見出し画像

なくならない差別、環境問題と移民問題【後編】

差別は人間の心理的ファクターに根差した自然な防御手段だ。前編では心理的バリアーが働くために、政策や教育で緩和は可能だが、差別が完全になくなることは理論的にありえないことを説明した。今回は、そんな差別と密接に結びつく移民問題の歴史や課題に触れながら、アフリカの現状にも迫る。




世界の移民問題と歴史

問題は古代にまで遡るが、現在の国家間での大量移民は16世紀以降、「近代世界システム」の形成によって加速してきた。植民地拡大期、ヨーロッパ諸国は植民地形成とともに移民や奴隷貿易を活発化させた。19世紀の資本主義の発展はヨーロッパの人口増加と貧富差を拡大し、新天地であるアメリカ、オセアニア、アジア、アフリカの植民地に大量の移民が押し寄せた。

アメリカ合衆国はアイルランド、ドイツ、イタリア、アジア各国から多くの移民を受け入れたものの、20世紀初頭以降には差別的排斥政策も強化された。ブラジルも奴隷制廃止後の労働力確保のため、多国からの移民を積極的に受け入れた。

オーストラリアやアメリカでは「白豪主義」や厳しい排外主義政策が実施され、非ヨーロッパ系移民の排除が公然と行われた。帝国主義時代には国策として移民政策が推進されることもあった。

戦後、植民地の独立とともに、国際人権規約の成立は移民政策を大きく変えた。欧州諸国は戦後経済復興のため、トルコ、北アフリカ、南アジアからの労働者を受け入れたが、1973年の石油危機後は新規労働移民の受け入れを停止した。ただし家族呼び寄せなどで労働者の定住化は進み、多文化社会が形成され始めている。

一方で、グローバル化が人の移動を容易にした反面、移民や難民をめぐる社会的・政治的な摩擦は激化している。移民政策の「拡大派」「制限派」の対立は多くの国で政治課題となり、社会的統合や差別問題、就労環境、人権問題が常に議論の火種である。

送り出し国側では人口減少や経済的影響、そして海外移民の社会的地位の問題が続く。



移民問題の根本課題

社会統合や多文化共生の難しさは依然として消えない。文化的摩擦や排斥運動が起こり、法整備も不十分なままだ。

経済面では移民が低賃金労働に従事し、全体の労働市場や賃金構造への影響が懸念される。人権問題も深刻で、難民や移民が搾取や人権侵害に晒される事例は世界中で後を絶たない。

送り出し国では、優秀な人材が流出し、経済や社会の不安定化が進む。


問題解決はなぜ不可能か

ここで断っておくが、現状のままでは移民問題の解決はほぼ不可能だ。前編で述べた「心理的ファクター」による内集団・外集団だけでも厄介だが、それだけでは終わらない。

「個人の合理性」と称されるものは、「度も過ぎれば傲慢そのもの」である。個人の傲慢は集団の傲慢となり、それが集団の不満へと変化する。すると他のグループでも同じ現象が起き、社会全体での不満と摩擦が増す。

この連鎖によって形成される「社会の合理性」とは、実のところ、その社会に住む人間の傲慢の集合体だ。そのため「その地に住む人間に都合が良い社会」ができあがる。

その社会では移民は「外集団」。彼らは自分たちの合理性を脅かす存在であり、受け入れ拒否の心理が働く。他者を受け入れても「自分たちの有利性を守る」ために差別が生まれる。

これが今なお問題が解決しない本質であり、移民問題を「深刻」にする根源である。



アフリカの歴史と現在

アフリカの歴史を語る上で、7世紀頃からイスラム世界で活発になった奴隷貿易は外せない。アフリカ東部から中東、南アジアへと奴隷が輸出された。

15世紀半ば以降には、ヨーロッパ(特にポルトガル)がアフリカ人の奴隷狩りと大西洋奴隷貿易を開始。現地勢力と結託し、多数の人々が新大陸プランテーションの労働力として連れ去られた。約300年続き、1200〜1300万人が奴隷として拉致されたと推定される。

奴隷制度はアフリカ社会に深刻な影響を及ぼした。多くの若年層が減少し、経済や社会構造が破壊され、多くの地域で戦争や紛争が激化した。

奴隷は新天地での強制労働に縛られ、搾取され続けた。19世紀に奴隷制が廃止されるまで続き、その負の遺産は現代にも深く残っている。


アフリカ現代の姿

2025年のアフリカ全体の経済成長率は約3.9%と世界平均を上回る。東西アフリカの一部国々は7%超の高成長を見込む、人口増加の割にこの数字は低すぎる。

経済多様化は進行するが、資源依存・インフラ不足・貧困、若年層失業率の高さが依然大きな課題だ。教育普及率は改善しているとはいえ、地域間の格差や質の問題が顕著。特に農村・紛争地の教育環境は厳しい。

高等教育進学率は低いが、都市中心に専門職育成機関が伸び、一部の国では産業と雇用創出に貢献している。


被害者としてのアフリカ

独立後、多くの宗主国はアフリカに対し経済・政治支援を十分に行わず、インフラや産業育成支援が不足。法制度や行政システムの未成熟は続き、民族対立や紛争は未解決のまま放置。

国際的な金融機関やドナー国による構造調整政策は社会保障や公共サービスを圧迫し、政治的介入は政情の安定を阻害している。

結果としてアフリカの経済成長は資源依存と外部投資に偏り、政情不安・腐敗・紛争が依然として障害となっている。

国際社会の支援削減とともに、アフリカ諸国自身の自主的な発展が強く求められている。つまり、今なお多くの面でアフリカは宗主国および戦勝国の「被害者」なのだ。


環境問題も被害者

アフリカは砂漠、サバンナ、森林と多様な地域に分かれ豊かな資源が眠る。しかし、生活のため森林伐採は避けられず水不足が深刻化。国際支援は減少傾向で、貧困国として「CO2排出は少ないが干ばつや砂漠化の影響」は大きい。

すなわち、アフリカは環境問題の被害者であり、世界中の先進国の責任でもある。

「IQが低い」「治安が悪い」「無関係」などと言う神経は疑わざるを得ない。先進国に生きる我々は、「自らの責任を自覚」しなければならない。



移民問題の具体的な解決策の提案

  • 自己内省の繰り返し
    日々の言動を客観的に振り返り、心理的バリアを減らす。自身の偏見や誤認識の修正が始まり。

  • 異文化混入を新しい風と捉える
    侵略や破壊の観点ではなく、文化が新たに融合・創造されるチャンスとして受け取る。日本も大陸文化を積極的に取り入れて発展してきた歴史がある。

  • 理解を押し付けず、相手の歴史と文化を学ぶ
    表面的な知識ではなく、相手の立場に立ち同じ目線で理解を深めることが最短の相互理解への道。

  • 少子高齢化社会への対応
    先進国は若年労働者確保が急務。移民は経済活性化や労働力不足解消に不可欠な役割を担っている。

最後に強調したいのは、現状に文句を言うのは誰にでもできることだが、それでは何も変わらないということ。重要なのは、「単なる同調者や批判者」になるのではなく、「具体的な解決策を示し」「解決に向けて行動する姿勢」だ。

専門家でなくとも真剣に考えれば、これだけのポシティブな提案が出来るのだ、専門家ならここに示した以上の前向きな提案は可能なはずである。
いい加減、「声なき努力と建設的な行動」を見せてほしい。

これが悲観的な現状認識と、鋭い事実を織り交ぜた上でのリアリスティックな展望である。

長くなったので簡潔に、次は人口問題について話をしようと思う。


参考サイト