#16 愛作譚 「劇団スカッシュ - 『joke』 編」
「才能無いから藻掻いてるんじゃないか!
才能無いから大変なんじゃないか!」
「辞めれるなら…辞めれるならもっと前に辞めてる…!」
『joke』- 劇団スカッシュ
まえがき
劇団スカッシュのファンになったのは、高校生の時分である。
当時一緒にバンドをやっていた、親友の同級生S君の影響であった。
「劇団スカッシュ」とはその名の通り舞台を中心に活動する演劇集団であり、またドラマ作品や旅動画などを主にYouTubeに投稿している動画クリエイター集団でもある。

2004年頃活動開始(wiki調べ)。
画像左から
・前川健二(役者、編集、経理などを担当。)
・大塚竜也(劇団主催。監督、演出、脚本、そして役者を担当。)
・大塚祐也(役者、プロデューサー。大塚竜也氏と実の兄弟。)
・中田大地(役者、編集や音楽を担当。2022年より活動休止中。)
また現在は、吉本興業所属の女優「奈良岡にこ」氏がメンバーとして加入している。
1998年生まれの私は、ギリギリ日本での“Youtube”及び“Youtuber”ブーム黎明期の世代ではないだろうか。
フラッシュ倉庫やニコニコ動画でオタク文化に足を突っ込み、大人な世界を少し覗いた気でインターネットにかじりついていた当時の私としては、「Youtuberなんて子供向けっぽいし、ちょっとカッコ悪くない?」
と斜に構えていた節もあるのだが、それでもやはり学生の時分でまだまだ自分の中の“面白い”が然程確立されていない歳でもあったから、気づけば割と多くの時間をYoutubeに使っていた様に思う。
あの時は“Youtuber”という言葉が令和になってここまで浸透するとは想像もしていなかった。
(てか平成がこんなに早く終わるとも、思ってなかった。歯姫。)
当時見ていたチャンネルで、今では信じられないくらい金持ちの有名人になった人もいれば、何も変わらず当時のままのペース、スタイルで活動している人もいる。
しかしやはり、流行り廃りのブームの1つである。
所謂“オワコン”と化してしまった人や、消えてしまった人も多い。
まあそんなことはどうでもよくて、私とS君はありとあらゆる物事でどちらが面白いもの、カッコイイものを知っているのかを常に競い合っていた。
しかし、大半は私が彼に何かを教わっていた様に思う。
劇団スカッシュの名前をS君から聞いた時は、
「ああ知ってる、隙間男の人たちでしょ?」
という感じだった。
「Stalking Vampire」
恐らくこのチャンネルで一番有名なコンテンツである。
舞台はとある古民家。
人の姿をした全身真っ白のバケモノに男女が突然襲われるというシンプルなホラーファンタジー作品であるが、着目すべきは「次に見る動画を選択肢から選ぶことで、自分でストーリーを決められる」というノベルゲームの様なスタイルを取り入れている点である。
各動画に展開の違う続きの動画が幾つか用意されており、視聴者が自らその後の展開を選択できるのだ。
「隙間男シリーズ」がYouTubeにおいてこの手法の完全なるパイオニアだったかどうかはわからないが、これが当時の私にとってかなり画期的だった事は間違いなく、また隙間男のビジュアルのインパクトや演者たちの演技力の高さから、「すごい事考える人たちがいるんだなあ」と思ったのを覚えていた。
しかしそれ以上ディグる事も無く、それ以外の感想は特になかった。
その返答を聞いたS君は「コイツは何もわかっていないな」という顔をして、私に「君は何もわかっていないな」と言った。
そうして勧められたのが、この「joke」という作品である。
「『joke』予告編」
厳密にはこの時他にも沢山の作品を紹介して貰ったのだが、兎にも角にもまずはこれを見ろと最初に紹介されたものであった。
そして私は今尚、この作品に感銘を受け続けており、時に学び、時き笑い、時にインスピレーションを受け、時に助けられている。
とりあえず今回はこの「joke」という作品に絞って話をしたい。
~あらすじ~
「joke 第1話『あいつがお家に入った理由』」
売れない小説家の「ようちゃん(前川健二)」と、その友人であり自身の書いた小説がヒットして売れっ子となったばかりの小説家「とし(大塚祐也)」。
2人がとしの部屋で対面して話しているところから物語はスタートする。
お互いの近況など他愛もない話をする2人だったが、
「でもようちゃん、こんなくだらない話しに来たわけじゃないだろ?」
というとしのセリフで空気は一変する。
としは親友であるようちゃんを信頼し、何かあった時の為に自宅の合鍵を渡していた。
この日、ようちゃんはその合鍵を使ってとしの家に侵入し、としの未発表の新作の原稿を盗んでいたのだ。
そしてとしは偶然、その一部始終を目撃していたのである。
何故こんな事をしたのか、自分の作品に対して恥ずかしくないのか、とようちゃんを責めるとし。
しかしようちゃんは反省と後悔の表情を浮かべながらも、
「本当に頭がおかしくなったのかもしれない、どうせ信じてもらえないと思うんだけど、昨日凄いことがあって…」
と、盗みを働いた理由を話し始める。
そこでようちゃんから語られた話は、まさに“冗談みたいな話”であった。
~キャスト~
今作の主人公「ようちゃん」を演じるのは、前川健二氏。
「とし」を演じるのは大塚兄弟の弟の方、大塚祐也氏である。
また今作は当時のメンバー4人の他に、役者の上田理絵氏がゲスト出演している。

そしてマジで綺麗。
ゲスト:上田理絵(役者。コメディ団体「モーレツカンパニー」主宰。)
「youtuber」離れした圧倒的クオリティ
「joke 第2話『あいつの言ってる好きな人』」
1本10分弱、全8話から成るこの作品。
素人ながらに、何度見ても本当に完成度の高い作品であるなと感服する。
監督脚本、また本作では“とし”の兄である“かつ君”を演じた大塚竜也氏も、自ら「本当によく出来た作品」と語っている。
(何処かで「自分が書いた作品で1番面白いと思う」と仰ってたのを見た気がするが、ソースが見つからなかった。)
1話、2話では登場人物の関係、そして状況の説明といったところだが、3話から物語は急ハンドルを切って起承転結の「転」となり、そのままを回追う毎にどんどん視聴者の想像を裏切ってあらぬ方向に話が展開していく。
今回こちらのnoteはあらゆるネタバレを避ける方針の為詳しい事は書けないが、もうあらすじからは想像もつかない程に変わっていく。
例えるならば伊坂幸太郎の小説を読んでいるような、裏切られる事にワクワクが止まらない感覚に近いかもしれない。
「joke 第3話 『あいつが出会った昔のあいつ』」
この何とも言えない空気感と、絶妙な緊迫感。
そんな中所々挟まれるユーモアもスカッシュの特徴だ。
この物語は登場人物全員が超重要キャラであり、無駄がない。
今作ではメインで活躍する前川健二氏と大塚祐也氏の2人は、感情の起伏が激しく喜怒哀楽を全身で表現するキャラクターを演じた時の威力が本当に凄まじい。
現在活動休止中の中田大地氏は、飄々として茶目っ気のあるキャラクターが天下一品だ。
(ちなみに私はずっと中田さん推しであった。)
大塚竜也氏は監督脚本も同時に行っている為、作品で主人公になることはほぼ無いのだが、その分誰よりも作品全体を俯瞰して見ている為演技上でも周りを生かす重要な立ち回りのキャラクターを完璧に演じられている事が多い印象である。
勝手なファン目線ではあるが、メンバー4人それぞれが最も得意な分野のキャラクターを演じている作品はこれなのでは?と思っており、全員の演技が光っている。
映像効果とSE
「joke 第4話 『あいつの昔に動かされた話』」
元々が舞台作品という事もあり、突然過去と現在が入れ替わる場面展開やカメラワークもアイデア全開で特徴的である。
また何度も見て思ったのが、効果音やBGM(SE)がかなり秀逸という点で、この混沌としているストーリーやそれに応じてドンドン変わっていく登場人物達の心情が、これらのおかげで視聴者に格段に伝わりやすくなっているなと思う。
“脚本、演技、映像”等どれをとってもただの「youtuber」という言葉では片づけられないレベルの高さは一目瞭然だろう。
全ての創作人に刺さる苦悩と葛藤
「joke 第5話 『あいつに溢れ出した思い』」
そして私の思うこの作品最大の魅力は、監督脚本の大塚竜也氏自身の叫びにも感じられる「創作人の苦悩」を、超リアルに我々に突き刺してくる点である。
主人公であるようちゃんは、売れない小説家。
対する親友のとしは、作品が売れた小説家。
同じスタートから差がついてしまった2人。
ただ、ぶっちゃけこの手の設定は割とよくあるもので、分かりやすさを良い事に中身がスカスカのまま心情に訴えかける薄っぺらい作品も世の中には多い。
しかしこの作品に関しては、まさに冗談みたいな奇想天外のストーリーと裏腹に、セリフ一つ表情一つどれをとってもリアルで、解像度があまりに高い。
創作、才能の差、年齢、そして恋愛。
まさに「創作する人間の葛藤」。
物語そのものが滅茶苦茶面白いのは前提として、多彩なギミックでカモフラージュしながら、その葛藤をこれでもかという程リアルな現実として我々に突きつけてくるのである。
「joke 第6話 『あいつにとって明らかな誤算』
バンドマンの私も一応、創作人の端くれである。
売れないバンドマンの私にとって、ようちゃんの悲痛な叫びや、他の人物達から何気なく発せられる鋭利な言葉たちはあまりに痛い。
(そして初めてこの作品を見た高校生の時から現在に至るまで、どんどん痛みは強くなっている。)
一つ印象的なものを紹介したい。
ようちゃんととしが言い合うシーンでの一幕。
とし「ようちゃんだって、あと少しなんだよ!あとほんのこれだけ埋めれば…!認めてもらえるんだよ…!」
ようちゃん「これだけ埋めればなんて…その“これだけ”がどれだけ難しいかなんて、お前にはわからないだろ!」
文字に起こして書いている今この瞬間も胸がずっしり重たくなっているくらい、個人的にキツく胸を掴まれる場面である。
本編を見て頂ければ伝わると思うが、としはとしなりの一生懸命でようちゃんに向き合っており、一切の悪気が無い所もまた辛い所である。
つまり、私が考えるこの作品の肝は
解像度が高い=規模感問わず全ての創作人が共感できる
という点なのだ。
記事冒頭にある引用も、そういったセリフの一つである。
しかし、だからこそ私はこれを全ての創作人たちとそのファンの皆様へ勧めたい。
見る時のこちら側のマインドによってはもはや拷問となってしまう事もあるが、同じ悩みを抱えている主人公や一生懸命な登場人物たちに共感し心を動かされる事間違いなしなのだ。
「joke 第7話 『あいつは悲しかったから怒った』」
先程も書いた通り、この作品の登場人物は全員が重要人物だ。
そして全員が自分の視点での現状に一生懸命で真っすぐなのである。
それが交差しすれ違っている様こそが、この物語がここまで面白くなっている所以だろう。
「joke 最終話 『あいつの冗談』」
あとがき

2019年、まだ私が福岡に住んでた時に1度博多に劇団スカッシュがイベントで来ており、その時に撮ってもらったチェキ。
ドキドキと列に並び、私の番がきてぺこりと挨拶をすると、確か竜也さんが「カッコイイ服だね!何かやってるの?」みたいな事を、言うてくれた。
「あっ…あのバンドをやってて…」
とコミュ障丸出しの全力小声で伝えると「やっぱり!そういう事だよね〜」とメンバー4人納得してくれて、そのままそれぞれ楽器を持ったポーズで写真を撮ってくれた。
そしてその時、プレゼントBOXに簡単な手紙と私のバンドSleeping Girlsの出来たてのCDを入れた。
もうその時のX(ちなみにTwitter時代)のアカウントは消してしまったのだが、その後しばらくしてライブで大阪に居た時、楽屋でふとXを開くと竜也さんからフォローが来ていてビックリしたのを覚えている。
もしかしてCD聴いてくれてたのだろうか…
何はともあれ、嬉しかった。
その日ニヤニヤと1日を過ごしたのはよく覚えている。
他にも大好きな作品がまだまだ沢山あるので、また自己満の紹介記事を作って感想を綴りたい。
兎に角、ここまで読んでくれた人は是非「joke」見てくれたまえ。
感想を語らおうぞ。
Sleeping Girlsの「目覚め」という1stミニアルバムに収録されている「嘘つき」という曲も、ダイレクトにでは無いが実はこの作品からも影響を受けている。
ちなみに2018年に1度、舞台版「joke」の再公演を行っている。
生では見れてないが、DVDで鑑賞。真骨頂。
そちらもやはり最高であった。
いつか九州来てくんないかな〜。
いやしかし、このチェキ撮ってもらった2019年がもう既に6年前と。
私その時21歳と…。
まさに冗談みたいな話だ…。
~
Sleeping Girls 最新MV「フリージア」!⬇
https://youtu.be/VlI6jf-ZP60?si=aodIhyNoovVs-N2e
その他MVやライブ映像など!⬇
https://youtube.com/playlist?list=PLV2-Ef0QpSn-N7VD7qbfPaP9L7hlXbvAk
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https://sleepinggirlsjapan.jimdofree.com/
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