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缶コーヒーリレー~子どもたちの水分補給~

私は年齢より幼い…と
言われることの多い
50歳手前のオヤジだ。

幼いというのは、少々心外だが若いと言われるのもなぜか心外だ。とて、年齢相応に言われることにも違和感ありありのありよりのありだ(?)

とある日の朝、いつものように外をほっつき歩いて、いつもの自販機の前に立ち、新調した黄色いがま口の財布から、小銭を取り出し、いつもの缶コーヒーを買う。いつもいつもの缶コーヒーを買うのだが、いつもいつもの自販機の隣の自販機に売っている10円高い質のよさそうな缶コーヒーといつものように迷ってしまうのが、いつもの私だ。このくどさを昭和のオヤジとバカにする人もいそうだが、残念ながら、私は確かに昭和に生まれたが、令和を生きているオヤジであることも付言したい(わたしはなにものだろうか?)。

この何か高尚なことを申し上げているようで、0歳児レベルの幼さを内在している…いやそれは0歳児に失礼だ!0歳児の皆様は圧倒的に未来に開かれている。

ここでも50歳前という微妙なお年頃…私の自覚はマイナス50歳児だ。放っておいてくれ(笑)

・・・

そんな日(どんな日だよ?)、いつもの自販機の前で空を見上げながら缶コーヒーをなんでいると、登校中の小学生が近づいてきた。『何かピンチなのだろうか?』と様子を伺っていた。

朝、歩いていると、子どもたちのピンチに遭遇することはよくある。通学路見守り隊なるものもあるようだが、私はただの人ではあるものの、結構な子どもたちを手助けしてきた。もちろん余程のことでない限り、子どもたちがそれを望めば手助けするだけだ。手助けしたくなるシーンは多いが、下手に手を出すと変質者と思われる。昭和のオヤジと揶揄される苦労人にさらなる打撃をもたらす風潮…。

・・・

さて、
私に近づいてくる子どもは、
私に用事があるのではなく、
自動販売機に駆け寄ってきた。

ほぅ。最近の小学生は
朝から自動販売機をつかうのか。ビックリ!

時代の移り変わりを感じつつ、季節を問わず、水分補給の大切さを感じる一幕だ。ちなみに私の缶コーヒーは水分補給には逆効果だ。リュックに入っている麦茶をいただくべきなのだろう。わかっているのだが。

私は少々痛む首筋をゆっくり回しながら、缶コーヒーを片手に、彼の様子をそれとなく視界に入れていた。

彼は大きいランドセルをぼんぼん揺らしながら、お目当ての販売機の前に立つと慣れた手つきで、小銭を投入。

ゴト!ゴットン!

彼は、慣れた手つきで
お目当てのドリンクを取り出し、
これまた慣れた手つきで蓋を開け、

ゴクゴク…

一休みして、また…

ゴクゴク…

するだろうと思いきや(?)

彼は飲みかけであろうその缶を、おもむろに自動販売機の前にそっと置いた。そして、またランドセルを揺らしながら、どこかへ走って行った。その背中はどんどん小さくなり、建物の影に消えた。

私は、私の缶コーヒーをもちつつ、茫然とした。情報量が多くどこから処理すればいいのか、令和を生きる昭和の親父には理解しがたい状況なのだろうか。はたまた私の能力の限界なのだろうか。

缶コーヒーを飲もうと口に近づけたが、もう空っぽだった。

彼がおいた缶、エナジードリンクだった。

空っぽの頭が空っぽになった。これこそ負圧、マイナスの脳の働きなのだろうか。私の頭の中には何もないはずなのだが、さらに何者かに吸い込まれ、すっからかんに真空パックになったのかもしれない(知らんけど)。

・・・

理解が難しい事態が起きたとき、人間の脳はフリーズするのかもしれない。いや、このときの私の様に負圧の働きで思考や感情が空っぽになる気がする。この脳の自動防護装置に不具合が起こると、怒りやあきれ、一言いいたいという感情が膨張してしまい、自分の気持ちにダメージを与えるように思うのだ。

・・・

しばらくして、彼の残した缶をもう一度見つめた。

自動販売機の前に、真新しい、しかし飲みかけのエナジードリンクがある。よく見ると、その自動販売機が苦笑いしながら、そのエナジードリンクを飲んでいるようにも。

自動販売機も、なかなか大変だ。動けない自動販売機がそのエナジードリンクを飲めたとして、その空き缶を捨てる掃除のオヤジ(笑)の仕事を増やす。なぜかこの自動販売機は気まずさを感じるに違いない。

このエナジードリンクの缶も、動けない。

せっかく縁あってここまで来たのに、最後がこんな事態…。私は心を痛めたが、エナジードリンク缶は、こう言っていた気がした。

「あっ。大丈夫ですよ。
またリサイクルされて戻ってきますから。」

(ほぅ。)

「ちなみに、これが5回目ですよ♪」

(えっ?)

「それじゃ、またここで♪」

・・・

小ざっぱり作業着を着こなす掃除のオヤジが、その缶を無言で拾って袋に入れ歩きだした。袋にはエナジードリンクの黄色い液体が漏れ出していた。その背中はどんどん小さくなり、建物の影に消えた…。

私は、空っぽの缶コーヒーを見つめた。

もう一度、最後の一滴まで、
今見たすべてを飲み込んで…

小ぎれいに整った空き缶専用ごみ箱の丸い口に、やさしく入れた。

『またな…』

私は少々痛む首筋をゆっくり回しながら、いつものように歩きだした。


今日は、予報が外れたのか
意外といい天気だ♪

太陽の光が、なぜだろう
エナジードリンクの
「それじゃ、またここで♪」の
声に見えた。

『またな…(笑)』

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