味の素ビルドアップフィルム(ABF)の基礎
半導体関連材料の勉強をしています。
味の素ビルドアップフィルム(ABF)は後工程用材料の層間絶縁膜としてはシェア率100%近くを誇っています。半導体関連材料としては最も有名な材料の一つで、それ単体で記事として成り立つほどです。
(参考)
https://www.1p-semicon.com/?p=1127
今回読んだ文献は13年前のものなので今とは課題感も大きく異なるとは思いますが、日本語で読めて簡単ですので備忘録がてら感想をまとめます。
半導体パッケージ基板用層間絶縁材料の現状と動向
奈良橋 弘久*,中村 茂雄*
味の素株式会社バイオ・ファイン事業本部バイオ・ファイン研究所素材・用途開発研究所素材開発研究室
エレクトロニクス実装学会誌 Vol. 14 No. 5 (2011)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jiep/14/5/14_5_398/_pdf/-char/ja
疑問点
文献を読む前にタイトルから想像される疑問点を先に述べておくと、文章を注意して読むことができます。以下、勉強を始める前の疑問点です。
・ABFとはどのような材料か
・何が課題なのか
・何がすごいのか?(他社材との差別化点)
ABFの紹介
「Ajinomoto Build-up Film (ABF)」: 熱硬化型層間絶縁フィルム
厚みの均一性や加工性に優れ、高周波信号伝送におけるインピーダンス制御を実現する。低熱膨張係数や高耐熱性を備え、さらなる微細配線や高密度化に対応している。
Fig. 1に外観を示す。
エポキシ樹脂やフィラーで構成され、厚みは10~100μmである。
PETフィルムを支持体に塗布され、使用時は保護フィルム(OPP)を剥がして基盤に貼り付ける(?)

課題
半導体パッケージ基板では、回路の高密度化や微細化が進み、配線のピッチがますます小さくなっている。
具体的には、L/S (Line/Space) が15/15µmや10/10µm以下の配線が求められており、従来のプロセス技術では対応が難しい。
この微細化の過程で、配線形成や絶縁層の信頼性確保が大きな課題となっている。
プロセス

Fig.2にプロセスでも特に銅配線を形成する前後が重要。
絶縁層形成:基板上に絶縁材料を塗布し、熱硬化
銅シード層の形成:絶縁層上に薄い銅シード層を形成
パターン形成:フォトリソグラフィー技術を用いて、配線パターンを形成
無電解銅メッキ:パターン部分に銅をメッキし、配線を形成
フラッシュエッチング:不要な銅シード層をエッチングで除去
セミアディティブプロセス SAP=Semi Additive Process https://biztech.hatenadiary.org/entry/20120603/1338684054
プリント基板の回路形成方法の一種。 サブトラクティブ法と比較される。サブトラクティブ法では基盤全面の導体をエッチングで非回路部分のみ除去し回路を形成する方法。 SAPは全面シード層の上の非回路部分にあらかじめレジストを形成しておき、回路部分にのみメッキを形成する方法。
※シード層:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/68/9/68_503/_pdf/-char/ja
サブトラはマザーボード等に使用され、SAP はICパッケージなどの微細な回路が求められる基盤に採用されている。 SAPでもMSAPと呼ばれる手法が普及してきている。 MSAPでは銅箔付きの絶縁樹脂を用いるのでシード層の形成が不要。
※ビア(BVH blind via hall)の形成にはブラウン処理が必要。ブラウン処理とは、銅箔をダイレクトに処理するために銅表面をエッチングして粗化し表面積を増加させることでCO2レーザーの吸収性を向上させるもの。デスミア処理 基盤の製造工程においてレーザー・ドリルによるBVH、THV 穴開け加工時に発生する樹脂残渣を除去する工程。樹脂残渣: スミア
プリプレグ、銅張積層板 https://www.nikkakyo.org/sites/default/files/2023-07/株式会社レゾナック.pdf
レーザー加工によりビアを形成し、かつデスミア処理で均一な表面荒さ(=銅との密着性)を維持しなければならない。
その他、課題は以下のようにまとめられ、相反する性質のバランスをうまく取りながら材料開発を行う必要がある。
・配線間や層間の絶縁性を維持し、HAST試験で長時間高い抵抗値を保つ必要がある。
・薄型・コアレス基板でのリフロー時の反り防止や、Low-kチップとのCTEミスマッチによる破損リスク低減。
・鉛フリーはんだボールを使用する環境での、260~280°Cの高温に耐える材料が必要。低誘電率・低誘電損失を保ちながら高速・高周波信号の伝送を最適化する必要がある。
組成改良策
目的の物性のフィルムの開発どのように行なっているか、具体的な記載はなかったがABFの品種の記述から以下のように推察される。
・エポキシ樹脂骨格の変更
疎水性の強弱や剛直性、官能機密度を振ってCTEや密着強度を制御している。
・硬化系の変更
単純なエポキシ/フェノール硬化系ではなく、エポキシ/シアネート硬化系を採用していることが本文に記載済み。最近の特許を見ているとエポキシ/活性エステルも主流の可能性がある。
・他材料との複合化
本論文ではガラスクロスとの複合化でフラッシュエッチングによる銅シードの除去を省略させられる材料例が紹介させれていた。プロセスから逆算して新しい材料群を設計することも重要か。
総括
疑問点を全て解消するに至らなかったが、ABFという製品と10年前の課題感を理解することができた。
