10円だけ残った
古びた専門書が出てきた。
本がたくさんあるので「一部を売ってしまおう!」と整理していた。売るというよりも、質屋さんに預けるという感覚か?。リサイクルショップがあちこちにあるが、なんとなく質屋さんのたたずまいが好きだ。
『この本は売ってよいのだろうか』
迷ったときは、コイントスで決める。
いや、コイントスは【やめよう】。
やめようと思ったときは、答えは決まっている。もぐっている答えに気づいていないだけだ。コインの裏表には託せない思いがある(はずだ)。
もっといえば、
・心の中に腕を突っ込んで
・闇をガリゴリかき回して
・空掴みを繰り返して
・泥をかぶった答えをえぐり出せ!
…というコインからのメッセージだ。「コイントスをやろうというのに、コインとするをやるな」という矛盾している暗示だが、このあいまいな答えのようなもこそ、自分の心の機微をうつしている?と感じる。考えすぎかもしれないが、結論を【出しきらない】、可能性を広げる答えだ。
相変わらず、優柔不断と馬鹿にされそうな私だが、ただ未来を【収斂させない】という選択を決断しているだけだ。その決断の先に、広がる世界がある。枝道だらけの決断に迷う場所だ。他人の言う優柔不断は生涯続き、人生の幕を閉じるという点に至るだけのことだ。専門書がどうあれ、コイントスがどうあれ、他人がどうあれ、決して変わらないこと、これがすべてを決める。いや、決めない(笑)。
この話は、どこに収束するのかさっぱりわからない。たった今思いついたことは、
「迷路にはまってしまった。右の壁に手をつけたまま、くるくるさまよえば、いつか出口にたどり着く…」
わかるような、わからないような、ぼんやりとしたことが浮かんでくるのだ。
コイントスをしないということは、未知の可能性の開く鍵を手に入れるようなものだ。
『それでいいではないか!』
・・・
少し日焼けした専門書。開いたそのページから、埃っぽい匂いが漂う。懐かしさを感じつつ、文字を読む。
『ふむふむ…古すぎる(笑)』
専門書:「売らないで!お願い!まだ使えるよ!」
私 :『いや、さすがに使えんよ(苦笑)』
専門書:「違う違う、88ページ!」
私 :(は?)
88ページを開く。
!
…”16:30 消防隊”…
超シンプルメモ書き。
かつてその専門書を読み解いていたころ、工場の消防隊員だった。当時、消火栓操法の競技会の練習をしていたのだ。消火栓からホースを伸ばして、筒先もって【放水!はじめ!】の合図で、水が虹のようにきれいに飛び出す。
『懐かしいなぁ、がんばってたよな』
・・・
この専門書はとっておこう。これはどうするかなぁ。あの本はどうしよう。そういえばあの棚にも積んであったような…。あー、もうメチャクチャだ!
あのメモ書きを見つめた。
しばしの静寂
やーめた(笑)
本の整理そのものをやめた。
ペットボトルを手に取り、緑色のキャップをひねった。中途半端にひねったとき、あらためて散らかった本を見回した。
『よし』
とどめのひねりをガチッ。くるくるキャップを外したとき、もう一度散らかった本を見回した。
『よし』
積みあがった本の上に舞った埃がキラキラと輝いた。
ペットボトルを傾けて、ゴクリと一口。
ふぅ。
本の皆さん:「ありがとう」
私 :『お茶飲んだらやるよ!』
本の皆さん:「(!)」
私 :『やんないよ(笑)』
ペットボトルを置いた机。
10円玉が転がっていた。
あぁ、散らかってんなぁ…
休憩しよう。
クッキー食べよう。
みんなに内緒で買った
結構お高めレアものの
まるい黄金
ご褒美クッキー!
箱に手をのばすと
案の定、
空っぽだった!
箱 :「捨てないで!」
私 :『捨てます』
箱 :「(!)」
私 :『リサイクルします』
箱 :「ありがとう♪」
やはり
コイントスは、やらないほうがよさそうだ…
机の上の10円玉
貯金しようかな…
箱に手をのばすと
案の定、
空っぽだった。ウソダロ♪
貯金箱残高が
10円になった!
部屋中の本たちが
拍手しているような気がした。
してないが(笑)。

