「オリーブの木と黒いポスト」
銀色に艶めく甲冑を着た騎士が、ガシャンカシャンと歩いております。時々、その硬い兜を脱いで周りをキョロキョロと見渡す姿は、成人した者とは思えぬほど可愛らしいものでした。
私の名はオールリー。ああ、気がついていただけましたか。そうです、あの、オールリーですよ。雲の上で動物たちに囲まれながら過ごしていた、オリーブの木です。
つい先日、雲の番人に騎士の姿になる魔法をかけられたのでした。夢の狭間にいるかもしれない子狐たちを助けるために、オールリーはガシャンカシャンとキュラリアと呼ばれる国へ向かっています。
キュラリアに行くには、雲を百個も飛び越えなくてはなりません。歩いていたら、いつ着くことやら。そのため、オールリーは星くずが降る駅のホームで列車がくるのを待っていました。
オールリーがやらなければならないことは、六つありました。
一つは、夢の狭間に落ちたであろう子狐たちのおっかさん狐を探し出す。
二つは、おっかさん狐へ手紙を渡す。
三つは、キュラリアにいるオールリーの名付け親に会いに行く。
四つは、その名付け親に”夢を食べる獣”について聞く。
五つは、子狐たちを見つけ出す。
六つは、子狐たちをおっかさん狐の元へ連れて行く。
二つ目の夢を食べる獣というのは、言い伝えでしか聞いたことがありません。けれども、夢を食べるというからには、生き物たちの夢を”見る”ことができるということのはずです。オールリーは、きっと子狐たちがいる夢を見つけることができると信じているのでした。
さて、列車が来る前にやれることをやろうと、オールリーはまたキョロキョロと辺りを見渡します。番人の言うことが正しければ、ポストがあるはずなのです。オールリーは、知り合いの狐に手紙を出そうと思っていました。
そのポストの色は、黒です。よーくよくホームの隅の方を見ると、夜を集める古いポストがポツンと佇んでいました。
どうやら、人間たちが住むところでは、赤いポストが主流らしいのです。けれども、太陽が届かない時間が続いた時に闇夜色に染まってしまったようでした。流星にさらされたがために、至る所がボロボロになっています。
オールリーは山羊のゴータからもらった上半分が千切れた紙に、行方不明の子狐たちについて、そしてそのおっかさん狐について書きました。
知り合いの狐が今どこに住んでいるかは分かりませんが、ポストに入れれば、届くというのですから不思議なものです。
手紙には、 子狐たちからの手紙の文章も書き写しました。二匹のおっかさん狐たちが見つかることを信じながら。
もう一度だけ会えるなら……もうイタズラなんかしない。寄り道もしない。ちゃーんと言うことを聞くよ。
きっと、きっと良い狐になるから。おっかさん、おっかさん。大好きだよ。
片桐みかんさんの#3つのお題に空想のひらめきを 【第44回】のお題で書きました。
お題:「星くずが降る駅のホーム」「夜を集める古いポスト」「もう一度だけ会えるなら」

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