糸くずにつながれた私
刀。
人は、問答無用で
刀を振り下ろすことがある。
なぜ、振り下ろすのか…
当然何かを斬る、断つためだ。
おてんとうさまの光を受けた
その清き空気を大きく吸って
雑念をそっと宙に浮かせるように
息を吐く。
ふぅ~~~(ほわ~~~ん)
・・・
鞘(さや)から、亀のように一歩ずつ
ゆっくりじっくり、そっと引き出す。
柄(つか)を
自分のこれまでを絞り切るように
グッと、固く握る
君は何を斬ろうか
私は何を斬ろうか
いったい私は
何を断つというのか
つながったままでもいい…
なぜそう思えないのか
どうしてここで
あんぱん!
ジャムパン!
クリームパン!
やつらがぱんぱんぱんぱん…
脳を行進するのだろう?
こいつらを斬るのか?
それっ!
ゆけっ!
あんぱんまん!
なるほど、アンパンチか。
雑念が…暴走し始めた…
・・・
108の煩悩を振り払う
(私には108億を超える煩悩が…)
もう知らん!
108億の煩悩に後押しされて
まぶしいほどに光る刀を
強欲のまま、振り下ろす!
フォウッ!シャッ!
・
・
・
ドキドキ…
・
フゥ…フゥ…
・
フゥ…
・
・
・
しばらく動けなかった。
いったい私は
何を斬ったのだろう。
いったい私は
何を斬りたかったのか。
たしかに前にいたはずの
斬ったはずの
断ったはずの
あんパン?マン?
・
私の欲望にまみれた切り離しがたい、これまで歩んできた道と、これまで共にしたパンたちの存在。ズシリと108トンの水を背負う如く惹きつけられる力…を確かに背中に感じる。
ものすごい引力だ。
前にいたはずの、
アンパンマン大佐率いるあんパン連隊は、
私に腰縄をかけ、後ろに引っ張り始めた。
ウゥ!オッ!クッ…
足を踏ん張って引っ張りかえす。
ダメダ。ものすごい力だ。
これが過去という魅力的な生き物か…
じわじわと腰縄が体に食い込んでくる。
ウ…ダメカモ…
柄を握っている。
おてんとうさまの光を浴びた
知識と経験という名刀がある。
これが私の伝家の宝刀!
!!!!!
踵を返して
無の境地!
ウォリヤーーーーー!
か細い糸くずが
土の上に溶けていく…
斬ってしまえば
なんて言うことはない。
この糸くずにつながれていたのか!
・・・
この糸くずを斬るのに
膨大なカロリーを消費してしまった!
今すぐに補給しないと
命が危うい…
あんぱーんまーん…
遠くにかすかに見える
アンパンマン大佐の姿。
ん?
クリームパンが飛んできた!
ジャムパンが飛んできた!
ドでかいあんパンが飛んできた(笑)
ありがとう、アンパンマン大佐。
さようなら、あんパン連隊。
またいつか。
私の大好きなパン屋で会おう!
もぐもぐ…
よし!
まわれーーーーー!
ミギ!
前へーーーーー!
ススメッ!
モグ・モグ・モグ・モグ
モグ・モグ・モグ・モグ
一歩ずつ。
確実に
大地を踏みしめて
あんぱん片手に
おてんとうさま、ありがとう!
