今日のジャズ: 4月23日、1975年@ニュージャージーRVG
Apr. 23, 1975 “You’d Be So Nice to Come Home To” by Jim Hall with Paul Desmond, Chet Baker, Roland Hanna, Ron Carter & Steve Gadd at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs for CTI (Concierto)
それまでの生音重視を経て、70年代に突入すると、ジャズの主流は、普及したシンセサイザーを始めとする電子楽器を取り入れ、大衆をターゲットとしたフュージョンスタイルに軸足が移っていきます。
ポピュラーソングの大家、コールポーターによる本ジャズスタンダード曲すら、その影響を受けてイージーリスニング風の演奏となっています。
白人ジャズギターで現在活躍する主要ギタリストの父親的存在のジムホールが甘いトーンながら和音を意識した、その奏法の特徴となる、彷徨って着地しそうでしないウニウニ呟くようなトリッキーで捉え所の無いメロディーによるソロを先ずは奏でていきます。
二番手のソロはテイクファイブの演奏で有名なポールデスモンドによるクールな尺八スタイルのアルトサックスで、その次に歌も上手なトラペットのチェットベイカーが絶妙に絡みながら詩的なアプローチで加わります。
デスモンドの後ろでは、ホールがソロに続いてバッキングを務めていますが、ベイカーのソロになると手を止めてピアノにバッキングの役割を引き渡して、そのままピアノソロに突入という構成です。ピアノとギターの伴奏楽器としての共存は音帯が被るが多いこともあり、難易度が高いことを配慮してのことと推測しますが、デスモンドが盟友デイブブルーベックと交わした独占的な契りも背景にあるかもしれません。そのピアノのローランドハナによるさりげないバッキングと華麗なソロも感じが良いものです。
より大衆を意識した作品作りをする1967年創設の新興レーベル、CTIが手掛けた作品ということで、スタンダード曲の採用や楽器、演奏者と演奏の中身は従来のジャズを踏襲するものの、甘さ加減が色濃く出ていて音の重心が中音に推移しています。ロンカーターのベースは電気増幅の色が濃くなり、90年代以降にエリッククラプトンのバックバンドを度々勤めたスティーブガッドのドラムですら全体的に軽めに捉えられており、一番の低音を担うバスドラムが、やや浮いた感じの録音となっています。とはいえ、そのドラム演奏は、かなりアグレッシブで、ホールのギターソロ中のウニウニフレーズに瞬時に反応して畳み掛けるような激しい刻みが捉えられています。また、ベースのソロ演奏でのホールとの息のあった絡みも楽しみの一つです。
興味深いのは、録音エンジニアと場所が、先に何度も登場しているブルーノートレーベルの定番、ルディバンゲルダーとそのスタジオということです。ブルーノートの、ラジオ放送を意識したような耳にしっかりと届く骨太「ゴリゴリ」系の音質だけではなく、名盤を多数手掛けた天才エンジニアは時代に合わせて如何なる鑑賞スタイルにも依頼主に応じた形で柔軟に録音していたことが分かります。
手厳しいアルトサックスの大御所、リーコニッツが真のインプロバイザーと認めるデスモンドとベイカーの二人の共演も聴きどころです。コニッツとの共通項は、お決まりや手癖のフレーズが無く、メロディー重視で音を紡ぎ出していくスタイル、言うなればメロディメーカーです。この二人が絡む演奏を聴くと確かにお互いの演奏に耳を傾けつつ音を紡いでいくスタイルが共通していて、それは元祖クールスタイルのテナーサックスの大家、レスターヤングの影響を感じさせます。
ホールがどんな作品であろうとも生涯を通じて他の演奏者を傾聴して的確なメロディーと音を自らの個性と共に織り込んでいくスタイルは不変という事が分かります。ホールには、その応用力の高い、とはいえ容易では無いスタイルを、パットメセニーやビルフリゼールといった現在最前線で活躍する次世代ギタリストに伝承していった功績があります。
この年にクイーンの名曲『ボヘミアンラプソディ』を含む『オペラ座の夜』や、ブルーススプリングスティーンの『明日なき暴走』が発表されています。ロックの発展と普及と共に、ジャズはますます形成不利な状況となって行き、本作のようなスタイルに変貌を遂げて行きます。
さて、本ドラムのガッドとクラプトンの演奏が気になった方は豪華メンバーによる、こちらのライブ演奏をどうぞ。
アルトサックスのデスモンドが気になる方は、こちらをどうぞ。
最後に、ベイカーが気になる方は、こちらのギタートリオを従えた演奏をどうぞ。
素敵な一日をお過ごしください。
