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全てのモノの”基本原理”って、なんだ?

私たちの体は、多くの細胞からできています。
その細胞は、多くの分子からできています。
その分子は、多くの原子からできています。
では、原子は何から…?

どんどんモノの根源をたどっていくと、最終的には「素粒子」になります。

身の回りのものをどこまでも小さくして、これ以上小さくならない!という物質の最小単位が「素粒子」です。素粒子にはクォークとレプトンという種類があります。
(画像はひっぐすたん /「素粒子ってなに?」(https://higgstan.com/basic01/)より引用)

目に見えず耳にも聞こえないので、日常生活で素粒子をあまり感じることはありませんが、私たちの周りにあるすべてのモノは全て素粒子から出来ています。

「分割できないモノのその先に、何があるのか。とても気になっているんです。だから素粒子に興味持ってますね。」

そう話すのは名古屋大学の井黒 就平 いぐろ しゅうへいさん(高等研究院/素粒子宇宙起源研究所(KMI) 特任助教)です。今回は、井黒さんと親交の深い、名古屋大学の高橋 将太たかはし しょうたさん(素粒子宇宙起源研究所(KMI) 特任助教)も一緒にお話を聞きました。

写真左:井黒 就平 いぐろ しゅうへいさん(高等研究院/素粒子宇宙起源研究所(KMI) 特任助教
写真右:高橋 将太たかはし しょうたさん(素粒子宇宙起源研究所(KMI) 特任助教)

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──素粒子に興味が出たキッカケって?

(井黒さん)小さな頃、ハワイで夜空を見た時にスゴイ星の量だったんです。僕の産まれ育った場所では星なんてぜんぜん見えないから、うわ~すげ~ってなって。それと同時に、なんで星って光っているの?なんで燃えてるの?星って何から出来てるの?ってどんどんギモンをおじいちゃんに聞いていく中で、じゃあ一番小さいモノってなに?って聞いたら、分かんないって言われて。子供ながらに、おじいちゃんみたいな賢い大人が知らないことって、知ってみたい!って思ったんですよ。それがキッカケですかね。

──そんな小さな頃からそんなことを考えていたのですね。

(井黒さん)でも、僕はサッカーに出会ってしまったので、サッカーが一番になってしまいました。サッカー以外なんにもしてなかったです、小さい頃(笑)。

──サッカー>>>素粒子(笑)。これが変わるキッカケって?

(井黒さん)2008年の小林博士と益川博士のノーベル賞受賞、ですね。これは当時高校生だった自分にとってはとても大きな衝撃でした。それで、部活が落ち着いた後に、この世のすべてのモノって一体どうなっているんだろう?って思って。

名古屋大学では、物質と宇宙の根源の探究を目指して、2010年に設立KMI(Kobayashi-Maskawa Institute for origin of particles and the universe)が設立されました。

──それで名古屋大学へ?

(高橋さん)あの頃は名古屋にすごい研究室があるってニュースがバンバン流れてましたよね~。
(井黒さん)そうそう!だから、彼らと議論ができる、研究ができる、と思って東京を飛び出して名古屋大学に入ったものの…その時には既に彼らは引退していました(苦笑)。

──なんと…笑
(井黒さん)とはいえ、研究室配属も4年生からだし、3年生まではいろんなことやろう、と思ってやりたいことをやり切りました。本州一周を自転車で回ってみるとか。遊びつくしたから、あとは研究します、と言って研究を始めました。

「本州一周」と手書きで書いたカードを掲げた若かりし井黒さん。(写真は井黒さんHPより)

──研究始めます、って言ってもどんなことから始めたのですか?

(井黒さん)僕たち理論屋の研究には基礎勉強が重要です。だから4年生から修士の終わり頃までひたすら教科書や論文を読んで、ここ50年くらいの素粒子物理学をしっかり勉強します。

──基礎が重要なのですね。

(高橋さん)基本的なことを学んだ上で、新しい発想の下で研究を進めていく感じですね。どこに着目してどうアプローチしていくのか、そこが一番重要ですね。
(井黒さん)うん。それで今回僕は、経験としてみんなが結構感じていたことを理論的に示すことを目標に研究を進めました。そして、シンプルな関係式で示せた、っていうのが今回の発見です。できるだけ一般的に説明しようとするとものすごく長く説明をしなくちゃいけないんですよ。こんな風に。👇👇👇

呪文のような数式が並んでいます…この、(3.5)や(3.6)のように長い説明が必要な計算を、井黒さんは(3.7)の式だけにそのエッセンスを詰め込むことができ、初めて理論的に説明することに成功したんだとか。びっくりするほど短くスッキリとした数式ですね。(図は井黒さんの論文(JHEP,05(2025)112)より引用)

──これは一体…どんな難解な式なのでしょうか…

(井黒さん)いやいや、これは実はすごく簡単な連立方程式を解いただけですよ。

──そうなのですね…そして、これは一体何を意味しているのですか?

(高橋さん)この図は、「少しでも分かりやすくしたい」「ぱっと見て気になるようにしたい」と井黒くんから相談を受けて、一緒にいろいろ考えました(笑)
(井黒さん)考えに考えて…コレ👇どう??

ケーキやクレープって、元はいちご、生クリームそして小麦粉から成っている点では同様なのですが、ケーキはふわふわスポンジだしクレープは薄い皮がおいしい異なるスイーツです。
それと一緒で、B中間子Λラムダbと呼ばれるバリオンは壊れるとどちらも、チャームクォーク(c)、タウ粒子(τ)そしてニュートリノ(v)へと崩壊する点は同じですが、見た目は異なります。その背後にある物理法則(上図の点線)を、今回数式で導くことができたんだそうです。

(井黒さん)簡単に言うと、見た目は異なる粒子だけど、崩壊してできるモノは同じだしそこにある物理法則は同じ。

──ケーキやクレープじゃなくても、同じことが成り立つことが分かったってことですか?

(井黒さん)そうそう。イチゴ入りシュークリームでも、いちごババロアでも同じってことです。

──なんにでも成り立つ理論って、スゴイ大発見でしたね。

(高橋さん)本当にこの理論が成り立つのか?は実証実験しないといけないですよね。
(井黒さん)実際に粒子が崩壊している様子を実験で測定した実験値と、理論で計算した理論値を比べて、僕たちの見出した理論を実証する必要があります。加速器という機械を使って一部の粒子は日本でも測定可能なのですが、そこでは測れない粒子もあるんですよ。

加速器を使った実験ってどんなものか…?名大のN研(名古屋大学高エネルギー素粒子物理学研究室)でのSuperKEKBスーパーケックビーを使ったBelleⅡベル・ツー実験です。👇

──日本では測れない?

(高橋さん)日本にある加速器(SuperKEKBスーパーケックビー)は全長が3km、スイスにあるのが27kmなんですが、今ヨーロッパに新しく作ろうと計画しているのが、100km弱なんですよ。大きくなればなるだけ高エネルギーになります。今回の井黒くんの理論を証明するには、そんな大きな加速器が必要なので、それができるような計画にしてもらう感じですかね?

──おお、スゴイ規模感…いずれは井黒さんの理論を実験するために、もっと大きな、例えば300km超の加速器を作る、そんなアイデアにもなったりします?

(井黒さん)その一つのターゲットとしてなりうる、っていうのは事実だと思います。この理論の実証のためには、何度も何度も確認実験をして「本当らしさ」を確かめていこうと思っています。それが分かれば、現在の定説では説明しきらないから、これは新しい理論だ、新物理だ!ってなりますし、何か新しい物質の発見や現象発見の手がかりになります。もっと根源的な何かがある気がするし。

一緒に研究を進める隣の席の遠藤さんと日々ざっくばらんに議論を重ね、新しい発見やアイデアを探しているんだとか。井黒さんのデスク下には、サッカーボールもありました⚽。

──小さな“なんでだろう”が、300kmの加速器に届くかもしれない。ワクワクのスケールが桁違いです!井黒さん、高橋さん、ありがとうございました!

インタビュー・文:坪井知恵(名古屋大学URA)


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