見出し画像

隕石の伯父さん

ー君の父親が、浮気などまかり間違ってもしないような真面目な堅物であることは、彼を結婚相手として選んだ僕の妹にとってはいいことだけれど、君にとってはいささか残念なことだ。
 そう言うのが、おじさんの口癖だった。
 高校生の時から、シングルモルトウイスキーを飲み比べさせられるは、家出の幇助はするは、かとおもうと、クラシックを聴かせて、指揮者による違いを延々講釈したりする。
 フィリップ・マーロウが好きで、男の子はタフでないと行けない、といいながら、自身は結構軟弱な性格だった。

 行き詰まって高校を休みがちになった時には、母親に直談判して学校を休ませて沖縄の離島の民宿で一日の休みもなく3週間働かせた。自分は釣り三昧で、どこにも連れて行ってくれなかった。
理不尽だというと、恐怖心を絶滅させるには、それ相応のインパクトがいるんだ、と嘯いた。

 本当に不思議なことに、対人の恐怖心みたいなものが、帰ると消えていた。

 おじさんが亡くなって2年経つけれど、恐竜を絶滅させた隕石になぞらえて、敬意を込めてぼくは隕石のおじさん、と呼んでいる。

いいなと思ったら応援しよう!