見出し画像

螺旋かいだん

 あの日見上げた
 空にのびる 青天井の螺旋かいだん

 カーブの度に波打つ
 深紅のドレスの長い裾

 ずいぶん前に雲間を抜けたのに
 まだ 上昇し続ける

 君を追っている

 私の身体はすでにからっぽで
 風が吹いたら舞い上がりそうな軽さだから
 このまま宇宙の藻屑になるのかもしれない
 それでもいいと思ったんだ

 目の前には君の姿が見えるから
 空洞化した身体に息吹を注ぐ

 どれだけの時が経ったのか
 どれだけの夜を超えたのか
 それすら わからない
 私はどんどん 空洞化するのに

 君はどんどん無敵になって
 加速していった

 そしてとうとう青天井の先に消えてしまった
 ここから 見えなくなってしまった



 息を吞むような空を仰ぐ

  
 いつぶりだろうか
 空腹を覚えた

 君を見失ってしまった
 もう私の視界に君はいない

 ここから降りよう
 もはや足の一部分も同然の靴を剝がしとって
 落としてみた

 地上についた音すら聞こえない

 もう降りよう
 この遥か上空から

 君のいない螺旋かいだんから

 あの地上に


        エム

 タイトルバックの 壮大な鱗雲は、hitoyasumiさんの作品をお借りしました。
 

いいなと思ったら応援しよう!