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月がとても明るいから。/片想い文芸部

再び参加させていただきます。よろしくお願いいたします。


パソコンを閉じ、ふと外をみやると、丸くてきれいなものがそこにあった。
「あ、今日満月かー」
街の灯りをものともせずそこに輝いていた。
うん、と背伸びをして立ち上がる。
と、手元にあるスマホからピロン、とLINEの音がした。
『月が綺麗だよ、』
送り主は同僚だった。知ってる、と返す。すぐ既読がついた。
『明日休みだろ?飲みに行かない?』
『いいね』
速攻で返事をしてそのままバッグに入れ、再びメイクして出かけた。
指定のバーに向かうと、入り口の壁に背を預けた同僚が手を挙げた。
「よっ、おつかれ」
中で待ってたら良かったのに、と言うと、
「ちょっとな。そんな気にならなかったのよ…」
その表情はとてもつらそうで泣きそうで。
思わずその背中を抱きしめたくなった。
「あいつが、男と飲んでやがった」
あいつ、とはきっと数日前に別れたばかりの元カノだろう。向こうから振ってきたらしい。まだ傷が癒えてないところにそんなシーン見たらショックだろう。
「……ほら。そんな顔しないでよ、今夜はあたし奢るからさ。ね、いいとこ知ってんだ」
悲しそうな背中を叩いて歩くよう促す。そこから5分ほど歩いたところにあるそれは、昼間はカフェだけど夜はバーに変身する店だ。カフェテラスがあってそこでお酒が飲めるので晴れた日なんか結構人が多い。
「へえ、こんなとこよく知ってたな?」
「まあね。ほら、満月が見てるからそんな顔しないでよ」
「悪い、泣きそうになっちまったわ」
ぱんっ、と顔を叩いた同僚の表情から悲しさが取れた。よかった。
「ごめんな、急にお前の顔が見たくなってさ。来てよかったのか?」
テラスの椅子に向かい合って座った途端のセリフにドキリとしたが、慌てて隠す。
「ん?今更でしょ。彼氏がいるわけでなし。さて、何飲もっか」
「そう、だな、まずビールかな?」
メニュー表を見るふりをして目の前の同僚をのぞき見た。
イケメン、てわけじゃないけど、めちゃくちゃタイプなんだよねえ…。同期で入社した時にはもう件の元カノがいたから諦めたっけ……

ビールと枝豆、ジャーキーを注文してふと一息つく。
「満月にさ、願い事すると叶うって知ってる?」
同僚が月を見上げながら言った。
「なんとかウイッシュでしょ、やったことないけど」
「俺さ、さっきやったんだよ。あいつのこと思い出にして前向いたらいい彼女できましたって」
「よかったじゃん、叶うといーね」
ここでビールとつまみを店員が持ってきてくれたので受け取る。
そっかちゃんと同僚もがんばってるんだね。
「あたしもお願いしよっかな、イケメン彼氏と幸せになりました、ありがとうございますって」
と笑ったつもりが、同僚の顔を見てドキリとした。
「さっきお願いしたときさ、お前の顔が浮かんだんだよな、なんでかな…」
「し、知らんよ、ほら、乾杯しよ!」
なんでかなじゃないって、そんな顔してあたしを見ないでよ。言いそうになるじゃん、好きって!言わないけど!
「なに、もう酔った?お前真っ赤だし(笑)」

どうやら、この男には勝てそうにもない。でも悔しいから言わない。前読んだ漫画みたいに、言わせてやろう。
「月が綺麗ですね」
「月が綺麗だね」
……同僚も、あたしも。顔はあかい。


#片想い文芸部







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