見出し画像

店長として「休む」選択肢を渡していた私が、自分では休めなかった話



私はアパレル店員として約10年間働き、そのうち6年間は店長をしていました。

店舗の中では一番上の立場だった私が、適応障害になり、体調を崩しながら働くことになりました。

元気だった頃は、体調を崩さないことが自分の取り柄のひとつ。

熱を出したり、風邪をひいたりして仕事を休むことはなく、むしろ私は、体調不良になったスタッフをフォローする側。

そんな私が、体調不良になったことで気づいたことがあります。

それは、体調が悪い人には「無理しないで」と言うだけではなく、具体的な選択肢を渡すことが大切だということです。

・私が店長として心掛けていたこと


店長時代、スタッフが体調を崩したときは、まず本人の状態を確認していました。

休める状態なら休んでもらう。

その場合は、他のスタッフに出勤できるか確認したり、SVに連絡して他店舗からヘルプを出してもらえるか確認したりします。

でも、スタッフ全員が「休みたいです」と自分から言えるわけではありません。

「私が休んだら店舗が回らない」

「早退したら、他のスタッフに負担がかかる」

「締め作業をする人がいなくなる」

そんなことを考えて、体調が悪くても言い出せない人もいました。

だから私は、そういうスタッフには、できるだけ選択肢を出すようにしていました。

1.今すぐ早退する
2.他のスタッフの休憩を回してから早退する
3.ヘルプを確認してから早退する
4.休憩をとって、落ち着いてから考える

体調が悪いときは、頭がぼーっとして、普段より考える力が落ちることもあります。

だからこそ、本人にすべてを判断してもらうのではなく、こちらからいくつかの選択肢を出す。

その中から本人が選べるようにする。

それが、私なりの「体調が悪いスタッフへのサポート」でした。

・「自分が頑張れば何とかなる」で乗り切っていた


そんなふうにスタッフには「無理しなくていい」と考えていた私ですが、自分自身にはかなり無理をさせていました。

急に遅番のスタッフが来られなくなった。

でも、他店舗からヘルプが来ても、店舗が違えば締め作業のやり方も違う。

そうなると、

「私が残れば解決する」

となります。

早番で出勤していた日でも、そのまま残って締め作業までやる。

仕事終わりに予定が入っていても、店舗を優先するため予定をキャンセルする。

店長として仕方がなかった部分もあります。

でも、今振り返ると、

「自分が頑張れば何とかなる」

という考え方で働いていたのだと思います。

スタッフには無理をさせないようにしていたのに、自分自身には「自分がやればいい」と言い聞かせていました。

・仕事中は、いつも通りの私だった


その後、様々な原因が重なり私は少しずつ精神的に体調を崩していきました。

涙が止まらない。

胸が圧迫される。

喉が詰まるような感覚がある。

そんな症状が出るようになりました。

それでも、最初の頃は仕事中なら頑張ることができました。

仕事スイッチが入れば、笑顔で接客できる。

スタッフとも普通に話せる。

店長として働ける。

だから、店舗のスタッフからすると、私がそこまで体調を崩しているとは分からなかったと思います。

私自身も、気づかれて気を遣わせたくないという気持ちがありました。

仕事中は頑張れる。

でも、通勤途中や家に帰ってから、休みの日になると涙が止まらなくなる。

そんな状態でした。

そして、症状が悪化していくにつれて、少しずつ仕事中にも涙が出るようになりました。

ストックに下がって涙を抑えたり、SVに電話で相談したり。

それでも私は、「店長だから」という責任感から、なかなか休むことができませんでした。

・店長という立場を離れて感じたこと


その後、体調のこともあり、私は店長ではない一般社員になることになりました。

新しい店長が来てくれたことで、

「もし私が休んでも、店舗のことは店長が対応してくれる」

という安心感がありました。

もちろん、むやみに休むようになったわけではありません。

でも、「私がいなくなったら店舗が回らない」という責任から離れられたことは、私にとって大きかったです。

そしてある日、休憩中に涙が止まらなくなりました。

仕事ができる状態ではない。

でも、どうしたらいいのか自分でも分からない。

店長からは、

「大丈夫?」

「無理しないで」

と声をかけてもらいました。

もちろん、優しさから出た言葉だと思います。

でも、そのときの私は、

「無理しないって、どうしたらいいんだろう?」

と思いました。

・私が欲しかったのは、具体的な選択肢だった



後になって少し落ち着いてから、私はこう考えました。

もし私が店長だったら、

「今日の人員なら早退して大丈夫だよ」

「少し休んだら働けそう?」

など、選択肢を出していたと思います。

もちろん、新しい店長には新しい店長のやり方があります。

私のやり方が正解というわけでもありません。

ただ、自分が実際に「体調が悪くて判断できない側」になったことで、

以前スタッフにしていた「選択肢を渡す」という対応は体調が悪いスタッフにとって、
安心して自分の状態に合った選択をするために必要なサポートだったのだと気づきました。

特に精神的に体調を崩しているときは、自分の状態をうまく説明できないことがあります。

「休みたい」と言うことすら難しい。

だからこそ、周りから具体的な選択肢を示してもらえることが、大きな助けになるのだと思います。

・勇気を出して「早退したい」と伝えた


そして、休職する約1週間前。

今でも印象に残っている出来事があります。

その日は4連勤の1日目でした。

今まで普通にこなしていた4連勤なのに、その日は、

「今日から4連勤か……」

「ここから8時間働くのか……」

と、ものすごく絶望的な気持ちになりました。

涙が出ていたわけではありません。

接客も普通にできていました。

それでも、

「このままだと4連勤を働ききれないかもしれない」

という直感がありました。

シフトを見ると、1日目だけは少し早退できそうだったので、店長に相談しました。

すると、

「じゃあ今日はみんなの休憩を回してから早退しようか」

と言ってくれました。

元々SVとも電話で話す予定もあって、その時私は「今日、早退したい」旨を伝えました。

すると、

「なんでですか?」

と言われました。

SVは理由を確認したかっただけなのだと思います。

でも、そのときの私には、その言葉がとても冷たく聞こえました。

なぜなら私は、それまでずっと体調が悪くても働いてきたからです。

休みたい日も、早退したい日もたくさんあった。

でも、店舗のことや他のスタッフのことを考えて、なかなか言えなかった。

そんな私が、ようやく勇気を出して、

「今日は早退したい」

と言った。

しかも、すでに店長にも相談して、許可をもらっていた。

それなのに「なんでですか?」と言われたことで、

「こんなに体調が悪いのに、早退することすら許されないんだ」

と感じてしまいました。

・元気そうに見える人が、本当に元気とは限らない

今振り返ると、そのときの私は、表面上は元気に見えていたことだと思います。

その日の私は、電話の少し前まで普通に接客していました。

笑顔で話していたから、電話の声も元気に聞こえたと思います。

でも、実際には、

「4連勤もできる気がしない」

と思うほど限界に近かった。

仕事中は仕事のスイッチが入る。

だから働けてしまう。

でも、それと「元気であること」は別です。

だから、体調が悪いスタッフが「休みたい」と言ってこなかったとしても、

「休みたいと言わない=働ける」ではない

と思います。

責任感が強い人ほど、何としてでも出勤しようとすることがあります。

「自分が休んだら迷惑がかかる」

と考えてしまうからです。

・「休みたい」と言えない人に、選択肢を


今回、自分が店長と体調不良のスタッフ、その両方の立場を経験して思うことがあります。

上司の立場にいる人には、体調が悪いスタッフに対して、ぜひ「選択肢」を渡してほしいです。

「今日は帰っていいよ」

「少し休んでから決めよう」

「今日は私が調整するから大丈夫」

「今はもう休んだほうがいいよ」

そんなふうに、具体的に伝えてほしい。

本人が「休みたい」と言ってこないからといって、「働ける」と判断しないでほしい。

もしかしたら、

「他の人に迷惑をかけたくない」

「人員が足りなくなる」

「自分が休んだら申し訳ない」

という気持ちで、言えないだけかもしれないからです。

そして、もし明らかに体調が悪そうなら、

「休みたい?」

ではなく、

「今日は休もう」

と背中を押してあげることも必要なのだと思います。

・「休みたい」と思ったら、言っていい


一方で、体調が悪い本人にも伝えたいことがあります。

「休みたい」と思ったら、言っていい。

実際に休めるかどうかは、職場や仕事内容によって違うと思います。

それでも、

「今、休みたいと思っています」

と伝えることは悪いことではありません。

私自身、ずっと体調を崩さなかったこともあり、休むことに慣れていませんでした。

「私が休んだら、他の人に負担がかかる」

という気持ちも強かった。

でも、今思えば、もっと早く自分の「休みたい」という気持ちを大事にしてもよかったと思います。

・限界になる前に、休もう


例えば、仕事が忙しくて睡眠不足になっている。
頭が働かずやる気もでない、仕事にも支障が出ている。

「最近ずっと寝不足だな」

「仕事をしないで、たくさん眠れたら回復するのにな」

そんなふうに思うことがあるなら、一度立ち止まってみてもいいのかもしれません。

もちろん、必要な休養や治療は人それぞれです。

ただ、私は自分の経験から、もっと早く休んでいたら、もっと早く回復していたかもしれないと思っています。

私は体調が悪くなってから約1年8ヶ月、働き続けました。

その後、仕事を離れて、一年経った今も療養しています。

最初の段階で休んでいたら、今とは違った経過になっていたかもしれません。

心の不調も、早めに対応することが大切なのだと思います。

自分自身で、

「ちょっと休んだほうがいいかもしれない」

と考えられるうちに、自分を守る行動をしてほしい。

なぜなら、本当に限界を超えてしまうと、「休んだほうがいい」と判断することすら難しくなることがあるからです。

・「休むことを後押しできる人」でありたい


私はこれから、誰かが無理をしているときに、

「もう休んだほうがいいですよ」

と、休むことを後押しできる人になりたいです。

頑張ることを応援するだけではなく、

「休んでもいい」と伝えられる人に。

それが、店長として働き、体調を崩し、そして休む側になった私が、今いちばん伝えたいことです。



最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

もしこの記事を読んで何か感じることがあったら、
スキやフォローで応援していただけると嬉しいです😌


いいなと思ったら応援しよう!