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『父性の系譜』

本日は父の日です。
これは祖父への回想ですが、
先祖代々、父性は血脈として受け継がれるものです。
抑えられない想いを綴ります。

貴方がこの世を去ってより
家族は骨組みを失い
暗澹たる道を歩むことになりました。

私は貴方から無限の寵愛を授かりました。
世に散らばった可能性と構造を
自分のこの手で解体していく楽しさを
貴方は語らず教えてくれましたね。

しかし、冬の或る寒い日に急逝した貴方には
何一つ声をかけられませんでした。

青ざめて痩せ細り、骨張った大きな手。

冷たい波が闇に引いていくような
目を背けたくなる信じ難い光景。

大好きだった祖父。
人望厚く、聡明で三國連太郎に似ていた祖父。

悲しい記憶を色濃く残して
どこかへ去ってしまいましたね。

衝撃音と共に地面に打ち倒れた最期。
どんな走馬灯と恐怖に包まれていたのでしょう。

前後の道を絶たれた生々しい焦りと、
行く当てもない不安、
途轍もない喪失感。

徐々に希釈され、
変形してしまう記憶に抗うように
目を瞑り、また書いてを繰り返す。

日々、
貴方への言葉を折り重ねています。
いつか天へ届くようにと、
荒れた地を耕しながら願っています。

私の懺悔と後悔は貴方の愛を超えました。

得体の解らぬ、計り知れぬもの
そんなものに隠されてしまった祖父。

この身が明日、
灰になって粉々になろうとも
あなたが生きた証を留めたいのです。

おじいちゃん、今どこにいますか。

私はこんな人間に育ってしまいました。
貴方の愛を裏切ったのです。

私が唯一できることは
貴方という存在を
忘れないということです。

貴方はこの世に拡散され、私の肉體・魂のみならず
広く宿って息をしているのでしょう。

どうか貴方が蘇りますように。
今日道端で見たあの花が、おじいちゃんの欠片の一つかもしれない。
昨日の夜空の星が貴方かもしれない。

絶大な威厳を放ち
語らずとも周囲に深い印象を抱かせた、
そんな貴方。

その深淵な意中には
何が隠されていたのでしょう。

貴方が生きていた時代、
私たちはいつも仕事部屋にいましたね。

幼少期から机の周りにはペンや広辞苑、図鑑も沢山ありました。
あの時に触れた記憶は一つ一つ、
しっかりと骨の髄まで遺されています。

これからは、私なりの世界を記します。
貴方からの寵愛が、
今から形になります。

「蛹は冀う。
堅牢な繭を突き破り、
時の恐怖に曝されようとも打ち克つことを」

擬態した私を
どうか、貴方の優しい眼差しで見守ってください。





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