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ロシアの外交的自滅――日本を遠ざけ、中国から離れられなくなる

こんにちは。長坂総研です。

ロシアのプーチン大統領が北方領土の択捉島を訪問しました。

日本へのけん制、そしてロシアによる実効支配を改めて示す意味があるのでしょう。

しかし、地政学的に少し離れて見ると、別の風景が見えてきます。

ロシアは強さを見せているのでしょうか。

それとも、自分から外交上の選択肢を減らしているのでしょうか。



花音です。地政学とか国際政治、面白いです。

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プーチン大統領による択捉島訪問は、短期的には日本へのけん制として理解できます。

しかし長期的に見ると、日本との関係改善の余地をさらに狭め、日本をアメリカ側へ押しやることになります。

すでに西側との関係を大きく損なっているロシアが東側の日本まで遠ざければ、外交・経済面で中国の比重はさらに高まります。

その結果として利益を得るのは、むしろ中国ではないでしょうか。

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択捉島を訪問したプーチン大統領

ロシアのプーチン大統領が北方領土の択捉島を訪問しました。

プーチン氏自身にとって北方領土への訪問は初めてです。

ロシアからすれば、自国が実効支配している土地を大統領自身が訪問することで、「ここはロシアの領土である」という姿勢を改めて示したことになります。

もちろん、ロシア側にも短期的な合理性はあります。

日本への圧力になりますし、国内向けには領土を守る「強いロシア」を演出することもできます。

ただし、国家間の外交は今日や明日だけを見るものではありません。

十年、二十年という単位で考えたとき、本当にロシアにとって得なのでしょうか。

日本との交渉カードを自分から弱くする

日本とロシアの間には北方領土問題があります。

ロシアにとって、この問題を完全に解決しないまま残しておくことには、かつて一定の外交的な価値がありました。

領土交渉を進める可能性を残しながら、日本から経済協力や投資を引き出す。さらに、日本とアメリカの対露政策に少しでも温度差を作ることができれば、ロシアにとっては利益になります。

しかし、ウクライナ侵攻以降、日露関係はすでに大きく悪化しています。

そこへ大統領自身が択捉島を訪問する。

これで日本国内から、

「ロシアとの関係をもっと改善しよう」

という声は、さらに出にくくなるでしょう。

今回の訪問だけで日本の外交姿勢が変わるわけではありません。

むしろ、すでに進んでいる日露関係の冷却を、さらに固定する行動と見る方がよいでしょう。

そしてロシアとの協力余地が小さくなれば、日本が安全保障上頼る先は自然とアメリカになります。

日本をけん制するつもりが、結果として日米同盟を強化する方向へ日本を押してしまう。

ロシアにとって、これはあまり得な話には見えません。

地図を見ると、ロシアの選択肢は少ない

ここでロシアを地図から眺めてみます。

西側にはヨーロッパがあります。

しかしウクライナ侵攻以降、ロシアと欧州との政治・経済関係は大きく損なわれました。

東側には日本がありますが、その日本との関係も悪化しています。

北側は北極海です。

そうなると、ロシアが経済・外交関係を深められる方向は、どうしても南側へ偏ります。

そこで圧倒的な存在になるのが中国です。

北朝鮮との関係も深まっていますが、北朝鮮には中国ほどの経済規模も市場も技術力もありません。

インドもロシアとの関係を維持しています。

ただしインドはロシア陣営に入った国ではなく、アメリカや日本、欧州とも付き合いながら、自国の利益を優先する外交を続けています。

そう考えると、ロシアにとって中国の存在だけが突出して大きくなってきます。

ロシアはカードを減らし、中国はカードを残す

ここが中露関係を見るうえで面白いところです。

ロシアは西側との関係を失い、日本との関係改善の余地まで自分から狭めています。

ところが中国は違います。

ロシアとの関係を強化しながら、欧州とも取引し、湾岸諸国とも関係を維持し、必要ならアメリカとも交渉する。

以前取り上げたイラン情勢でも、中国はイランとの関係を持ちながら、イランのために直接戦争へ入ることはしませんでした。

中国にとって重要なのは、一つの国へ全面的に賭けることではなく、自分の選択肢を残すことなのでしょう。

ロシアはカードを減らしている。

中国はカードを残している。

この違いは大きいと思います。

中国にとって扱いやすいロシアになる

現在の中露関係がすぐに崩れるとは考えにくいでしょう。

中国にとってもロシアは重要な資源供給国であり、アメリカや欧州の力を引きつけてくれる存在でもあります。

ただし、国家間に永久の友好関係はありません。

将来、中露の国益が大きく衝突することは十分にあり得ます。

そのときロシアには、どれだけ他の選択肢が残っているでしょうか。

欧州との関係は悪い。

日本との関係も自ら悪化させた。

北朝鮮だけでは中国に対抗することはできない。

インドもロシアのために中国と対立するとは限らない。

つまり中国からすると、現在のロシアはかなり都合の良い位置へ移動しています。

関係が良いうちは、資源を供給してくれる。

欧米との対立では中国にとっての緩衝材にもなる。

そして中露間に摩擦が起きたとしても、ロシアには別の大国へ簡単に乗り換える余地が少なくなっている。

中国からすれば、何か特別なことをする必要すらありません。

ロシア自身が勝手に、中国から離れにくくなっていくからです。

強さを見せることと、強くなることは違う

択捉島へ大統領が行けば、強い姿勢を演出することはできます。

しかし外交では、相手に強く出ることと、自国を強くすることは同じではありません。

本来、ユーラシア大陸にまたがるロシアには大きな地政学的利点があります。

欧州、日本、中国、インドなど複数の勢力と関係を持ち、その間で外交的な自由を確保できるからです。

ところが現在のロシアは、その自由を自分から狭めています。

今回の択捉島訪問も、日本に対する一回の強硬姿勢として見れば、それほど大きな出来事ではないのかもしれません。

しかし地図を広げて、ロシアがこれまで失ってきた外交上の選択肢と一緒に眺めると、少し違ったものに見えてきます。

中国は何も言わず、何もしなくてもよい。

黙って見ていれば、ロシアの選択肢の方から減っていくのです。


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