見出し画像

われら闇より天を見る: クリス・ウィタカー

海辺の町ケープヘイブンで30年前に起きたある事件と、その出来事に囚われ続ける人々、そして新たに発生した殺人事件を描くミステリー小説。

30年ぶりに町へ戻ってきた元服役囚ヴィンセント、かつて彼の親友だった警察署長のウォーカー、そしてヴィンセントの元恋人スター。彼らはそれぞれ後悔やトラウマ、病気や貧困など、さまざまな重荷を抱えて生きている。タイトルの通り、闇のような、過酷な現実や因果から逃れようともがくが、なかなか抜け出すことができない。

本作の主人公ダッチェスは彼女は自らを「無法者」と名乗り、幼い弟や母親を守るためなら誰とでも戦うことを選ぶ。過去の因縁とは、本来無関係なはずの彼女が、作中で最も過酷な状況に追い込まれていく。次々と言うべきではない言葉を口にし、取るべきではない行動を選び、そのたびに状況はさらに悪化していく。それでも読んでいると「どうかダッチェスに幸せになってほしい」願わずにはいられない。

なので第二部でダッチェスがオレゴンへ移り、祖父ハルと出会い、新しい友人たちと新たな生活を始める場面では、まだ物語の中盤であるにもかかわらず、「もう、このままここで終わってくれれば」とさえ思ってしまった。しかし第三部以降、物語は再びダッチェスを中心に大きく動き始める。彼女はさらに過酷な運命に翻弄されながらも、やがて30年前の事件と現在の殺人事件の真相へと近づいていく。

ミステリーとしての仕掛けも最後まで分からず、全編を通して苦しい展開が続くが、登場人物たちは魅力的で、物語のテンポも良いため読みやすかった。結末は決して手放しでハッピーエンドとは言えないが、それぞれがわずかな希望を見いだして物語を終えるラストには救いがあり、余韻が気持ちいい作品だった。

彼女は自分をののしった。調子に乗っていた自分、新たな人生に希望をもちはじめていた自分を。怒りを思い出した。熱く渦巻く怒りを。自分が何者なのか、自分に言い聞かせた。
あたしはダッチェス・デイ・ラドリー。無法者。

311P

ダッチェス・デイ・ラドリー
13歳の無法者。家族を守るために、やり過ぎることが多々ある。とにかく幸せになってほしい。


ウォーカー
ケープヘイブンの警察署長。30年前の証言を後悔している。友人のスターやその娘ダッチェスを気にかけている。パーキンソン病の症状が進行している。


スター・デイ・ラドリー
ダッチェスの母親。30年前の事件で妹を亡くしたトラウマ、今もアルコールに溺れる生活を送っている。


ハル・ラドリー
モンタナの農場で暮らす、ダッチェスの祖父。30年前の事件をきっかけに絶縁状態だった。後にダッチェスにジョンBステットソンを贈る。



いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集