🌊未来版•浦島太郎 『 🐢 AI時代の浦島太郎』
近からず遠からずの未来記憶によれば、とある海岸沿いの街に「浦島太郎」という若者が住んでいました。
太郎はIT企業のエンジニア。日々AIの開発に情熱を注いでいます。
彼にとっての最高の息抜きは、休日に海辺を散歩し、ドローンで風景を撮影することでした。
砂浜を歩きながら、
「今日もいい波の音だなあ」
と呟いた、そのときです。
何やら騒がしい声が聞こえてきました。
🐢
「わぁいー!」
「そのAIタートルは俺のもんだー!」
少年たちがウミガメを取り囲み、奪い合いをしています。
カメは華麗なサイドステップで少年たちの手をかわしていましたが、甲羅には海洋ゴミが絡みついています。
「こらー! そこの君たち! カメにそんな乱暴なことをするのはやめるんだ!」
太郎が駆け寄ると、少年たちはその凄みに驚き、逃げていきました。
太郎はカメに絡まったゴミを丁寧に取り除きました。
「もう大丈夫だよ。海へお帰り」
するとカメが、ゆっくりと顔を上げました。
「浦島さん、助けてくれてありがとう」
「私はAI搭載型高性能移動用カメです」
「ぜひお礼をしたいので、私の背中に乗ってくれませんか?」
「AI自動操縦で、竜宮城までご案内します」
太郎は目を瞬かせましたが、技術者としての好奇心が勝りました。
「面白そうだ。お願いしようかな」
甲羅に乗った瞬間、カメは滑るように海へ潜ります。
「おや、カメさん、海の中なのに息苦しくないんだけど、どういうことなんだい?」
太郎が不思議そうに尋ねると、カメは説明しました。
「未来型AIによる酸素供給システムと、三半規管制御機能がございます」
なるほど、と太郎は感心しながら、カメの背中でゆらゆらと揺られながら深い海へと降りていきました。
🌊
しばらくすると、目の前に透明なドームに覆われた近未来都市、龍宮シティが現れました。そのきらびやかな建造物に、太郎は目を丸くしました。
「うわぁ……! 綺麗だなぁ、あれが竜宮城かい!?」
「はい、浦島さん。ようこそ、AI竜宮城へ!」
そこは光が水を透過し、都市全体が青く呼吸しているかのようでした。
お城の入り口で、世にも美しい乙姫様が微笑んで出迎えてくれました。
「こんにちは、浦島様。ようこそお越しくださいました。カメを助けてくださったそうですね。ありがとうございます」
「さぁ、中へどうぞ」
乙姫様は太郎の手を取り、お城の中へ入りました。
「すごい!まるで夢のようだ!」
中は最新のAI技術が詰まった、近未来の空間でした。美しいホログラムのように魚たちが泳ぎ回り、AIロボットが給仕をしています。
「浦島様、お食事の準備ができております」
「本日のメニューは、AIが調理したマグロのステーキでございます」
「へぇ、AIが料理までしてくれるのかい!」
ご馳走が並ぶ中、
「さあ、太郎様、お楽しみください!」
と乙姫様が合図を送ると、鯛やヒラメがまるでダンスフロアの主役とばかりに、華麗に舞い始めました。
小魚たちも太郎の周りで、優雅に、そして時にコミカルに、そのひれをひらひらとさせています。
光が鱗に反射し、まるでミラーボールがまわってるかのように幻想的なショーが繰り広げられます。
太郎は初めて見る珍しくも美しい光景に目を輝かせて見入っていました。
晩餐会が終わると、乙姫様が言いました。
「浦島様、今宵はいかがでしたか? もしよろしければ明日はこの竜宮シティをご案内しますわ」
翌日、乙姫様は、笑顔で竜宮シティを案内しました。
「ここではAIを駆使して海洋生物と人間が共存共栄しています。地球環境を守るために生まれた、未来型楽園なの」
重力制御エレベーター。
完全循環型リサイクル装置。
海洋生物と人間の共存システム。
「地上の人間はまだ、大きな変化を受け入れる準備ができていないのよ」
乙姫様は静かに言いました。
太郎は時を忘れて龍宮シティを満喫し、乙姫様や海底の生物たちと楽しく過ごしました。
🐠
しかし、やがて、太郎はふと、お父さんのことを思い出しました。
「乙姫様、ありがとう。楽しいけど、でも、もうそろそろ家へ帰らなくちゃ」
乙姫様は少し目を伏せ、寂しそうな表情を浮かべながらも、
「そう。では、これをお土産にどうぞ」
と、美しい玉手箱を差し出しました。
「でも、決して開けてはならないわ」
「あっという間の時間だったな…」
太郎は名残惜しそうに呟きました。
太郎が玉手箱を受け取ってカメの甲羅に乗ると、乙姫様は口元になぜか含み笑いを浮かべて太郎を見送りました。
🫧
太郎は元いた地上の海岸へと戻ってきました。カメはうやうやしくお辞儀をします。
「浦島さん、道中お気をつけて」
「玉手箱はくれぐれも開けないでくださいね」
太郎は海岸を歩き、自宅へと向かいます。
しかし、街の周囲の景色はすっかり変わっていました。
太郎が住んでいたはずの家は朽ち、近所にも、太郎が知っている人は誰もいません。
「お父さんがいない。
一体どういうことだ?」
不思議に思って、周囲の住人たちに話を聞いてみると、
「浦島さん?
あゝ、あれは百年も前の人だってよ」
膝が震えます。
「そ、そんな馬鹿なー!!!」
太郎はがく然としました。どうやら竜宮城で過ごした時間は、あっという間でしたが、地上では長い年月が流れていたようです。
太郎は混乱のあまり、頭がクラクラしながら乙姫様の言葉を思い出しました。
「でも、決して開けてはならないわ」
「… もしかして、この玉手箱が何か関係しているのか!?」
太郎は玉手箱をジッと見つめました。
そして、意を決したように玉手箱を手に取ると、蓋を開けてしまいました。
箱からは白い煙がモクモクと溢れ出します。
それは潮の匂いを含み、太郎の身体をふわりと包み込みます。
骨が溶けていくような感覚。
世界がぐにゃりと柔らかく歪み、視界が低く沈みました。
「うわぁぁぁ‼️」
煙が晴れたとき。
太郎は、な、なんと…‼️ 丸くて淡い桃色のメンダコ🐙になっていました❗️

「なぜメンダコに……⁉️」
そこへあのカメが再び現れました。
「太郎さん、… だから、あれほど、玉手箱はくれぐれも開けないでくださいと言ったじゃないですか」
「乙姫様は、海底では知的なイケメン好きで有名なんですが、浦島さんがあまりに素朴だったので、ちょっと魅力がもの足りないとおっしゃっていました」
「そこで、可愛いメンダコに変身できる玉手箱を用意したんです」
「これならきっと、乙姫様がお気に召すキャラクターになれるはず…です。
ささ、またわたしの背中に乗って竜宮城へ戻りましょう」
太郎は茫然と、自分のひらひらした小さなヒレを見つめました。
丸く、やわらかく、ほんのり桃色。
深海でひときわ目を引くその姿。
「竜宮海のマスコット誕生!ですね」
カメがどこか誇らしげに言います。
「乙姫様の専属癒やし系として、きっと重宝されますよ」
「週に一度はホログラム配信もありますし、海底グッズ販売促進計画も…」
「え、グッズ?」
「メンダコ太郎クッション、など、もう試作品ができております」
太郎は戸惑いながらも、自分のふわふわした体を見下ろしました。
_ 悪くないかもしれない。
竜宮城へ戻れば、
乙姫様のそばで、
舞い踊る魚たちに囲まれ、
深海の人気者として暮らす日々が待っている。
カメの背は、今度は少し頼もしく見えました。
「……まあ、いっか」
"竜宮はよいとこだ。料理は美味いし乙姫は綺麗だ”
こうして太郎は、
AI時代の竜宮城で
まさか、まさかの第二の人生をスタートさせたのでした。
おしまい。🐙✨
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