失敗がいなくなった日、成功も止まった。――シッパイとセイコウの友情
これは、失敗が消えた世界で起きたこと。
昔々、あるところにシッパイとセイコウがいた。
シッパイは、みんなから嫌われていた。
まず、反射的に浮かぶのは「叱られる」という恐怖。
シッパイ=悪いことと思っているんだ。
迷惑をかけてしまうから、評価が下がってしまうから。
シッパイには良いイメージがない。
だから、シッパイは嫌われていた。
セイコウは、みんなから好かれていた。
上手くいくと気分がいい。
すべてが順調に進む気がする。
もっと豊かに、幸せに、強く。
セイコウ=良いことだった。
シッパイは、セイコウに言った。
……でもさ、失敗しないと反省しないじゃん。なぜ、失敗はそんなに嫌われるんだろう。
セイコウはシッパイに優しく言った。
……みんな傷つきたくないんだよ。生きてるだけで、けっこう大変なんだから。
ある日、シッパイはどこかへ行ってしまった。
嫌われてばかりいるのが、もうイヤになったんだ。
セイコウがひとり残された。
みんな上手くいくことばかり。
悲しむ人がいなくなった。
喜びばかり満ちあふれた。
この世の楽園が成就されたように見えた。
しかし、それは夜の来ない世界のようだった。
誰も深く身をかえりみることが無い。
能力が伸びていかない。
シッパイとは、貴重なデータだった。
それがあるから、より精度を高められ、効率良くできて、アップデートできた。
セイコウだけの世界は、ずっと同じバージョンで永遠に生きるようなものだった。
このままでは、無駄に年老いるだけだと考えたセイコウは、シッパイを探した。
……シッパイ。戻ってきて。みんな成長しなくなった。シッパイが必要なんだ。
セイコウは、世界の片隅にいるシッパイを見つけた。
シッパイは、しょげている。
……俺なんかいないほうがいいんだろう。どうせ嫌われ者だよ。
セイコウは、シッパイの頬を叩いた。
……シッパイは、なんのために生まれてきたの! みんなの成長のために、失敗が必要なんだ。たしかに、失敗したら、落ち込むし、暗くなる。でも、夜が来なければ、寝ないだろう? 夜が来るから、休もうと思って、寝てる間に脳のデフラグツールが働いて、アップデートできるんだ。シッパイは、どうしても必要なの。
セイコウは泣いていた。
シッパイは、しょうがないな、という顔をした。
……嫌われ者が戻りますよっと。
セイコウは笑顔になって言った。
……私はシッパイのこと大好きだよ。それでは足りない?
セイコウとシッパイは、肩を組んで、長い間、語り合った。
🍀🍀🍀🍀🍀
過去記事をリライトしました。
失敗を悪と思わない。
成功と友達なんだから。
失敗がいないと、成功も存在しないんです。
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