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第128回名大カフェ☕️「昆虫がナノカーボンを食べて、変えて、出すっ!!!!」

2026年4月27日(月)第128回名大カフェ「昆虫がナノカーボンを食べて、変えて、出すっ!!!!」をオンライン(zoom)で開催しました🧐。今回、小学生から大人まで約150名ほどの方に参加いただきました!今回のゲストは名古屋大学 高等研究院/トランスフォーマティブ生命分子研究所 特任助教 T-GEx*フェロー の宇佐見 享嗣うさみ あつしさんです。(*文部科学省 若手研究者育成事業「世界的課題を解決する知の「開拓者」育成事業」

上:名古屋大学 高等研究院/トランスフォーマティブ生命分子研究所 特任助教 T-GExフェロー の宇佐見 享嗣うさみ あつしさん
右下:MCの松坂屋名古屋店 外部連携担当 林 誠はやし まことさん
左下:MCの名古屋大学 学術研究・産学官連携推進本部 URA 坪井 知恵つぼい ともえ(筆者です🤫。)
➤名大カフェ恒例のイチオシの紅茶🫖のご紹介です。今回よりラティス栄さんよりご提供いただきました。今回は「スリランカのルフナ地方、サンライズ茶園で生産された紅茶」。宇佐見さん曰く「モルト(麦芽)みたいなコクがあります!」。焙煎麦芽のような重厚なコクと甘い香りに思わずうっとり…😊。

2025年に松坂屋名古屋店 本館6階にオープンした紅茶専門店≪ラティス栄≫さんは、インド、スリランカの各茶園より紅茶を直輸入し、高品質のシングルオリジンティーをご提供されています。お近くに寄られた際はぜひお立ち寄りください!


➤生き物がつくる、未来の素材の世界

ーー生き物は小さな、化学工場??

宇佐見さんの進める研究のキーワードは“生体触媒”。つまり、生物によって作り出される触媒(酵素)のこと。漢字で書くと、なんだか難しそうです😅。

宇佐見さん「生体触媒でできるもの。身近な例でいうと、チーズ🧀やお酒🍺、でしょうか。」

食べ物の例だと、ぐっとイメージが湧きます。他にも、お味噌や醤油、そしてヨーグルトなども同じです。微生物などの生物が持つ酵素の働きによって、原料が別の形へと変わっていきます。では、その酵素とは一体どんなもので、どのように反応を進めるののでしょうか🧐?宇佐見さんはまさにその仕組みを探っています。

生体触媒のイメージ
世界一値段が高いことで知られるコーヒー「コピ・ルアク」。ジャコウネコがコーヒーノキ果実(コーヒーチェリー)を食べ、その体内で腸内細菌や酵素の働きによって変化することで、独特の香りや味わいが生まれます💩生体触媒って、すごい…😳

生き物×原料。
この組み合わせは、無限の可能性がありそうです…🙄

ーー宇佐見さんの研究の主役は・・・昆虫とナノカーボン‼︎‼︎

新しい生体触媒を見つけるべく研究を進める宇佐見さん。そんな宇佐見さんが着目したのは、「昆虫」×「ナノカーボン」という組み合わせです。

チーズやお酒に使われるのは微生物ですが、発酵には不純物の混入を防ぐための管理や攪拌などが必要で大規模な装置が必要です。一方で昆虫の生体を利用すれば、そうした課題をクリアできる可能性がある、そこに宇佐見さんは着目したんだとか。

昆虫のチカラに魅せられた宇佐見さん。今回着目したのは、「ハスモンヨトウ幼虫」。農作物を食べる害虫として知られる虫🐛です。

そして原料は「ナノカーボン」。炭素原子(C)を主成分とするナノメートルサイズの炭素材料の総称です。

ナノカーボンとは、高い電気伝導性や熱伝導性を持ち、非常に軽いことから、ナノテクノロジーの中心的な素材として注目されています。半導体や医療分野など、幅広く応用されています。

一方で、ナノカーボンの構造を作るには工程がとても複雑で、コストも時間もかかる上に、大量の廃棄物も発生します。

そうした課題を解決できないかーーそんな「問い」から、この研究は始まりました。

その詳細は…動画をぜひご覧ください🤗‼︎(※動画は後日公開予定です。)

➤昆虫の中で、何が起きるのか?

ーー昆虫が食べると、ナノカーボンがどう変わる?

ハスモンヨトウ幼虫にナノカーボンを実際に食べさせ、生物変換が起こるのかを検証するために、宇佐見さんはさまざまなナノカーボン分子を試したんだとか。

幼虫にナノカーボンを摂取させてそのフン💩を回収。構造解析など多角的な方法でどのような変化が起こったのかを調べていきます。

[6]MCPPを食べたハスモンヨトウ幼虫の糞を集めて解析したところ、図右上の赤色になっている部分に酸素が入ることが分かりました。この反応を試験管内で進めることは実はとても難しいんだそうです。

その結果、「[6]MCPPろく エムシーピーピー」というナノカーボンを食べると、特定の1箇所に酸素が入る骨格「[6]MCPP-oxyleneろく エムシーピーピー オキシレン」へと変化し、蛍光を発する性質を持つこともわかったそうです。

宇佐見さん「ハスモンヨトウ幼虫の中で、この反応を進めた“主役”はなんだと思いますか?」

気になりますよね🧐
しかもこの反応は、ハスモンヨトウ幼虫でしか確認されていないようです。

ーーナノカーボンを変える“主役”は、一体誰?

食べて、変える、その反応の担い手として考えられるのは「腸内細菌」と「幼虫自身の生体触媒(酵素)」の2つ。宇佐見さんの研究の結果、今回の反応には「ハスモンヨトウ幼虫自身の酵素」が関与していることが分かりました。

では、その酵素とは何かーー。
その解明のために、遺伝子の解析が行われました。

[6]MCPPを摂取した幼虫の中腸では、いくつかの遺伝子発現が増加しており、その中でも、「シトクロムP450(CYP)」と呼ばれる、薬物や内因性物質の代謝や排泄に重要な働きをする酵素群の量が増えていることが分かりました。

つまり、[6]MCPPはハスモンヨトウ幼虫のお腹の中で、P450という酵素の発現を促し、その酵素と反応して[6]MCPP-oxyleneと変換され、糞の中に排出されている、ということが分かりました。

実際にP450と[6]MCPPとが反応しているまさにその瞬間を見ることはできませんが、宇佐見さんはシミュレーションにより、それを可視化することにも成功。(この研究成果は世界的に有名な雑誌Scienceにも掲載されました👇🏻。)

今回得られた[6]MCPP-oxyleneが、今後どのように活用されていくのか。
その可能性は、これから広がっていきます。

生き物の力を活かした新しいものづくり。
宇佐見さんのその挑戦は、さらに多様な昆虫へと広がろうとしています。

➤参加者の声と宇佐見さんからの回答

昆虫のチカラを活かした研究のお話。その魅力に参加者もワクワク!質問が止まりません。そんな様子を見越して、宇佐見さんは予定よりも長めに質問タイムを設定してくださり、Q&Aの時間は大いに盛り上がりました。

「大変面白いお話が聞けてよかったです。」
「面白い効果に驚きました。」
と参加された方から嬉しいコメントが寄せられました。また、
「虫の実験画像には驚きました(笑)。」
「研究の進捗を発想を軸に話して下さり、ワクワクしました!」
「研究の表に出ない苦労されたお話は印象的でした。」

という研究の奥行きや意外性に触れるコメントも多くいただきました。

こうした参加された方からの声からも、生き物の可能性がひらく未知の世界に思いを巡らせる時間となったことがうかがえます😊。

みなさま、たくさんのコメントやご質問、本当にありがとうございました。事前質問や当日お答えしきれなかった質問やコメントについて、以下、宇佐見さんからの回答です。


Q. このような合成手法の工業的な価値について興味があります。大きなスケールで合成しようとした場合は、飼育するスケールを大規模にする以外にも策はあるのでしょうか?

A. まだ実現できていませんが、主に2通りあります!1. 昆虫体内の酵素に変異を導入し、より効率的に生産する方法。2. 対象酵素のみを大腸菌などの細胞に導入し生産する方法が考えられます!

Q. [6]MCPPオキシレンが光るのは、どのようなメカニズムですか?蛍光でしょうか?自発光でしょうか?

A. 蛍光です!メカニズムは簡単にいうと分子の対称性が下がるためです!

Q. ハスモンヨトウに[6]MCPP以外のものを食べさせてなにかできますか?

A. できてますが、まだ論文として発表できていない分子も多いので今後にご期待ください!

Q. 変換が多いのは何齢幼虫とかあるんですか?それとも幼虫の時はずっと変換が起きているのですか?

A. すごいところに注目していただきありがとうございます!4,5齢幼虫です!理由は、4,5齢になるとP450をはじめとした異物代謝酵素が発現するからです!

Q. 同じ量の化合物を与える場合、少数の大きい昆虫、多数の小さい昆虫、どちらの方がメリットがあるのでしょうか。

A. 今回のハスモンヨトウ幼虫の場合だと前者の「少量の大きい昆虫」で実施した方が良いです!小さい幼虫(1-3齢)だと分子を代謝できないことが実験的にわかっています!

Q. [6]MCPPは1枚あたり、幾らしますか。

A. 20mgで約3万円程度です!高価ですよね….

Q. [6]MCPP-oxyleの単結晶を作るのは難しくなかったですか?

A. この分子に関しては、他の分子に比べると難しくない部類でした!

Q. アイデアを思いついてから、結果が出るまでどのくらい時間がかかりましたか?

A. 論文という結果になるまでには約3.5年です!(早いと思うか遅いと思うかはみなさま次第です….)

Q. 新たなものを食べさせることで、虫はお腹をくだしたりすることはないのでしょうか。

A. あります(笑)!  他には忌避として食べなくなることもあります!その場合は、与える量を減らすことで対策しています!

Q. プラスチックなど分解しにくい高分子化合物の廃棄物を有益な物に換えるような生物はいますか。

A. 有益な物というよりも分解するという意味においては、います!アメリカミズアブやワックスワームが挙げられます!

Q. 昆虫に「モノ」を食べさせるには、味・匂い・色・硬さ等などを工夫する必要があるように思われますが、ようやく食べてくれた場合、何が作り出されるのか、あらかじめ予想がつくのでしょうか。

A. 予想がつくものと今回お話しさせていただいた分子のように当初考えてもみなかったような分子が作られることもあります!

Q. 虫も食べる時に熱さを感じるのですか?

A. はい!虫は私たち人間と同じで温度の変化を感じる「変温動物」なので食べる時以外にも感じています!


➤最後に…

「虫が素材をつくる」と聞くと、どこか遠い未来の話のように感じるかもしれません。けれど、生き物の体内では、私たちの知らないところで日々、精巧な化学反応が進んでいます。

その小さな反応の積み重ねが、新しい素材の生み出し方や、これまでにないものづくりの可能性へとつながっていく——。今回の名大カフェは、そんな未来の入り口をそっとのぞくような時間となりました。

名古屋大学の研究者たちは、その最前線にある発見や問いを、「名大カフェ」という場で社会と共有しています。研究の現場で生まれる驚きやひらめきを、これからも一緒にのぞいてみませんか。

なお、今回の動画配信は、準備が整い次第こちらにリンクを掲載いたします。公開まで、もう少しお待ちください。

➤動画公開です!

大変お待たせ致しました!動画の準備ができました🤗。以下のyoutubeより、是非ご覧ください!

報告:坪井知恵(名古屋大学URA)


➤関連リンク

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