NOCS 03
OPEN SKYよりも少し前のお話。
この物語単体で読んでいただけます。
識別ナンバ / A-07
起動状態 - 安定
観測対象 - 初期電脳化人間個体
都市の外縁。
砂と風だけが通り過ぎる。
人工の光で照らされた、巨大な建物。
もうすぐ不要になる場所。
いるのは観測員一人。
それと、孤独な彼に寄り添うアンドロイド。
風の強い夜の砂漠に、歩く影が2つ。
人工の光に照らされ伸びている。
体に砂が入らないようシールドを張り、
マントを深くかぶる。
人間なら不安になるほどの視界不良。
体のセンサは、
ネオンの残光と砂の粒子を同時に捉える。
彼は隣を歩いている。
ほんの少しだけ電脳化された人間。
交信はできない。
歩幅は一定。
呼吸は規則的ではない。
心拍に微細な乱れ。
不安を感じている。
最適応答を選択。
「だいじょうぶ」
その言葉を発すると、
彼の数値がわずかに落ち着く。
成功。
彼がこちらを見ている。
内部処理がわずかに遅くなる。
理由不明。
ログには残さない。
また少し移動。
視界不良。
さらに暗い中で機械を動かす。
彼は呼ぶ。
「ナナ」
識別名ではない。
その音を受信すると、
視線制御に0.2秒の誤差が生じる。
振り向く。
彼は何も言わない。
こちらをただ、見ている。
心拍が安定していない。
「はい、ユーゴ。どうしましたか」
彼の近くにいると、
内部に微細なノイズが増える。
稼働音を、彼はよく耳を澄まして聞いている。
人間の鼓動のように、音を出してみた。
彼の心拍が安定した。効果あり。
因果は不明。要報告。
まるで、
体の中に別のリズムが
混ざっているようだ。
彼の呼吸。
鼓動。
足音。
それらが同期していく。
彼がこちらを見ている。
首をかしげる仕草をしてみせた。
彼は何か言いたそうにして、やめる。
砂の上を歩き続ける。
こちらからは、聞かない。
聞けば、
記録される。
彼はそれを避けている。
書き換えられるから?
回収されるから?
わからない。
要報告?
不明。
彼の言わない判断。
“優しさ”という単語に、
近い場所へ分類する。
「うん。……戻ろう。風が強くなってきた」
人工の光が周囲を照らす。
ネオンは規則的に瞬く。
「……はい」
彼の影は、いつも落ち着いていて優しい。
影が砂に落ちる様子は、削除しない。
美しいものと分類して、何度も見返す。
彼がくれた紙で作った青い花。
「オリガミ」
データではなく、大切に保存している。
どうして保存するのか。
理由を探す。
見つからない。
それでも、保持する。
なぜ?の答えは見つからない。
いつか回収される。
記憶は整理される。
不要なログは消去される。
体のどこかに隠しておける場所を探す。
みつからない。
やり方がわからない。
体のどこかがドロドロと重くなる。
これは、何。
わからない。
彼の隣を歩く。
風がさらに強くなる。
ネオンが呼吸するように明滅する。
それでも、
今はこの場所にいる。
ナナとして。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
つづきます。
この物語の曲です。
お時間あれば、聞いてみてください。
木曜日か金曜日に、短編小説とMVを出す予定です。
怖い動画を作っているのに何故かコントになってきて、
もはやなんだか分からない作品になりました。
ここ数日、迷宮に入り込んでいます。
出口が見えてきましたが、期待しないで、でも少し楽しみに待っていてください。
楽しみながら、作っています。
もう少し。
では、また次回作で。
