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「オリーブの木とエレベーター」

 キュラリアという王国には、人間の王様と動物の王がいるそうです。どちらが偉いとかどちらが強いとか、そういうことはありません。ただ、人間の話を聞く人と動物の話を聞く者が存在しているということらしいのです。

 オールリーは、オリーブの木でした。今は雲の番人によって騎士の姿に変えられています。そのオールリーの名付け親が住んでいるのが、このキュラリアなのでした。

 ”空を閉じ込めた瓶の中の王国”と呼ばれるだけあって、だんだんとガラスで覆われた地域が見えてきました。まるで、雨の境界線のようだとオールリーは思いました。雲の上から見たそれは、時々虹がちらほら見えてキラキラと輝いているのでした。

 「キュラリアーキュラリアーに到着でーす。お忘れ物ないように、今一度ご確認お願いしまーす。ガラスにぶつからないようにお気をつけくださーい」

 アライグマの車掌さんの声が聞こえます。確かに、ガラスには注意した方がよさそうですね。

「さあ、行くにゃー」
猫のミウがぴょんっと座席から飛び降りました。オールリーも兜を被り、ガシャンガシャガシャと体を動かしました。

プシューシュッシュッ

 列車が駅に滑り込むと、動物たちも人間たちも駅に流れ出ていきます。ミウはひょいっとオールリーの肩に乗りました。これなら、はぐれることはありませんね。


 そこは、まさに瓶の中でした。空は、少し歪んで見えます。雲の上から見たら、一体どんな景色なのでしょう。

 駅は、瓶の口のような役割をしているようです。列車付近が一番狭い円にになっていて、駅の出口に近づくにつれて広がっています。

 地下にある駅だったようで、上へ上へと行かなければなりませんでした。その長いこと!オールリーはあまり歩き慣れておりませんので、少々疲れてしまいました。ミウがそんなオールリーを見兼ねて、「あっちにエレベーターがあるにゃ」と、オールリーを誘導します。

 ところが、エレベーターはちっとも動かないではありませんか。なぜだかわからずに途方にくれていると、通りがかったカタツムリさんが教えてくれました。

「それはーね。夜ふかししちゃってるからー。いつもー。動かないよー。寝てるからーね」

 そんなことってあるのでしょうか。エレベーターが夜ふかし!ミウの目は吊り上がっています。そして叫びました。

「にゃー!そんな不健康なことするにゃんて!起きにゃさーい!」

 すると、エレベーターがわずかに震え出しました。フルフルブルブルと。そして、グイーンと大きな音がしました。

「ふあーあ。誰だよ。起こすんじゃないよ。ずっと動きっぱなしで、いつが朝でどれが夜で。そんなのわかるわけないだろ」

この夜ふかしエレベーターは、働き詰めだったようです。ミウは悪いことをしたと思ったのか、尻尾が垂れ下がっていきました。

「大変な仕事なのですね。お疲れ様です」
オールリーがそっと声をかけました。すると、エレベーターが前のめり(本当には傾いてないですよ)で言いました。

「そうさ。一日二十四時間。三百六十五日。俺の体は動き続けなければならないんだ。ボタンを押されれば、動かなきゃならない。やっと上に着いたと思ったら下へ。下まで来たと思ったら上へ。朝も夜も。やってられん。だから、一番大変な日中に寝てやることにしたのさ。そうしたら、今みたいに夜ふかししてるからだなんて言われて。もーたまったもんじゃない!」

 エレベーターが捲し立てるのを、オールリーはふんふんと頷きながら聞いておりました。そしてしばらく考えてからこう答えました。

「朝は九時から夜は八時までなどと時間を決めるのはどうでしょう?休憩時間を入れるとかも良いかもしれませんね」

「ふん。駅長が了承するなら」

「駅長さんはどこにいるのですか?」

「上にいるさ」

「それでは、駅長に伝えましょう。そのために、もしよろしければ、上まで送って行ってはくれませんか?」

「……階段か坂道を登ればいいだろう」

「あなたが連れて行ってくれた方が早く、駅長さんに会えるのですよ」

「……ふん。本当に伝えてくれるんだろうな」

「はい、もちろんですよ」

「ふん。早く乗れよ」

 こうして、オールリーとミウ、そしてカタツムリさんも一緒に乗ることになりました。

ウィーン。ガコン。ブーン。

カタツムリさんは、可愛らしい虹色の傘を持っていました。雨は降っていないのに、開いています。

「傘、閉じないんだにゃ?」
ミウが聞くと、カタツムリさんはふふと笑って言いました。
「そうなのー。これはーね。100年に一度しか開かない傘なのー。私がー開くかー開かないかなんてー決めれないのーよ。」
「不思議な傘なんだにゃー」

 そんな会話をしていたら、チンッという音とともに、エレベーターが止まりました。

「……着いたぞ。頼んだからな」

エレベーターは念押しするように言ってから、扉を開きました。



ー続くー
封筒からあふれた音は、続きの話に登場します。





片桐みかんさんの#3つのお題に空想のひらめきを 【第3回】のお題で書きました。

お題:夜ふかしエレベーター/封筒からあふれた音/100年に一度しか開かない傘


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