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アメリカの学会に参加して思ったこと

アメリカの学会に行ってきた

毎年5月の連休の頃に眼科研究の大きな学会が開催されるARVO(The Association for Research in Vision and Ophthalmology:視覚と眼科学研究協会)と言う学会がある。その学会に行ってきた。私が参加し始めた頃はいつもフロリダで行われていたので、そう言うものかと思っていたが、どうやら当時は、学会が10年分などまとめて会場を押さえていたらしい。しかし、日本から行くのがとても遠かったのが難点だった。ここのところは毎年いろんな都市で行われている。今年の開催地はデンバーだった。

それはともかく、そんなに多く海外の学会に行っているわけではないが、参加してみると日本の学会とだいぶん雰囲気が違っていて面白いな、と思うことが多い。

最近特に思うのは、女性研究者を増やそうという意図の企画が多いと言うことだ。ARVOだけでなく、ヨーロッパの学会に行っても女性医師のためのセッションが必ずあるので、これは世界的なトレンドのようだ。

さて、ARVOでこのところ毎年目を引く大きな二つのプログラムは、

  • Women in Eye and Vision Research (WEAVR) Luncheon

  • Women's Leadership Development Program(女性リーダーシップ開発プログラム)

の二つだ。

WEAVR Luncheon

WEAVR Luncheonは、大きな会場にビュッフェスタイルのランチが用意されて、シンポジストの話を聞いたり、パネルディスカッションを聞きながら円卓で周囲の人と一緒に食事をする、と言うものだ。ランチのチケット代は、円安とはいえ、日本だったらちょっとしたディナーが食べられるぐらいのお値段だった。

WEAVR Luncheonの様子

これについて、いつから始まったのか、何のために始まったのか、と言うことを調べてみた。

WEAVRとは「Women in Eye and Vision Research」(視覚・眼科学研究における女性たち)の略で、眼科分野でキャリアを積む女性研究者や医師を支援し、ネットワークを広げるためにARVO財団(ARVO Foundation)が主導しているイニシアチブです。

WEAVRという組織自体の活動や年次総会での小規模な集まりはそれ以前からありましたが、現在のような「ARVO Foundationが主催する、チケット制の公式チャリティ・ランチョン(昼食会)イベント」として定着したのは2000年代半ば(2005〜2006年頃)です。

毎年、学会期間中の1日の昼休み枠に開催され、数百人規模の参加者が大きな会場を埋め尽くします。なお、このランチョンで得られた収益(チケット代や寄付金)は、発展途上国の女性研究者がARVOに参加するためのトラベルグラント(渡航費助成)や、女性リーダー育成プログラム(Women's Leadership Development Program)の資金に充てられています。

メインの登壇者(Featured Speaker)には、「眼科・バイオテクノロジー、医療ビジネス、または学術界で歴史的なキャリアを切り拓いてきた、象徴的な女性リーダー」が毎年1名(または数名)招かれます。
純粋な「研究の科学的データ」を発表する場ではなく、「リーダーシップ」「ダイバーシティ(多様性)」「キャリアにおける逆境の乗り越え方」「ワークライフインテグレーション(仕事と生活の統合)」といったテーマで、インスピレーションを与える講演が行われるのが特徴です。

イベントを進行するモデレーターや挨拶をする座長は、主に「WEAVR Leadership Committee(リーダーシップ委員会)」のメンバーが務めます。彼女たちがホストとなり、講演後のQ&Aセッションをリードしたり、会場全体のネットワーキングを促進します。

「Women in...」とついていますが、男性の参加も大歓迎(むしろ近年は推奨)されています。「研究業界におけるジェンダーギャップをなくし、次世代の女性リーダーを育てる」という目的をサポートするため、男性の教授や講座のボスが、自身の研究室の若手女性メンバーを連れて一緒にテーブルを囲む姿も非常によく見られます。
格式高いシンポジウムとは一味違い、華やかで、かつエンパワーメントに満ちたARVOの名物イベントの一つです。

生成AIによる解説


Women's Leadership Development Program(女性リーダーシップ開発プログラム)

こちらは、ARVOが次世代の女性リーダーを育成するために2016年からスタートした、1年間の intensive(集中型)キャリア開発プログラムと言うことだ。

こちらも概要を調べてみたところ、

「WEAVR Luncheon」などで集まった寄付金や財団の資金を原資として運営されています。
単なる座学の研修ではなく、選ばれた少数精鋭のメンバーが1年間かけてじっくり学ぶ、非常にステータスの高いプログラムです。

規模と対象
定員は毎年わずか( 9〜15名程度): 世界中のARVO会員の中から、厳格な審査を経て選ばれます(日本やアジアの大学から選出されるトップ女性研究者も毎年数名います)。
対象者: 眼科・視覚研究の分野で頭角を現し始めた中堅の女性研究者(准教授や助教、独立したての研究室長など)。これから組織や学会のリーダーになっていく「次世代のスター候補」が対象です。

具体的に何をするプログラム?
選ばれた参加者(メンティー)には、それぞれ経験豊富なシニアリーダーが「メンター」として1年間伴走し、主に以下の3つの柱でトレーニングを受けます。
リーダーシップスキルの習得: 研究費(グラント)の獲得術、研究室のマネジメント、組織内のジェンダーバイアスや障壁の乗り越え方、効果的な交渉術などを実践的に学びます。
ARVO内でのリーダーシップ機会の提供: プログラムの大きな目的の一つは「ARVOという巨大な学会の幹部(理事や委員会メンバーなど)に女性を増やすこと」です。そのため、学会の運営に深く関わるチャンスや役割が優先的に与えられます。
濃密なネットワーキング: 同期の参加者(世界中の優秀な女性研究者)や、トップクラスのシニアメンバーと強固な横のつながり・縦のつながりを作ることができます。

一言で言えば、「男性中心になりがちだったアカデミアや学会のトップ層に、実力ある女性研究者をどんどん送り込むための英才教育プログラム」です。ここを卒業した女性たちが、現在のARVOの様々な委員会で委員長や理事として活躍しています。

生成AIによる解説

一つの特徴は、これが一生涯続くプログラムなどの重いものではなく、1年の契約であるという点だろう。その代わり、ある程度の頻度で連絡を取り合ったり、翌年に何か成果物を出さなくてはならなかったりと、プログラムに参加するとさまざまな義務があり、指導する方もされる方もそれなりの負担らしい。しかし、研究者にとっては、有名な指導者と関係構築し指南を受けられ、場合によっては大きな飛躍になるチャンスであり、指導者自身にとっても大いに名誉なことらしい。

ちなみに、ARVOでは、Women's Leadership Developing Programの他にも、Underrepresented Group Leadership Program、Early Carrier Mentorship Programなどのさまざまな立場の人に研究者として能力開発するためのプログラムが用意されている。


日本の学会で何かするとしたら

日本の学会でも、最近は「ダイバーシティ推進セミナー」などが多く行われるようになってきたが、すでに大成功した女性教授の話やそう言う人材を育てた指導者の話を拝聴する会になりがちだ。そして、もっと残念なことに、多くの場合は会場には聴衆も少なく、閑散としていることが多い。隣の「手術合併症への対応」「新しい眼内レンズのメリットとデメリット」のような明日の臨床に直結するセッションに人を奪われてしまっている。

これはやはり、聞いた人の実利が少ないと言うことが原因なのだろう。つまり、啓発のフェーズはもう終わりということだ。もう一歩進んで、このようなセミナーを聞いて実際にアクションを起こしたことが、具体的なメリットやアドバンテージにつながるところまで踏み込む必要があるのかもしれない。

例えば、日本の学会でなら何ができるだろうか。ランチョンセミナーの一つぐらいを、WEAVR Luncheonのようにチケット制にして、集まった資金で翌年の国内学会への旅費を優秀な女性研究者に支給するのはどうだろうか? だがそれでは、もともとメジャーで研究費も潤沢な研究室にいた若手がさらにちょっといい思いをするだけになるかもしれない。そもそも、日本の学会のランチョンセミナーは、企業がスポンサーになってお弁当が出ているものばかりだ。そのような環境でどのような内容にすれば、チケットを買ってまで人が集まるランチョンセミナーが成立するだろうか? 

それでは、企業に資金援助を頼んでそれを元手に活動を開始するのはどうだろうか。例えば、女性サージャンを育成するという名目であれば、手術機器関連の企業には資金援助するモチベーションは湧きやすいかもしれない。そこで、最初の年にある程度の資金を得たら、それを用いてサージャン育成のためのメンターシッププログラムを作る。しかし、サージャン育成のためには、その施設に行って指導者に直に習う必要性が大きそうだ。となると、限られた日程で遠方の施設まで行けるか、などの物理的な問題も出てくる。また、仕事の仕方が属人的な日本の病院では、「術前術後を診られない人に手術を教えるのか?」といった問題も浮上しそうだ。

基礎研究については対象者が少なすぎてこの場合は現実問題無理な気がするが、臨床研究を推進するような企画はどうだろうか。例えばすでに市販されている薬の効果を検証するような後ろ向きの臨床研究であれば企画しやすいし、関連企業もスポンサーになりやすいかもしれない。また、ある程度データのやり取りができれば可能なので、少し離れた場所にいる指導者にも指導を受けやすいかもしれない。

どの方法でも良いと思うが、少し成果が出てきたら、指導者側と指導された側の双方の体験をシェアするセッションを設けても良いかもしれない。指導者側には、自分の施設や研究グループへ若手医師を惹きつける要因になるだろうし、若手医師にとっては自分の置かれた環境から一歩踏み出して、違う考え方や違う仕事の進め方に触れる機会になるだろう。

などと、誰に頼まれたわけでもないのに、いろいろ勝手に妄想してしまうわけだが、実際に軌道にのせて持続性のあるシステムにしていくにはいろいろな障壁がありそうだ。さまざまな障壁を乗り越えて、こんな大きなイベントやプログラムを定着させているアメリカの学会に、改めて尊敬の念を抱いてしまう。



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