今日のジャズ: 2月13日、1963年(祝60周年)@ニュージャージー
Feb. 13, 1963 “God Bless The Child”
By Stanley Turrentine, Shirley Scott, Major Holley, Al Harewood & Ray Barretto
At Van Gelder Studio, Englewood, NJ for Blue Note (Never Let Me Go)
ビリーホリデー共作で屈指のヒット曲をテナーのスタンリータレンタインが当時の相棒のオルガン奏者、シャーリースコットとソウルフルに仕立てた演奏。
歌詞は、お金にまつわる身内のやりとりという珍しい内容で、ホリデーがお金に困って母親から借金しようと持ち掛けると断られた挙句に「神は自ら稼ぐ子供を祝福する」と言われた事にショックを受けて、この曲が完成したという。ホリデーの持ち歌で、短い活躍期間にも関わらず、三度に渡って録音されている。
粘り気と独特のこぶしのある男前な艶のある音色のスタンリーのテナーと一体化した相性の良いシャーリーのしっとりとしたオルガンには、組み合わせの妙を超えた寄り添う夫婦愛が感じられる。
オルガンの音の出先となるホーンをグルグルと横向きの扇風機のように回転させる事で、ドップラー効果を生み出し、音を空気の波に巻いて揺らがせるレスリースピーカーが渋さを演出している。2月8日に紹介したジミースミスよりオルガンのスタイルが更に泥臭く感じるのは、このスピーカーの更なる活用によるところが大きい。
アメリカ人のドナルドレスリーが発明したスピーカー、実物は一人暮らし用の冷蔵庫サイズで、それなりに大きくて迫力がある。ハモンドオルガンの製造会社に勤務していたレスリーは、この製品を社内で提案するも却下されたため、独立して商品を販売したが、発明者のハモンドは敵視してその存在を全く認めなかったそう。一方、ミュージシャンは、このスピーカーをハモンドオルガンとワンセットで利用するようになり、「レスリースピーカーの無いハモンドオルガンは、帆の無い船で航海するようなもの」(最下部のハモンドオルガンの歴史動画からの引用)と表現されるほどに定番化。


ハモンドもレスリーもこの世を去った後、今では鍵盤ハーモニカ等を生産する日本の鈴木楽器が両方の権利を取得する事で仲違いが解決してアメリカ本国でもセット販売されている。その鈴木楽器によるハモンドオルガンとレスリースピーカーの詳細解説は、こちらをご覧ください。
燻銀ドラマーのヘアウッドが、しっとり感に同調した好サポート。そしてベースは1月8日の同年作品にも登場した両者を繋げるメジャーホーリー。先の曲で活躍したレイバレットもアルバムには参加しているが、この曲だけ控えに回っているのはバラードだからか。黒人のソウルが凝縮されていて、冬の深夜にしっぽり聴きたくなる一曲。
ハモンドオルガンについては、こちらの記事が秀逸。当然の如くレスリースピーカーも登場してます。
尚、レスリースピーカーの解説(英語)はこちら。
ハモンドオルガンの歴史にまつわるドキュメンタリー(英語)。レスリースピーカーとの関係も取り上げられ、セットで利用した第一人者としてジミースミスが登場している。
ビリーホリデイによる原曲は、こちらからどうぞ。本演奏は、この雰囲気をかなり忠実に踏襲したバージョンという事が分かる。そしてその雰囲気作りにハモンドオルガンとレスリースピーカーの大いなる貢献度合いが認識出来る。
メジャーホーリーが登場する、ケニーバレルの1月8日作品はこちらからどうぞ。
最後に、ハモンドオルガンを更に味わいたい方は、こちらのR&Bインストの名曲をどうぞ。このギターとベース奏者は、その後にブルースブラザーズのバンドに加わっています。
