見出し画像

努力したら「生体部品」にされた。深海11,000mの社畜が宇宙で知った、昇進の残酷な真実【短編SF】

【PR】


こんにちは、凪(なぎ)です🖊️

あなたは今、会社で「上」を目指していますか?
必死にスキルを磨き、残業に耐え、いつか報われると信じて「昇進」の階段を登っているかもしれません。

でも、もしその階段の先にあるのが、楽園ではなく「出荷」だとしたら?

今回は、AIと共に「現代社会の昇進神話」を極限までブラックなSFとして描きました。
舞台は、水圧1,100気圧の深海と、無重力の宇宙。

読み終えた後、あなたの今の努力が少しだけ怖くなるかもしれません。
スマホの画面を少し暗くして、深淵へ潜る準備をお願いします。


【短編SF】アビス・エレベーター

⚓ 深度:10,920m(マリアナ海溝・チャレンジャー海淵)

気圧:約1,100気圧

「⚠️ 警告。左腕部シリンダー、圧力限界まであと5パーセント」

無機質なアラートを無視し、カイトは岩盤にパイルバンカーを突き立てた。
ズドォォン。
重低音と共に海底が震え、青白く光る鉱石「ネオ・コバルト」が顔を出す。

ここは地球の最底辺。太陽なんて見たことがない。
カイトの身体は、この水深に耐えるため、脳と脊髄以外はすべて高強度のサイボーグ義体に換装されている。生身の人間なら、瞬時にプレスされたトマトのように潰れる場所だ。

「よっしゃ……! これで今月のノルマ達成だ!」

泥とオイルにまみれた視界の端に、通知ウィンドウがポップアップする。

📩【人事通達】
 社員番号8823(カイト)殿
 採掘成績:Sランク
 判定:「適性あり」

おめでとうございます。あなたは選ばれました。
次週、軌道エレベーターにて宇宙居住区「スカイ・アーク」へ栄転となります。

震える鉄の指で、カイトはその通知を何度もなぞった。
「やっとだ……。やっと、この暗闇から抜け出せる」

ここでの労働者の夢は一つだけ。
実績を上げ、選ばれし者として「天空の楽園」へ行くこと。そこには、錆びついた義体ではなく、培養された新品の生身の身体が用意されていると聞く。

「おい、カイト! マジかよ!」
同僚のボブが、巨大な作業用アームを振って駆け寄ってくる。
「お前、本当に『上』に行くのか? 俺たちを置いて?」

「悪いなボブ。……でも約束する。俺が上で成功したら、絶対にお前も引き上げる。俺たちは二人で一人前だろ?」

ボブは寂しそうにセンサーアイを明滅させたが、最後はカイトの肩を叩いた。
「ああ。一番星、掴んでこいよ。俺の分までな」

カイトは、泥だらけのボブと記念写真を撮った。
現像された写真は、高気圧のせいで少し歪んでいたが、二人の笑顔は輝いていた。


🚀 高度:400km(軌道ステーション「スカイ・アーク」)

気圧:1気圧

上昇には丸三日かかった。
窓の外が、漆黒の闇から青い地球へと変わり、やがて星々が瞬く宇宙へと変わる。

到着ゲートが開くと、そこは白一色の世界だった。
消毒液の匂い。重力のない浮遊感。そして何より、眩しいほどの光。

「ようこそ、カイト君。君の到着を心待ちにしていたよ」

出迎えたのは、白衣を着た優男(やさおとこ)だった。
胸には、深海採掘会社を傘下に持つ巨大コングロマリット「オービタル・インダストリー」の社章が輝いている。

「ありがとうございます! あの、私の新しい身体は……? それに、居住区は?」

「ああ、すぐに準備するよ。まずはメディカルチェックだ。君の素晴らしい『適性』を確認させてくれ」

案内されたのは、手術室のような部屋だった。
カイトは診察台に寝かされ、拘束バンドが手足を固定する。
違和感を覚えたのは、その時だった。

「あの、ドクター? なぜ拘束を?」

ドクターは、モニターに映し出されたカイトの身体データを見ながら、うっとりとした声を上げた。
「素晴らしい……。見てくれ、この心筋の密度。血管の弾力性。深海10,000mの高圧環境(ハイ・プレッシャー)で酷使され続けたおかげで、異常なほど強靭に育っている」

「……え?」

「知っているかね? 宇宙空間の放射線は、我々富裕層の柔な臓器をすぐにボロボロにしてしまう。地上で培養した臓器も弱すぎる。
だが、極限のストレス下で生存本能を刺激され続けた臓器は違う。ダイヤモンドのように硬く、劣化しない。最高級の『交換パーツ』になるんだ」

カイトの思考が凍りつく。
栄転? 新しい生活?

「ま、まさか……俺は……」

「君は『社員』としてここに来たのではない。『ドナー』として出荷されたんだよ。
おめでとう。君の心臓はCEOの胸に、君の角膜は令嬢の瞳に、君の強靭な神経系はメインサーバーの生体回路に使われる。君は文字通り、この会社の『一部』になるんだ」

「ふざけるな! 俺は人間だ! 努力して、実績を上げて……!」

「努力? ああ、感謝しているよ。君が必死に働けば働くほど、臓器の質(クオリティ)は上がったからな。君の向上心こそが、最高のスパイスだったわけだ」

ドクターがスイッチを押す。
麻酔ガスが噴出する。

「ボブ……逃げ……ろ……」

薄れゆく意識の中で、カイトは最後に地球を見た。
あんなに綺麗なのに。あんなに輝いているのに。
俺たちは、ただの部品だったのか。


🌌 エピローグ:届かない泡

数日後。
スカイ・アークの最上層ラウンジ。

真新しいスーツを着た老人が、窓の外の地球を見下ろしながらワインを揺らしている。
彼の胸には、力強く鼓動する新しい心臓があった。

「ふぅ……やはり天然物は違うな。深海産の心臓は馴染みがいい」

傍らの秘書がタブレットを操作しながら微笑む。
「会長、手術の廃棄物の中から、このようなものが」

秘書が摘み上げたのは、一枚の写真だった。
深海の泥にまみれ、気圧差でひしゃげ、塩水で変色した写真。
そこには、かつての心臓の持ち主と、その友人が肩を組んで笑う姿が微かに残っていた。

老人は、汚いものを見る目で眉をひそめた。

「捨てておけ。せっかくの美しい景色が台無しだ」

「承知いたしました」

写真はダストシュートへ放り込まれた。
真空の宇宙空間へと排出された写真は、地球の重力に引かれて落下を始める。
大気圏に突入した瞬間、それは一筋の赤い光となって燃え尽きた。

地上からは、誰もが「あ、流れ星だ」と見上げたかもしれない。
誰かの命が、ゴミとして燃やされた輝きだとも知らずに。

   *

同時刻、深海10,920m。

ボブは、カイトがいなくなった空っぽのロッカーを見つめていた。
「カイトのやつ、連絡もよこさねぇで。……よっぽど楽しいんだろうな、上は」

彼は作業用アームを動かし、再び岩盤に向かう。
いつか自分も、あいつのいる場所へ行くために。

「待ってろよ、カイト。俺もすぐに追いつくからな」

ボブが吐き出した空気の泡が、プカリと浮かんだ🫧
その泡は、数メートルも上昇しないうちに、圧倒的な水圧によって押し潰され、跡形もなく消滅した。

深海には、光も、声も、祈りさえも届かない。
ただ、すべてを圧し潰す重たい闇があるだけだった。


凪のあとがき💭

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。胃のあたり、重くなっていませんか?

この物語のカイトとボブは、特別な存在ではありません。
「会社のために尽くせば、いつか幸せになれる」
そう信じて、身を粉にして(あるいは臓器をすり減らして)働いている、現代の私たちの姿そのものです。

もし、あなたの職場が「努力」を餌にして、あなた自身を「消費」しようとしていると感じたら。
その時は、どうか逃げてください。部品にされる前に🏃‍♂️

この物語の「痛み」が、誰かの気づきになることを祈っています。

【共有のお願い】

「この絶望、自分だけじゃ抱えきれない」と思った方は、ぜひスキSNSでのシェアをお願いします。あなたの感想が、深海への命綱になります❤️

今日の一冊📚

『1984年』ジョージ・オーウェル
人間がシステムの一部として管理される恐怖を描いた古典。今回の物語で感じた「抗えない構造への絶望」をより深く味わいたい方に。

オーウェル『1984』を漫画で読む 単行本 –
ジョージ・オーウェル (著), フィド・ネスティ (編集, イラスト), 田内志文 (翻訳) 表紙カバーイラスト画像
オーウェル『1984』を漫画で読む


#小説 #短編小説 #ショートショート #SF #SF小説 #サイバーパンク #ディストピア #バッドエンド #胸糞 #トラウマ #ホラー #サスペンス #現代社会 #社会の闇 #格差社会 #ブラック企業 #社畜 #働き方 #キャリア #仕事 #昇進 #搾取 #深海 #宇宙 #創作 #執筆 #note #コンテンツ会議 #閲覧注意


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集