病院から生活の場へ──“食べる”をつなぐ看護のかたち〜現場で感じたジレンマから、支援の広がりへ〜
noteを始めてもうすぐ半年になります。
これまで摂食嚥下ケアや食支援について発信してきましたが、そういえば「なぜ私がコンサルタントナースとして独立しようと思ったのか」については、あまりお話ししたことがありませんでした。
今回は少し勇気を出して、自分自身のことを書いてみようと思います。
私は摂食・嚥下障害看護認定看護師の資格を取得して、今年で18年目になります。
これまで急性期病院や回復期リハビリテーション病院で勤務し、特に急性期病院で長く活動してきました。その中で、摂食嚥下サポートチームの立ち上げや嚥下評価入院パスの導入、摂食嚥下サポートナースの育成、診療報酬システムの構築などに携わり、組織的な摂食嚥下ケア体制の整備に取り組んできました。
その一方で、現場ではあるジレンマも感じていました。
誤嚥性肺炎で入院された高齢の患者さんが、言語聴覚士さんとともにリハビリテーションを頑張り、再び口から食べられるようになって施設へ退院される。しかし、その後まもなく再入院されることも少なくありませんでした。
そして再入院を繰り返すたびに、身体機能や嚥下機能は階段を下りるように低下していく。
また、退院後訪問で施設へ伺った際には、「食事介助に苦労している」という声を耳にすることもありました。実際に、姿勢が不安定なまま食事を介助をされていたり、濃すぎるとろみの飲み物が提供されている場面に出会うこともありました。
病院の中では一生懸命支援できていても、その先の生活の場に十分な支援が届いていない。
その現実を目の当たりにしたとき、「病院という枠を超え、もっと広いフィールドで多くの現場に必要なケアを届けたい」そんな想いが強くなりました。
そして2021年、私は病院を離れ、摂食嚥下ケアに特化したコンサルタントナースとして独立しました。
現在は医療機関、介護施設、訪問看護事業所などを対象に、独自の支援プログラムを通して摂食嚥下ケアの教育や実践支援を行っています。
看護師や介護職の皆さんが安心して食事支援に取り組めること。そして患者さんや利用者さんが、できる限り安全に、その人らしく食事を楽しめることを目指しています。
とはいえ、私は現場感覚を失いたくありません。
そのため現在も高齢者施設や訪問看護で非常勤として勤務し、日々利用者さんと関わり続けています。
正直なところ、コンサルタントナースという働き方はまだ広く認知されているとは言えず、活動の中で試行錯誤することも少なくありません。
ご施設へご挨拶に伺った際に、「言語聴覚士を探している」と言われたり、「嚥下評価は言語聴覚士が行うもの」という認識を伺うこともあります。
また、人手や体制の面から、十分な支援につながりにくい現場もあると感じています。
もちろん、言語聴覚士は摂食嚥下支援において欠かせない専門職です。
私も病院勤務時代には、言語聴覚士の皆さんに相談にのっていただきながら、評価やケアを一緒に行い、多くのことを学ばせていただきました。
しかし、リハビリテーション専門職の中でも人数が少なく、施設や在宅の現場では専門的な支援を受けにくい地域もあります。
だからこそ、患者さんや利用者さんの一番近くで日々関わっている看護師や介護職の皆さんの役割が重要になると考えています。小さな変化に気付き、早期に対応できる力を持っていると私は思っています。
視診・触診・聴診などを活用しながら状態をアセスメントし、その人に必要な支援を考える。
在宅であれば、ご家族と連携しながら支援を組み立てる。
そのような実践がもっと広がれば、口から安全に食べ続けられる方は増えるのではないかと考えています。
そして、たとえ食べることが難しくなったとしても、その方にとっての「食」を大切にできる支援が広がってほしいと思うのです。
だからこそ私は、現場での活動だけでなく、こうして発信を続けることで、一人でも多くの方にコンサルタントナースという働き方や存在を知っていただければと思っています。
また、以前の記事でもご紹介したように、オンラインによる摂食嚥下支援の可能性にも挑戦しています。
件数はまだ多くありませんが、遠方にお住まいで近くに相談先がない方や、在宅で療養されている方のご家族からご相談をいただくこともあります。
もしオンラインでも必要な助言や支援が届けられれば、地域を問わず「食べる」を支えることができるのではないか。
そんな想いから、新しい支援の形も模索しています。
まだまだ小さな活動ではありますが、現場からいただくご相談や出会いの一つひとつが、私にとって大きな励みになっています。
私の活動の原点にあるのは、「口から食べる」という人としての尊厳とよろこびを守りたいという想いです。
摂食嚥下障害を抱える方が、病院でも、施設でも、在宅でも、その人らしく食を楽しめる社会をつくりたい。
そして、その方の「口から食べる力」の維持・向上を、多職種やご家族とともに支えていきたい。
そのために私はこれからも、目の前のお一人おひとりに寄り添いながら活動を続けていきたいと思っています。
「食べる」を支える関わりについて、少しでも考えるきっかけになれば幸いです。
摂食嚥下ケアや研修会のご相談は、ホームページよりお気軽にお問い合わせください。
オンラインでのご相談も承っておりますので、どうぞ安心してご連絡くださいね。
