「続くこと」が街の魅力になる。フィンランドと旭川の共通点から探る、これからの住まいと文化
2026年5月23日、旭川デザインセンターにて、旭川建築士会様主催の講演会に登壇する機会をいただきました。大好きな旭川で、こうした機会を与えていただけたことは、私にとって本当にありがたいことです。
テーマは「フィンランドで見つけた暮らしと街の新しいカタチ〜アルヴァ・アアルトの設計思想〜」。約半年間のフィンランド滞在を通して現地で得た「一次情報」と「生きた文脈」を、180枚にも及ぶスライドとともに、建築・家具・まちづくりの第一線で活躍される旭川のプロフェッショナルの皆様へ向けてお話しさせていただきました。
本講演で私が訴えた本質的なテーマは、
「『人のために』=その人にとって最良の状態が続くこと」です。
この哲学を軸に、遠く離れたフィンランドと北海道(特に旭川近郊エリア)が持つ強い「接続性」と、これからの地域づくり・住まいづくりのあるべき姿について、3つの視点からレポートとしてまとめます。
1月にCONNECTさんで開催させていただいた報告会を経て、改めて『プロの方々』へお話をする機会を得られたことは、私にとってあまりある光栄無ことでした。何を伝えられるのか?何が興味深く感じてもらえるのか?ということからスタートし、最終的には「私が大好きな『北海道とフィンランド』が少しでも繋がればな…!」という思いだけでなんとか1時間の講演に収めた、というのが正直なところです。
デジタル化やAIの進歩で情報が非常に多くなり、アクセスしようと思えばすぐに情報には辿り着くことができる昨今。本当のことをいうと『プロの皆さんだからこそ生で見て欲しい』というのが一番言いたいことだったかもしれません。
一次情報は、人生を豊かにする唯一無二で最上の養分だと私は思います。
自分が経験したことだからこその説得力や、熱量を持って相手に届けることができる。漠然と情報が流れ込み続ける日常のなかで、『ほんとう』に触れる機会を少しでも増やすこと、そのためにできることをやっていきたい。そう思って今後も取り組みを続けていきたいと思います!
1.北海道とフィンランドの強い接続性(北国という共通項)
フィンランドと北海道は、長く厳しい冬、豊かな森林、人口規模や密度など、非常に多くの共通点を持っています。フィンランドが世界幸福度1位である背景には、「ただおしゃれだから」ではなく、「過酷な環境だからこそ、室内環境やデザインに投資し、心豊かに生き残るための超・合理的な生存戦略があった」という事実があります。
アルヴァ・アアルトに代表されるフィンランドの建築や家具は、単なる「装飾」ではありません。限られた光をどう室内に取り込むか、冬の寒さのなかでいかに人間が快適に過ごせるかという「人間中心主義」と「自然との調和(パッシブデザイン)」の結晶です。この「北国の設計哲学」は、そのまま北海道の気候風土で家づくりや空間づくりを行う私たちにとっても、最大のヒントであり、深くリンクする共通の指針であることをお伝えしました。


2.地元の資産が融合し、地域内で循環する文化へ
アアルトは、当時のモダニズム建築で主流だった冷たいスチール素材を避け、フィンランドに豊富に自生する「白樺(バーチ)」を用いて温かみのある家具(Artek)を生み出し、市民の日常に「美しさ」を植え付けていた。
一見美しく見えるこのサイクルですが、旭川を眺めると、どうでしょうか。
旭川には、豊かな森林資源、世界に誇る「旭川家具」の職人技術、そして高い技術力を持つ工務店や設計事務所が揃っています。
これら「建てる人」「作る人」「設計する人」という地元の優れた資産が、互いに分断されることなく連携し、融合していくことが不可欠だと、私は考えます。
例えば、地元の建築士が地元の家具を空間設計の初期段階から組み込み、住まい手に提案する。そうした「内(建築)と内(家具)の繋がり」が当たり前の文化として定着すれば、経済や価値は地域内で美しく循環し、旭川発の新しい豊かなライフスタイルが確立されていくはずです。
みなさんが当たり前のようにしている『お客様のために』という行動は、実は当たり前ではない。理想に近づけられるようになんとかしてあげようという寄り添い、都度都度の対応力、そして美しく実現する力。これらの力が重なり合うと、他では実現できないほどの大きな魅力を放つ地域になるのではないでしょうか。

3.市民が誇りに思える「日常」こそが、街の最大の魅力になる
講演内で特に強調したのは、「デザインの良さは一部の特別な施設や富裕層のものではなく、一般市民の『日常のインフラ』として溶け込んでいる」という点です。フィンランドの誰もが利用できる中央図書館「Oodi」やサウナ文化、そしてごく普通の友人宅のリビングに見られるように、公共空間も住宅も「そこに住む人々が最も良い状態で過ごし続けられること」を第一に設計されています。
この事実は、これからのまちづくりや観光のあり方にも大きな示唆を与えてくれます。外部の観光客を呼ぶためだけに作られた表層的な施設ではなく、まずは「市民自身が心地よく、誇りに思える街」をつくること。地元の木材で作られた建物で、地元の家具に座り、豊かな時間を過ごす市民の姿や、その洗練された日常の風景そのものが、結果として外から訪れる人々を強烈に惹きつける「本物の魅力」へと昇華していくのです。


めちゃくちゃ美しいまち
まとめと今後の展望
「設計しているのは『建物』ではなく『時間』である」。
アアルトの言葉通り、私たちがつくるべきは箱としての建築ではなく、そこで営まれる豊かな日常。そしてそれが「なるべく長く続くこと」に焦点が当たるべきだと考えています。
点ではなく線へ。
線から面へ。
面を張り合わせて円へ、それが循環できる構造になっていくことが必要なのは、あらゆる地域でも同じことだと考えます。
だからこそ、私たちはこれからもメディアという立場から一次情報を発信し続け、旭川の皆様とともに「北海道らしい豊かな日常」を実装・循環させていくための架け橋でありたい。改めてそう感じるきっかけになりました。
ご多忙の中ご参加いただいた皆様、そして素晴らしい場をご提供いただいた旭川建築士会・旭川デザインセンターの関係者の皆様に、改めて心より感謝申し上げます。

次回の開催が決定しましたらこちらでもご案内させていただきます!
ぜひご参加いただけますと嬉しいです!

