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『東京の花見』を想像したら、『雪国の春』が返ってきた話

皆さん、こんにちは!苗場酒造の北島です!

発売が迫る「ゆきのまゆ-はる-」の発売。
いわゆる「季節限定酒」というやつで、苗場酒造がなんやかんやで今まであまり手を出してこなかった領域だ。

この「なんやかんや」というのが重要で、本当の「なんやかんや」なのだ。

「うちは季節限定なんて造らないよ。スタンダード商品に命をかける!」

という理由では決してない、リアルな当社の話を是非聞いてほしい。


季節限定酒をちゃんと出せなかった理由

苗場酒造は大きく蔵・工場・事務所の三部門に分かれている。

蔵:日本酒を造る部署。
工場:日本酒を瓶詰・在庫管理・出荷業務を行う部署。
事務所:注文受注・出荷指示・輸出対応・経理・売店対応、つまりなんでも屋さん。

そしてスタッフは少数精鋭。
例えば、事務所スタッフは2名しかいない。
蔵と工場はお互いが忙しくなると「今日はこっち手伝って~」とスタッフが行き来することもよくある。

みんなフル稼働、全員野球、全力投球、ゆえの弱点。

「今日の仕事」を回すのに精一杯で、酒を造ること・注文通りに出荷することはできても、新しい企画・計画的な企画になかなか手を出しにくいのだ。

いざ出すことになっても、碌な告知も打てないままこっそり売り出して、こっそり終売しているパターンも多い。

せっかくお酒を造ったのに、それだとあまりにももったいない。

突然売店を横切ったタンク。なにをするにも酒造りは重たい作業が多いので協力作業が必須。

季節限定酒を出したかった理由

そんな状況から脱却し、今年から苗場酒造は計画的・定期的に季節商品を出すことを掲げた。

だって、「季節商品」とかないと消費者の皆様は飽きませんか??

よく考えると、大手食品メーカーは、みんなこぞって限定商品を出している。

・パッケージ違い(クリスマスのコカコーラとか)

・冬限定商品(メルティキッスとか)

・味違い(冬になると出てくるいちご味のキットカットとか)

これはマーケティングの鉄則らしいが、スタンダード商品だけだして更に何もしないと、注文は本当に先細る。

毎月注文をくれていた小売店が、2か月に1回になり、3か月に1回になり、最後は来なくなる。そんな小売店が大量に出てくる。

当社も例外ではなく、売上を見れば一目瞭然。痛感した。

消費者・小売店の皆様に新鮮な刺激を与えてこそ、スタンダード商品にも手を伸ばしてもらいやすくなるはずだ。

そして、それがちゃんと計画的に行われることも大切。
計画性がないと、適切な時に、適切な告知を、適切な量うてない。

小売店の皆様も突然「来週、新商品発売です!」と言われても棚は空いていない。

苗場酒造のお酒を色々な人に手に取ってもらうために、最大数が売れるようにするには、絶対的な計画性が必要だ。

どうやって季節限定酒って造るの?

ズブの素人が「ぺるそな」を決めてみた

計画的な季節限定酒の必要性に気づいたものの、先導する人はおらず、全員忙しそうに毎日を過ごしている。

ちょっと越権行為気味な気がしなくもなかったが、私は杜氏の武田・事務長の福嶋・工場長の富澤を集めて話をした。

「もっと全体的に計画的にやりたいなと…」
「というわけで私の方で年間計画案を作ってきまして…」
「四季に合わせた四季シリーズってやつとかどうですか~」

3人の反応は「良いと思いますよ~」というフラットなもの。
こういう攻めの話をしても守りに入らず、ちゃんと受け入れて協力してくれるのがこの3人のありがたいところだ。

売店の2階で秘密会議

「それではまず、”ゆきのまゆ-はる-”について、商品コンセプトを決めたいのですが…」

商品企画など、私もズブの初心者。マーケティングに詳しい人に、どうやら商品には「ぺるそな」なるものを決めた方がいいと教えてもらった。

「ぺるそな」は、この商品のターゲットとなる、超絶具体的な消費者の像を決めること。
名前・年齢・性別・年収・趣味・生活リズム・価値観・お酒の飲み方などなど…
そのターゲットに気に入ってもらえそうなお酒は何か、消費者の像から逆算して商品設計を行っていく、らしい。

やったこともなかったので本当に色々考えたのだが、要約すると、私は「都内の40代の女性が上野公園のお花見に持って行ってくれるような、そんなお酒をイメージして造るのはどうでしょうか!」と提案した。

プライバシーに配慮するとほぼ桜と青空しか映らない上野公園のお花見。

春といえば、桜。
どんな町にも花見の名所は存在するが、消費者が最も多い「東京都」に重きを置いたら、桜と言えばやっぱり上野公園。なんとも安直なペルソナ。

しかし、相手は津南町周辺で生まれ育った3名。
「上野公園‥?」と突然歯切れが悪くなった。

そして、富澤が一言。
「パンダが、いなくなるなあ」

時が止まった。
確かにパンダはいなくなる。(更新日時点:もういなくなった)

福嶋と武田が続けて

「そぅやんねぇ…」
「パンダなんか別にいいじゃないですか、いなくなったって」

ここから武田の辛口コメントが続いた。パンダ嫌いなの?

全員がさほど興味があるわけでもないパンダ談義が微熱を帯びたまま一向に終わらないので、思わず大きな声で言った。

「みなさん!パンダは!お花見の時期にはもういないんで!いったん置いておきましょう!」

「そぅやんね~」と和やかな皆様。
まぁ、パンダによって上野公園への「?」が解消されたなら、パンダ談義した甲斐があったというもの。
私は、今日できるだけ話に白黒つけたいのだ、パンダだけに。

武田が言った。
「上野公園の花見って、どんな感じなんですか?」

私は「上野公園 花見」で画像検索をして、全員に説明した。
なお、津南の夏祭りでも見ないような人々の群れを見た3名の感想は、ここには書かないこととする。

「ぺるそな」とは違う想いを、あえて乗せていく

話を聞いたところ、3人は最近花見らしい花見をしていないらしい。
でも、桜に対する話がチラホラと出てきた。

武田が言った。
「こんな人混みにいかなくても、俺んちの窓から見える桜の木が一番きれいだと思ってます。それは咲いたら嬉しいし、毎日眺めてますよ」

福嶋は教えてくれた。
「最近はめったに花見なんて行かないけど、子供のころに花見に行ったのはすごく覚えているんだよね。なんで忘れられないんだろうね」

なんだかハッとさせられた。

津南町の風物詩、雪の中に咲く桜

私も、実家にある桜の木がとても好きだ。
全国テレビの花見ニュースとは数週間ずれた、雪国の時間に生きる桜。
毎日育つ蕾を家族全員で楽しみにしていた。
桜が咲くと、祖母は決まって「私がお嫁に来た時に記念に植えてもらったんだ」と嬉しそうに話す。
花が散り始め、緑が混じり、モザイク模様になる。
「ああ、これから夏が来るんだ」と思う。


ペルソナは商品を造る上で多分とても大切。それは揺らがない。
大酒飲みが多い津南町の人を対象にして花見のお酒を造ろうとすると、恐らく飲む人をとても選ぶようなスーパー辛口が誕生してしまい、万人受けは多分しない。(これはこれで飲みたいが)

ただ、上野公園でも、武田の家の窓から見える桜でも、福嶋の想い出でも。都会でも雪国でも共通する何かしらの想いが「桜」にはある。

温かくなった春への喜び
桜の美しさ、儚さを愛でる気持ち
大切な家族や友人と過ごす時間の尊さ

特に、厳しい冬を耐え抜く雪国の人にとって、春は特別なものだ。あくまでもその「桜への想い」をベースに、当社でしか醸せないお酒を造れば、全国どこでも共通して楽しんで頂けるお酒になるのではないかと思った。

ラベル・瓶・味わいの方向性はペルソナを意識してデザインを行うが、上野公園と無理には言わず、「津南町・苗場酒造ならでは」をあくまでも大切にして醸してほしいと、武田には最終的にお願いをした。

そして、「ゆきのまゆ-はる-」のコンセプト文を作った。

雪国で暮らす私たちにとって、春は特別な季節です。
長く厳しい冬が終わり、青空を見上げる日が増える頃。
雪がゆっくりと解けはじめ、ほっと息をついたその先に、桜が咲き始めます。

雪の残る山から吹く、少し冷たい風。
頬をあたためる春の陽ざし。
淡くやさしい桜色。

あるスタッフは言いました。
「最近はめっきりお花見なんてしないけど、小さい頃に家族でお花見をしたのはとてもよく覚えてる。どうして忘れられないんだろうね」

家族や友人と集まって桜を楽しむ、一生の思い出になるような時間をイメージして、口当たりはさらりと、やさしい甘みが静かに広がる味わいに仕上げました。

これが津南町の「春」

「ぺるそな」を具体的に消費者に説明するのは、マーケティング上ご法度なのでは?という気がするが、このnoteのコンセプトは「苗場酒造の頭の中を見せる」なため、この記事を見てくださった心優しい皆様には、思い切ってお伝えする。

ただ、あくまでもこれは商品を構成するために定めた指標のため、20歳以上であれば男女問わず誰にだって飲んで頂きたいというのは本当に強く思っているので、それだけは誤解なきよう、よろしくお願いいたします!

また、こちらはマーケティングにはズブの素人、色々多めに見てください!

次回は、具体的にこの商品のデザインに込めた想いや、実際の味わいについて書いていきたいと思います!

ここまで読んでくださり、ありがとうございました!


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