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わずかな“なめらかさ”が、食べる力を変えた 〜「これでいいのか」と迷いながら見つけた一つの変化〜 

高齢者施設で関わっている、脳卒中後遺症により嚥下障害のある高齢女性のご利用者様のお話です。

もともとはきざみ食を介助で召し上がっていました。しかし、徐々にむせが増え、痰も増加。発熱がみられるたびに絶食を繰り返すようになっていきました。

姿勢はリクライニング30度。
食形態をミキサー食へ変更したり、介助のペースや一口量を調整したり、交互嚥下などの代償法を取り入れたりしながら、できることを一つずつ積み重ねてきました。

それでも、食べることは少しずつ難しくなっていきました。

頸部は硬く、顎を引いて頸部を前屈位にすることが難しい状態でした。さらに、舌の動きや嚥下時の喉頭挙上も低下していました。
頸部聴診では嚥下後に湿性音が聴取されており、食べ物の咽頭残留が予測される状態でした。

まき笛や発声練習などの間接訓練も続けてきましたが、全体的な機能低下は少しずつ進んでいました。

本来であれば、完全側臥位法を検討したい状況でした。しかし、筋緊張による突っ張りが強く、さまざまな調整を試みても、リクライニング車椅子上で完全側臥位の姿勢をとることはできませんでした。
そのため、持久力の低下も踏まえ、高カロリーの栄養補助食品を活用しながら、なんとか「口から食べる」をつないできました。

ところが最近では、その栄養補助食品の粘性でもむせがみられるようになってきたのです。

できることは、ほとんどやり尽くしたようにも思えました。
それでも、何か見直せることはないだろうか。
もう少しだけ考えてみたいと思いました。

となると、今活用している栄養補助食品の粘性を調整すれば、まだ食べられるかもしれない……。
そこで、管理栄養士さんや看護師さんと相談し、普段使用している栄養補助食品のゼリーをマドラーでしっかりとクラッシュしたものと、さらに5cc、8cc、10ccの水分を加えてそれぞれしっかりクラッシュしたものの4種類を準備し、お試しを行いました。

結果、一番変化がみられたのは、10ccの水分を加えたものでした。
10ccの水分を加えたものが、もっともお口に取り込んだ後の動きに力みがなく、飲み込みまでの時間もいくらか短縮され、さらに嚥下後のむせや湿性嗄声も軽減されたのです。
なめらかさと付着性の軽減。そのわずかな違いが、この方には合っていたのでした。

今回の経験を通して、舌運動や舌圧が低下している方にとっては、食物の付着性やなめらかさの違いが、口腔内での送り込みや咽頭への移送、そして「飲み込みやすさ」そのものに大きく影響することを改めて実感しました。

一方で、水分を加えることで製品の物性や栄養成分が変化する可能性があり、また、こうした使用方法は製品本来の想定とは異なるかもしれないため、この方法を選択することには葛藤もありました。
本記事は、製品本来の使用方法から外れる使い方を推奨するものではありません。

それでも、目の前のその方には、まだ口から食べられる可能性が残されているように思えたのです。

たとえ嚥下障害があっても、ご本人の意識はしっかりされており、食への意欲もあります。
その方にとっては、「口から食べること」そのものが楽しみであり、生活の一部なのです。
一人ひとりの嚥下機能に合わせて食品の物性を検討することが、「まだ食べられるかもしれない」という可能性につながることを、今回改めて感じました。

「食べられない」という結論を急ぐのではなく、「どうしたら食べられるだろう」を最後まで考え続けたい。
“もう食べられない”ではなく、“まだ食べられるかもしれない”。
その小さな可能性を見逃さないことが、私たちの食支援なのかもしれません。
私は、これからもその可能性を大切にしていきたいと思っています。

「食べる」を支えるために、今日からできることは何だろう。
そんなことを、一緒に考えていけたら嬉しいです。
摂食嚥下ケアや研修会のご相談は、ホームページよりお気軽にお問い合わせください。
オンラインでのご相談も承っておりますので、どうぞ安心してご連絡くださいね。

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