「今の祭り」#アマノ文筆クラブ
甘野充様の「アマノ文筆クラブ」に参加させていただきます!
お題:「今の祭り」
商店街を入ってすぐ右側に、古い喫茶店がある。窓は装飾ガラス。夜になると、店内からの明かりが漏れて、不思議な光を放っていた。
ー喫茶あかりー
マスターである五十嵐五郎は、光る看板の前で立ち尽くしていた。
赤い服の男が五郎に言う。
「久しぶりだな」
「…三郎兄さん?」
「元気か?」
目の前の男はどう見ても三郎兄さんだった。どんなに歳を重ねても、その顔は父親の晩年にそっくりだったのだ。
五郎は末っ子で、兄さんとは8歳差があった。
三郎兄さんは15歳で家出をして、3年後のクリスマスに突然帰ってきた。家族みんな驚き、そして喜んだ。
五郎だけは素直になれず、そっぽを向いて何も話さなかった。
その夜、兄さんはサンタクロースの格好をして、五郎の枕元にプレゼントを置いた。五郎は薄目を開けてそれを見ていた。
きっと、兄さんもそれに気づいていただろう。
それから毎年、クリスマスの夜になるとサンタクロースの格好で帰ってきては、プレゼントをくれた。
ブリキのおもちゃ、コマ、流行りのカードゲーム。どれも、五郎がサンタクロースに願ったものばかりだった。
「また、行ってくる。元気に過ごせよ」
白い髭が動く。
五郎は「あぁ」とだけ言う。
赤い服を着た、少し小さくなった姿が商店街を歩いていく。
”三郎兄さんは、サンタクロースになったのよ。”
母の声が聞こえた気がした。
あとがき
「おかえり」とも「ありがとう」とも「なんでなんだ」とも、過去も今も言わない。
過去に言わなかった、言えばよかった。
今言わない、やっぱり言うべきか。
後にも今にも、後悔がある。そんなお話です。
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読んでくださり、ありがとうございます!
日常で感じたことや出来事を、お話としてお伝えしています。
それではまた、お会いしましょう(^^)
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