4ギンザ105ビル1F・B1
TEL 03-3538-5118
営業時間:11:00~19:00
お休み:毎週火曜、第2・第4水曜
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