【夏祭りは、恋愛イベントではない】


この時期になると、
少しだけ淡い気持ちになる。



夏祭りデート。
「何食べよっか?」
なんて、可愛く聞いてみたい。



焼きとうもろこし。
……歯に挟まる。

りんご飴。
……可愛く前歯でかじる予定が
右奥歯と顎が本気を出す。




綿あめ。
……頬の辺りがベタベタする。
デートを切り上げて、
すぐクレンジングしたくてモジモジする。
トイレに行きたいわけじゃない。
フワフワに顔を突っ込んで
悦に浸ってるわけでもない。
ただ、風向きが悪いだけだ。


 

あーあ。
隣の人が、
ちぎって食べさせてくれたら
解決するのに。



たこ焼き。
シェアした瞬間。
ボテッ。
私は固まるから、誰かキャッチして。




私は何が食べたいんだろう。
いや。
相手は何が食べたいんだろう。
一緒に食べたら
思い出になるものって、何だろう。



そこまで考えて、
もう、何も食べたくなくなった。





私だって大人だ。
夏祭りデートくらい、
二、三回は経験している。
だから言える。
夏祭りは、恋愛イベントではない。
生存競争だ。



若い頃の私は、
本気で暑さ対策をしていた。




うなじ。
脇。
足の付け根。

冷えピタを貼れるだけ貼って、
浴衣を着る。
これで完璧。
そう思っていた。



歩き始めて十分。
冷えピタが、プラプラし始めた。
脇をギュッと締める。
止まらない。



肩をかくふりして、
浴衣の袖から手を突っ込み、
そっと貼り直す。
何事もなかった顔をする。



またプラプラする。
また脇を締める。
また貼り直す。
最後は諦めて引っぺがした。


 

たぶん相手は、
ずっと思っていただろう。



「この子、脇が痒いんだな。」



私は恋愛どころじゃない。
脇との交渉で忙しかった。



今、浴衣デートをしている子を見ると、
脳内の柳沢慎吾が
過剰に反応する。



「…っと、これは、デートですね」

「いい夢みろよ!」

「あばよ!」



 





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