扁平足と和紙 #毎週ショートショート
たとえば、プールのあとなんかに、更衣室の床に残った足跡を見て、わたしは「和紙みたいだ」と思う。
コンクリートの床に、自分自身が転写されてしまった気がしてしまう。
和紙というのは、にじみやすくて、でもいちど染みたものはなかなか消えないのだという。
うすく、やわらかく、乾きやすいが、しっかり覚えてしまう紙。
そう聞くと、あの灰色の床も、わたしの足も、どちらもそんなふうに見えてくる。
わたしは自分の足があまり好きではない。
土踏まずのない足裏。跳ねない歩き方。
中学の健康診断で「扁平足ですね」と言われたとき、自分が誰かの分類に吸いこまれていく感じがして、それ以来、ずっと。
なのに、夏の帰り道には、靴下からにじんだ汗が、スニーカーの底にゆっくりと沁みていく。
それはもう、恥ずかしいとか汚いとかじゃなくて、ただどうしようもなく「わたしのかたち」だ。
だからもし、床に敷かれた和紙を、うっかり踏んでしまったとして。
誰かがそれをそっと押し花のように保管してしまったら。
扇風機の風に足をあてながら、ふとそんな想像していた。
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