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流れ星にスプーンを掲げて #毎週ショートショートnote

ある夜、おじさんが庭に落ちてきた。
ガシャン、と物置の影で大きな音。父が飛び出すと、煤まみれのおじさんが縁側に腰をおろして、プリンを食べていたらしい。

近所の子どもたちは「隕石のおじさん」と呼ぶ。
夜になると公園で空を見上げ、「あれが私の古巣だ」と指さす。指先はいつも違う方向をむいていた。
話すことはでたらめで、たとえば「人生は軌道修正の連続だ」とか、「プリンを食べすぎると惑星間航行に支障が出る」とか。
笑ってしまうのに、妙に説得力があった。

ある晩、町中の冷蔵庫からプリンが消えた。
問い詰めると伯父さんは、「重力に呼ばれた」とだけ言い、縁側からふわりと浮いた。そのあとは、空に吸い込まれるおじさんを見上げるだけ。
家の中にはしばらく、砂糖が焦げる甘い匂いが居座り、カーテンの裾に染みついてしまった。

流星群の夜、わたしは空に凝視した。
落ちてくる光の尾。そのどれかに、プリンのカラメル色が混ざっていないか。
スプーンを握りしめて、目を凝らしながら探す。

(419字)


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