「ちょうだい」
名を返してほしい。その星は言った。
最後に一つだけ叶う願いがあるならば、ただ、名を返してほしいと。
その星には、人も猫も犬もトラもオオカミもウサギも、どの生き物も住んではいなかった。
水も光も火も土も風も、何も持っていなかった。
音楽も絵も踊りもスポーツも、楽しむべきことは何もなかった。
全部全部全部全部全部全部。
隣にいる、その星の数百倍もある星に、ちょうだいと言われて渡してしまったから。
ちょうだいちょうだいちょうだいちょうだいちょうだい
「ねえ、その名前、ちょうだい。」
隣の星はそう言ったのを最後に、他の星を友達にして、名前を失った星を振り向きもしなかった。
名前を失った星は、涙もなくしてしまっていた。
けれども、記憶は失うことはできない。唯一、渡すことができないもの。
一つだけ、優しい記憶に心を温めてもらう。
記憶の隅の方にある、星々に囲まれた大木。昔も今も、隣の星に悠然と佇んでいる。
その大木が星を数えるとき、それぞれの名を呼んでくれた。私の名前も呼んでくれた。何回も何年も何百年も。
しかし、その名前は、隣の星の名になってしまった。そして、どこかに捨てられていった。もう、呼んではもらえないと思った時、星の中心から熱いものが湧き出てきた。
噴火だ。
名前を失った星は、しばらく沈黙した。
隣の星が、だんまりになった名前のない星をチラリと見る。
何も持っていない星に興味はない。もう、何も残っていないのだから。
そう、思っていたのに。
それは突然だった。いや、徐々に徐々に、動き出していたのかもしれない。名前のない星から、歌声が聞こえたのだ。
それはそれは、心の底からほしいと思う声。響き。
ほしいほしいほしいほしいほしい
隣の星が、また話し始めた。けれどももう、渡さない。
私の大切なものは、もう二度と渡さない。
二度と会えない約束を一方的に交わし、名前を失った星は遥か彼方に去っていった。
星ほしい星 が現れたら、何も言わなくてもいいんです。聞かなくてもいいんです。
あなたの大切なものを、奪われる必要はないのです。

片桐みかんさんの#3つのお題に空想のひらめきを 【第35回】に参加いたします✨
お題:「二度と会えない約束」「最後に一つだけ叶う願い」「名前を失った星」星々に囲まれた大木のイラスト
あとがき
読んでくださり、ありがとうございます!
まるもりはっぱさんの装飾バーを使用させていただきました✨
私の癒しスポットです☺️
日常で感じたことや出来事を、お話としてお伝えしています。
それではまた、お会いしましょう(^^)
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