ピカピカでペタペタのイケメンサンダル
かかとが重く
のしかかり
つぶれていた。
・・・
いつものように歩いていると、私の後ろから、すーっと右側に現れ、すーっと前に出て、すーっと先に歩いて行った若い男性がいた。その颯爽とした若い男性の姿に『ああいつかの私か』などと、そうであるわけもない私を自嘲した。ちょっと悔しいような、ちょっと懐かしむような、乙女心ならぬ親父心か?(なぜか親父心という言葉はきもちわるい…)。
後ろから見える彼は、ピッカピカの鞄を持っていた。手入れの行き届いた鞄だ。どこか危なっかしい新人さんではない、落ち着いた【できる男】のイメージだ。スーツもパリッとしている。そのスーツがオーダーメイドの超一流のものかはファッショに疎い私にはわからない。しかし少なくとも、私のスーツのいぶし銀風のくたびれ具合とは明らかに違う。若いが、私よりグレードが上だ。何のグレードか知らんけど(笑)。
その彼は、スマホに着信があったようで、突然足を止め、歩道脇によけた。直後、スマホを耳にあてて、これまたできる雰囲気で…
・・・
「あっ。おはようございます。どうしました?」
「はい、はい、えー。その件でしたら昨日…」
「えぇ、えぇ、えっ?ほんとですか!(ニコニコ)」
「やりましたね。期待に応えて…」
・・・
何があったか私が知るところではないが、なんだか成果が出たようなすがすがしいやり取りに見えた。まったく関係のない私だが、
なぜか上から目線で
『よくやったな。最後まで気を抜くな。』
なんてテレパシー(久しぶりに使ったな…テレパシー)を
送ってみた。
当然、無視された。そりゃそうだ(笑)
・・・
私は彼の横を追い越そうとしていた。
私も謎の親父心由来の対抗心を胸に秘め、まっすぐ前を見た。
(当然前みて歩いて!)
くたくたのワイシャツの腕をまくり、
(暑いだけでしょ?アイロンがけは?)
くたびれた青いリュックのチャックを確認し、
(いつも開いているからね。閉めて!)
駆け足ではなく牛歩に負けず劣らずの超速で、
(たまにはジョギングでもしなさい!)
スマホを耳にあてている彼を追い越そうとした。
(彼の顔を確認しなさい!?)
・・・
ちらっと彼のほうを見ると!
おぉ~ぉ。これはまたよろしいお顔で♪
ルッキズムと厳しいご指摘をいただきそうだが、そんなことはどっかに飛んでしまうほどのいわゆるイケメンだった。とはいえ、親父心が感じるイケメンは、世間で言うイケメンかというと、かなり怪しい…ことも付言しておこう(キリッ!)
『天は二物を与えるのか…』
…と、どこにでもありそうな言葉が頭に浮かんだ。しかし、若いころに感じたその言葉の意味は変わっていたように思う。『くっそーっ。負けねーぞ。』という感情は皆無だった。まぁ、そういうものだろうな…という達観だ。
私は、あてもなく?ひとまず前に足を出していると、また彼が、先ほどよりもギアが上がり、後方に乱気流を残すように、ビューン!と私の横を通り越した。私から3mほど先に出ると、ギアを下げ、並足に戻った。そりゃそうだ。私は牛歩だ♪
・・・
あれ?
私は気がついてしまった。
彼の足元を見ると、靴に違和感がある。これは確認せねば!という謎の使命感にかられ彼を追いかけた。正確に言うと、彼は駅前交差点で赤信号に阻まれていたので、勝手に追いかける形になった。
『あれはサンダルだ!』
私は思わず笑ってしまったが、当然サンダルなわけがない。彼がそんな凡ミスをするはずがない。かかとが少し変わったデザイン、きっと流行を先取りしたビジネスシューズに違いない。ファッションにまったく関心のない私はそう確信していた。
・・・
彼は、その靴のかかと部分に、全体重をかけていた。両かかと部分が丁寧に細部まで、きれいに踏みつぶされていた。本当にぺったんこで、まさにサンダルだった。
だらしない…と思ったが、次の瞬間、何か理由があるのかもしれない…と自分の視点を修正した。見た目からはわからないことがある。
信号が青になると、彼は、その靴で、モノクロ横断歩道を駆け足で、駅の東口改札へと消えていった。
・・・
誰か私を見て観察しているだろうか?
イケメンだと思ってくれるだろうか?
ワイシャツがくたくたのおっさんか?
2世代ほどまえのスニーカーか?
チャックがしまっているリュックか?
(まさか、ズボンのお尻部分…破れてないよね…)
私は、そんなことを思いながら
駅前交差点を彼とは反対方向に歩き、
第4公園入口ゲートへと消えたのかもしれない。
まぁ、そんな風に見ている人はまずいないだろう。
決定的に自意識過剰だ。
決定的に無駄な抵抗だが…
赤い牛で翼を授けることでお馴染みの
エナジードリンクはあきらめ
体脂肪、BMIがどうのこうの書いてある
緑茶を買った。
公園のベンチで、ペットボトルのキャップを、ひねった。
何だかほっとした。
私はのんきなもんだ♪
公園の真ん中で、
ジャージのジーサンが
ストレッチをしていた。
んー。
私、負けてない?
知らんけど(笑)
