見出し画像

2025-26シーズン契約選手インタビュー #7 熊谷航

長崎ヴェルカの2025-26シーズン契約選手をインタビューするシリーズ、題して、2025-26シーズン契約選手インタビュー。第7回は、今オフに秋田ノーザンハピネッツからの移籍でヴェルカに加入した、熊谷航選手に話を聞きました。

熊谷航(くまがいこう):1996年生まれ、大分県出身。大東文化大学を卒業後、 シーホース三河(2018-21、2018-19シーズンは特別指定選手)、信州ブレイブウォリアーズ(2021-23)、秋田ノーザンハピネッツ(2023-25)を経て、長崎ヴェルカ(2025-)に加入。2021年度男子日本代表候補、2023年度男子日本代表強化合宿メンバー、第19回アジア競技大会(2022年)男子日本代表などに選出。ポジションはPG(ポイントガード)

長崎の街は「地元の別府と似ている」

ーー熊谷選手は今オフ、秋田ノーザンハピネッツからの移籍でヴェルカに加入されました。6月中旬頃に長崎に来られて、1ヶ月半くらい経ちましたが、長崎での生活はいかがですか?

熊谷:長崎の街はすごく好きですね。自然豊かで、港や海も近いですし、長崎駅も思っていた以上に栄えていて、すごくバランスの取れている街だな、って思いました。去年の11月、アウェイの試合として来た時は、アリーナとホテルの行き来しかしていなかったので、街並みとかは見れなかったんですけど。

ーーこちらに来てからは結構、街を歩かれてます?

熊谷:来てすぐの頃は歩きましたね。思案橋とか、中華街でご飯食べたり。

ーー熊谷選手は、ご出身が大分県ですよね。同じ九州ですが、長崎にはもともと馴染みがあったのでしょうか?

熊谷:小学校の修学旅行が長崎だったんですよ。グラバー園に行ったり、平和学習があったり。僕の実家は別府なんですけど、別府も坂があって、街並みも長崎に結構似ていて。自分の家も、海にも山にもすぐに行ける場所にあったんですけど。

ーー森川(正明)選手がこのオフ、家族旅行で別府に行ったと話していましたね。僕の両親も先日、東京から長崎に遊びに来たんですけど、長崎に来る前に二人で別府に行って、お土産にプリン買ってきてくれました。

熊谷:それはたぶん、山の方ですね! 地獄蒸しプリンかな。

ーーそれです! 長崎は熊谷選手にとって、割と親近感を覚える場所と言って良い?

熊谷:でも、小学生の時に修学旅行で一度来ただけですね。あとは中学生の時、練習試合で何回か来たと思うんですけど。高校は群馬の前橋に行ったので、今回、15年ぶりくらいに九州に帰ってきました。

ーー15年ぶり! じゃあ、お帰りなさい、と言っておきますね(笑)

熊谷:ありがとうございます(笑)

「これまでとは違う」ヴェルカでのトレーニング

ーーこのオフシーズン、長崎に来てからのワークアウトやトレーニングで、何か重点的に取り組まれていることはありますか?

熊谷:まずはトレーニングですね。最初、中山さん(中山佑介ディレクター・オブ・スポーツパフォーマンス)に体の良し悪しを見ていただいて、苦手な部分を伸ばしていこう、っていう感じでトレーニングをやっています。全体的に(体が)ちょっと大きくなりました。

ーーこの1ヶ月半でですか?

熊谷:そうですね。今までで一番、体重も重くなってるので。

ーー結構ハードなウェイトトレーニングをやっているんでしょうか?

熊谷:やってますね。重りをめちゃくちゃ使ってるわけじゃないんですけど、その代わり、今までは週に2回とか3回くらいウェイトをやっていたところを、今はほぼ毎日やっていて。重りをガンガン使うわけじゃないけど、その分毎日できる、っていうのがここのやり方なので。意図的に体重を増やそうとは思ってなくて、今まで通りの生活をしていたら増えていた、っていうパターンなので、結構良い感じで来ているのかな、と思っています。

ーー増量しようと思っていたわけじゃなくて。

熊谷:そうですね。もうあんまり増やさなくてもいいかな、くらいの感じでした。

ーー改めて見ると確かに、初めてお会いした時よりも体がひと周り大きくなった感じがします。どれくらい増えたんですか?

熊谷:2.5キロから3キロくらい増えましたね。

ーーそんなに変わるんですね、1ヶ月半で。

熊谷:自分でもびっくりしました。僕の身長(173cm)で体重を増やすのって結構、大変で。たとえば90キロの人が2キロ増やすのと、70キロの人が2キロ増やすのって全然違うじゃないですか。ポジション的には、あまり重くなり過ぎても、っていう部分もあると思うんですけど。シーズンが始まれば流石に、少し落ちると思います。

ーーシーズン中は体重落ちます?

熊谷:ちょっと落ちますね。たくさん食べるようにして、何とか戻すようにしたりとか。試合に出て、たとえばウェイトをちょっと休んだりすると、どうしても少し減ることはあります。

ーーご自身にとってのベストバランスを見つけるのも、難しそうですね。

熊谷:難しいですね。正解があるわけではないので。

ーー体の大きさから来るフィジカルの強さと、スピードとか俊敏性の両方を高いレベルで持つのって結構、難しいのかなと思うんですけど、ご自身の体感として今の状態はいかがですか?

熊谷:今はそこまで悪くない感覚です。「重い」という感じはないですね。この状態でたとえば30分試合に出た時にどうなのかな、とは思いますけど。

ーーさっきおっしゃっていましたけど、うちのトレーニングって負荷を分散させるというか、一回のトレーニングで極端に大きな負荷はかけず、でも継続的に毎日やる、という方針だそうですね。これは海生さん(岩元海生トレーナー)から聞いた話ですけど。

熊谷:そうですね、そういう感じです。やり方は、これまでのチームとは違いますね。今までは、たとえば土日に試合だったら、火曜と木曜だけウェイトやるっていう感じで。負荷を結構かけて、筋肉痛がしっかりくる、っていう感じだったんですけど。これまで3チームでプレーしましたが、3チームともそういう感じで、今みたいに分散しながら毎日1時間ずつやる、っていうのは初めての試みですね。

ーー今のところは体作りの部分で結構、変化を感じられているんですね。

熊谷:そうですね、一番はそこですかね。

ーーコートでの練習に関してはどうですか? まだそんなにハードな練習はしていないと思いますけど。

熊谷:今はシューティング系がメインで、昨日くらいから少し対人練習が多くなってきた感じです。本格的な練習はまだこれからですけど、質の高い練習ができていると思います。選手をグループ分けしてやっていますし、選手よりスタッフの方が人数多いくらいなので。そういう点では、高いクオリティでできているんじゃないかなという風に思いますね。

ーースタッフの一人が、熊谷さんのプレーについて「独特のリズムを持っている」と言ってましたよ。シュートがめっちゃ綺麗、とも。

熊谷:え、本当ですか? それは嬉しいですね。初めて言われるかも(笑)。ありがとうございます。

ヴェルカ移籍の決断は、直感よりも理詰めで

ーー今オフ、ヴェルカへの移籍を決めた理由を伺えますでしょうか?

熊谷:ヴェルカから最初にお話をいただいて、拓摩さん(伊藤拓摩社長兼GM)とモーディ(モーディ・マオールHC)と話をした時に、自分の良い部分をどう(チームに)落とし込むか、っていう話を具体的にしていただきました。自分のプレー映像を見せていただいて「こういう良いところを出して欲しい」っていう話と、逆にターンオーバーしたプレーとかについて「こうしたら良かったんじゃないか」っていう話もしていただきました。昨シーズンの前半、僕が対戦相手として試合をした時のヴェルカはたぶん、チームとしてあまり上手くいっていない時だったんですね。ただ、それ以降のヴェルカは試合の映像とかを見ても、全体的に変わっているな、っていう印象がありました。モーディが継続するという話も聞いていましたが、彼も2年目はもっとアジャストできるというか、日本人の性格だったりBリーグのシステムとか笛(審判の判定)にも慣れてきて、そういうところもプラスに働くんじゃないかな、って思いました。(ヴェルカの)環境もすごい良くなってきている、っていうのも知っていましたし、九州っていうのも魅力のひとつでした。そんな風に、色んなことを思って決めましたね。

ーー秋田に残留する、という選択肢もきっとありましたよね?

熊谷:ありましたね。

ーー残留か、もしかしたら他のクラブっていう選択肢もあったかもわからないですけど、その中でこう、ヴェルカに来るという決断をされた一番の決め手って何だったんでしょうか?

熊谷:やっぱり、(拓摩さんとモーディと)実際に話してみて、じゃないですかね。もちろん条件面とかもありますけど。「これで決断した」という何かがあったわけじゃないんですけど、色んな要素を考えた時に、長崎が良いんじゃないかな、っていう風に感じました。何か決め手となる一言があったとかでもないですし……難しいですね。

ーーたとえば川真田(紘也)選手は「長崎が一番面白そうという直感」でヴェルカに来たと話していましたが、熊谷選手の場合は直感やフィーリングというよりも、色んな観点からロジカルに考えて決断された感じですか?

熊谷:そうですね。僕は結構考えるタイプというか、フィーリングっていうよりは「こっちにはこういう良さがあって、こっちにはこういう良さがあるよね」みたいな感じで考えますね。

ーー結構、理詰めで。

熊谷:だから結構、時間がかかるんですよね、決めるのに。たとえば秋田に残留したら、これまで2年間やってきて周りも自分のプレースタイルをわかっているし、チーム内の立場的にも副キャプテンをやっていたしとか、ガードとしてどうこうとか、色々な要素を掛け合わせた時にどうかな、っていう風に考えていました。

ーーその考え方って何となく、ポイントガードっぽいですね。

熊谷:確かに。そうかもしれないですね。

ーー試合中はたぶん、ゆっくり考えている時間なんてなくて、瞬時の判断や直感で動かなきゃいけない場面が多いと思うんですけど、たとえばハーフタイム中とか試合後に「あの時の判断はあれで良かったのかな?」とか「もしこういうプレーをしていたらどうだったかな?」とか、論理的に考える機会も結構多いのかなと想像します。もちろんどの選手もやっていると思うんですけど、ポイントガードは特に、直感と論理の往復みたいな作業が求められるポジションなのかなと。直感が正しいかどうかをロジックで検証するというか、そういう作業を普段からやっていらっしゃるのかな、って。

熊谷:言われてみればそうですね。確かに。ていうか川真田、フィーリングなんだ(笑)

ーー彼は「直感」という言葉を使っていましたね。

熊谷:彼らしいですね。豪快な。

ポイントガードの面白さは「頭を使うこと、考えること」

ーー今オフ、ヴェルカが重視していた補強ポイントのひとつに「ポイントガード」があって、熊谷選手と森田(雄次)選手を獲得しました。熊谷選手がシーホース三河でプレーされていた頃、2020年のインタビュー記事で、熊谷選手は「ポイントガードは1番おもしろいポジションだと思っています」「こんなにやりがいのあるポジションはないと思っています」と発言されていました。今も同じ考えなら、という前提ですが、熊谷選手が考える「ポイントガードの面白さ」とは何かをお話いただけますでしょうか?

熊谷:まずはやっぱり、そのチームのプレーを一番理解しないといけないポジション、っていうのがあります。流れの中でどこをアタックするとか、相手のウィークディフェンダーを狙うとか…… 特にNBAだと、ディフェンスが苦手な選手とかを結構狙うんですけど、日本のバスケでもそういうのが徐々に増えてきて、例えば身長の低い選手とかフィジカルの弱い選手、あるいはオフェンスでずっとボールを持つ選手を40分間ディフェンスさせることで消耗させるとか。そういう戦略的な考え方が、ヘッドコーチの考えと少しずつ合ってきて、それをチームに浸透させてチームが勝った時っていうのは…… たとえ自分が20点とか30点とか取ったわけではなくても、そうした発信をすることによってチームが勝った時は、スタッツ以上に評価されるべきポジションじゃないかな、っていう風には思っています。まあ今は結構、大柄ポイントガードとかもいるんですけど、どうしてもサイズの部分っていうのは変えようがないので。頭を使うこと、考えることがやっぱり面白いなと思います。フォーメーションの指示などもある程度、ポイントガードが出すので。それで上手く決まった時、狙い通りにいった時は、他の4人の選手も動かせている感じがするので、そこは面白いなと思います。

ーー自分が頭の中で思い描いたことを形にして、チーム全体を動かしてる感?

熊谷:そうですね。もちろんヘッドコーチの意見が最優先なんですけど、そこで自分が思ったことも言って良いポジションというか。もちろんみんな言って良いんですけど、特にポイントガードは言えるんじゃないかなという風には思っていて。そういったところが面白いかなと思いますね。

ーー先日、NBAのシカゴ・ブルズとツーウェイ契約を結んだ河村勇輝選手のように、体が小さくてもトップレベルで戦える、少なくともそのレベルを狙える、という魅力がポイントガードにはありますよね。

熊谷:そうですね。彼が証明していますけど、やっぱり小さくてもスピードだったりとか、パスだったり、もちろんスコアリングの部分もあるんですけど、戦える可能性がある。どうしても日本人はなかなかね、大きい人がそこまでいないじゃないですか。まあ今、デカくなってはきているんですけど、やっぱり小さい選手もたくさんいる中で、自分のような小さい選手がプレーすることで想像しやすくなるかな、っていう。子供たちが「僕ちっちゃいから」って諦めなくていいんじゃないかな、って思いますし、そういうプレーヤーになりたいとも思います。

ーー先ほど、「スタッツ以上に評価されるべきポジションじゃないか」という話がありましたが、先述した2020年のインタビューで、こんなお話もされていました。

「たとえば試合で僕がすごくいいパスを出して、それがシュートにつながったとします。スタッツの上ではシュートを決めた選手に2点付きますけど、僕の中では1点はパスを出した自分の点だなと思うんです。だから1点は自分に付ける。心の中で勝手に付ける(笑)。高校ぐらいからそんなふうに考えるようになって、その1点が自分のモチベーションにもなりました」

ーーこの発言って、覚えていらっしゃいます?

熊谷:はい。

ーー素人っぽい質問で恐縮ですが、良いパスを出すコツって何でしょうか?

熊谷:良いかどうかはわかりませんが…… 選手によってシュートフォームに違いがあって、例えば下から(ボールを)こう持ってくる選手だったら、下にパスが来た方が早く打てるとか、頭の上からセットする人だったら胸にパスするとか、シューターに合わせて考えていたりはします。同じノーマークでパスを出すにしても、打ちやすさが変わってくるので。特に秋田や三河でプレーしていた時はすごいシューターの人たちがいたので、最初に「どういうパスが打ちやすいですか」って聞いて。「右手に来るのと左手に来るのとどっちが好きですか」とか。それからディシジョン、パスする前の判断で結構、その後のパスって精度が変わってくると思います。あと、なるべく早いパスを出すとか、そういったことを心掛けるようにしてますね。

通算アシスト数「1211」、Bリーグ歴代何位?

ーー唐突ですが、ご自身がBリーグでこれまで記録した通算アシスト数、ご存じですか?

熊谷:ええ? 1000は超えてます?

ーー1000は超えてますね。

熊谷:んー……いや、わからないですね(笑)

ーーBリーグ公式サイトのデータが正しければ、1211本です。

熊谷:おー…… 意外にいってますね。

ーー意外にいってる、って印象ですか?

熊谷:そうですね。ルーキーの時は30試合くらいしか出ていなくて、その後もコロナで中断したシーズンもあったので……って考えると、意外といってるんじゃないですかね。

ーーちなみに、この1211本という数字は、Bリーグ歴代何位だと思いますか?

熊谷:歴代ですか? Bリーグがスタートしてからですよね。50位くらいじゃないですか?

ーー29位です!

熊谷:ええ?!意外と……

ーーBリーグ歴代29位。トップ30に入ってます。

熊谷:僕より年齢が下の選手は何人くらいいるんですか?

ーーそこまではちょっと調べてないんですけど(笑)、歴代29位って、まあリーグ自体の歴史がそこまで長くないとはいえ、結構すごい数字だなと思いました。と、ファンの期待値が高まる数字を出したところで(笑)、契約発表時のコメントに「いい雰囲気をチームに持ち込むべく日々大事にしていき、素晴らしいシーズンにしていきたいと思います」とありました。いい雰囲気をチームに持ち込むために意識されていること、心掛けていることはありますか?

熊谷:なるべくポジティブなことを言うようにしてます。ネガティブなことを言うと、それを聞いてる人もネガティブになると思うので。特に今シーズンからはそういう風にしたいと強く思っています。年齢も真ん中くらいになってきて、上と下の人たちを繋ぐような役割もあると思うので、周囲の意見を汲み取りながらやっていきたいですし、何よりコミュニケーションをしっかり取っていきたいなとは思いますね。

ーー長いシーズン、誰しもネガティブな思考に陥ってしまう場面もあると思うんですけど、そういう時にも口には出さないようにする?

熊谷:そうですね。もちろん言う時は言った方が良いと思いますし、常にポジティブなことばっかり言うのが正しいわけでもないとは思うんですけど。たとえばちょっとネガティブな気持ちになったら、心機一転で飲みに行く、とかも全然アリだなと僕は思っていて。時にはお酒の力を借りて、じゃないですけど、そういうのもアリかなと思います。

ーーお酒は強いんですか?

熊谷:いやー…… まあ、飲めなくはないですね。

ーーそれはつまり、結構強いんですね?(笑)

熊谷:まあ、飲める方かもしれません(笑)

ーー先日、森田選手もインタビューしましたが、彼もチームメイトとご飯に行ったり、プライベートで仲良くなることを大事にしていると話していました。彼が昨シーズンまで所属していた鹿児島レブナイズでは、ポイントガードの選手が森田選手を含めて3人いたそうですが、めちゃ仲良しだったそうです。同じポジションを争うライバルで、バチバチになってもおかしくないところだけど、オフコートでその人を好きになろうとしていたら、応援し合える関係になったと。

熊谷:僕もそれはすごく思いますね。練習中はもちろんライバルとして、バチバチやっていいと思いますけど、試合ではひとつのチームとして相手を倒しに行くので、そこはやっぱりチームとしてやる必要があります。そのために、ご飯や飲みに行ったりするのもアリかなと。長崎に来てからも割とすぐ、雄次(森田選手)、堅信(星川堅信選手)、英人(弓波英人アシスタントコーチ)とご飯に行きましたね。その時はお酒はなかったですけど、色々喋って、そうすると一気に距離感が近くなるなと思いました。

ーー森田選手は、B1で実績のある熊谷選手から多くを学びたい、と話していましたよ。

熊谷:僕も彼から学ぶことは多くあると思いますし、お互いの良さを出していけたらいいな、と思います。

このメンバーで戦うのは「1年だけ」だから、一日一日を大切に

ーーまた2020年のインタビューから引っ張ってきますが、「嫌われてもいいから信頼されるポイントガードになりたいと思っています」という発言がありました。「嫌われてもいいから」というのは、言いにくいけど言わなきゃいけないことを言う、ということですかね?

熊谷:そうですね。ただ、僕が正解というわけではないので、難しいんですけど…… ダメだと思ったことは、なるべく言うようにしています。秋田の時も一度、チームメイトの外国籍選手に「違う」と思ったことがあって、結構バーっと言いました。ただ、その選手ともプライベートでは仲良くて、ホームパーティーじゃないですけど、彼の家にご飯食べに行ったりとかして。コート上では、言わなきゃいけないと思ったことは言うようにしています。やっぱりプロの仕事なので、全部OK、というわけにはいかないと思いますし。

ーー先ほど、年齢的にも真ん中くらいになってきて、という話をされていましたけど、今29歳の熊谷選手は、年齢的もポジション的にも、チームの繋ぎ役というか、コミュニケーションのハブになることを求められるのかな、と思いました。プレーはもちろんですけど、コミュニケーション、というのがとても大事になってくるのかな、と。

熊谷:そうですね。めっちゃ喋るタイプではないんですけど、僕は。森さん(森川選手)みたいにずっと喋ってる感じではないです(笑)。ただ、何かあればこうね、ご飯行ったりとかできればいいな、って。やっぱり、せっかく1年間、同じチームで戦うので。まず、このメンバーでやるっていうのが…… 次のシーズン、全く同じメンバーでやれるかっていうと、その可能性って限りなく低いじゃないですか。なので、1日1日を大事にして、ギクシャクはしたくないな、って思いますね。オンコートでは絶対バチバチしますけど、オフコートで「あいつ嫌だ」とかいう風にはなりたくないな、って。それがあるとやっぱり、みんな「来たくない」とか「働きたくない」ってなっちゃうので。なので、雄次も言ってたようにご飯行くとか、一緒に何かやるとかっていうのは、僕はアリだなと思っていて。この前も休みの日、雄次から「ゴルフの打ちっぱなし行こうよ」って言われて、一緒に行って来ましたし。そういうのも大事にしていきたいなという風に思います。

ーープロスポーツチームって「期間限定」というか、「終わり」があるのが良いなと思うんです。おっしゃる通り、来年も全く同じメンバーで戦える可能性は、現実的にかなり低い。余命宣告じゃないですけど、「このメンバーで一緒にやれる時間は限られてるんだ」っていう意識があると、日々を大事にする気持ちが自然と高まるのかなと思います。

熊谷:間違いないですね、それは本当に。この世界の厳しさでもあり、良さでもあるかもしれないですね。結果が求められているので。まあ今の時代は一般企業でも、終身雇用とかってあまりないと思うんですけど。

ーー同じような話を先日、星川選手ともしていたんですよ。彼の目から見て、プロバスケットボールの世界っていうのは皆が「周りに良い影響を与えたい」とか「組織の中で価値を発揮したい」っていう気持ちを強く持っている世界なんだと。だから一日一日を大切にできるし、そういう環境にいられるのが心地良い、というようなことを話していました。

熊谷:へえー。あの若さでそれ考えてるってすごいですね(笑)

ーー彼が書いている小説の話とか、大学時代にアルバイトしていた時の話とか、色々聞きましたよ。もうすぐ記事が公開される予定なので、ぜひ読んでください(笑)。話をバスケットに戻すと、熊谷選手はポイントガードとして、これからモーディのバスケットボールを理解していかなきゃいけないわけですけれど、現時点でモーディのバスケットボールに対して、どんな印象を抱いていますか?

熊谷:昨シーズンの11月、僕が対戦相手として試合をした時は、メインの選手が常にボールを持っているイメージで、少しもったいないかなと思っていました。日本人でも能力の高い選手はいましたし、もっと散らしても良いのかな、と思うところはあったんですけど。ただ、森さんや昌さん(狩俣昌也選手)も言ってたと思いますけど、バイウィークごとにバスケットが変わってきてるな、ボールが回るようになってきたな、という印象はありました。それから、ディフェンスがやっぱり激しいな、っていう。失点も多くないチームでしたし、誰が出ても常にディフェンスをハードにやる、っていうところはモーディがまず第一に求めてるんじゃないかな、って思いました。

ーー熊谷選手は以前、自分のストロングポイントとして「ディフェンス」を挙げられていましたよね。ディフェンスにおいて、ご自身の強みは何だと認識されていますか?

熊谷:まずやっぱり、足があるので粘り強くいく、っていうところですね。どうしても上背、身長がない分、横の動きでついていったり、っていうのが求められていると思うので。なるべくそこで頑張ってプレッシャーをかけるのが、自分の持ち味だという風に思います。

高校の同級生、プロ野球の髙橋光成選手と対談も

ーー今日はお時間いただきありがとうございました! ……と言いつつ、あともう少しだけ。森田選手と一緒にゴルフの打ちっぱなしへ行った、というお話がありましたが、ゴルフお好きなんですか?

熊谷:結構やりますね。このシーズンオフも、5回くらいは行ってますね。来週も行きます。オフの日のリフレッシュが今、結構ゴルフになってきていますね。どこでもできる、っていうのもありますし。オフの日くらいはなるべく、違う趣味というか…… めっちゃ趣味がある、ってわけでもないんですけど、今はゴルフですね。休みが2日あったら、1日はゴルフに行く、くらいになってきていますね。

ーーなんか似合いますよね、ゴルフ。今日、ポロシャツを着てるからかもしれないですけど(笑)

熊谷:ああ、確かに(笑)

ーーちょっと日焼けしました? ゴルフ焼け?

熊谷:はい(笑)。ちょっと焼けました。ゴルフです。

ーーそしてやっぱり、体大きくなりましたよね。日焼けもして、ちょっと野球選手っぽい雰囲気もあるような。

熊谷:そういえば内野さん(筆者)、野球の取材をされていたんですよね。西武(ライオンズ)とか行かなかったですか?

ーー西武は、行ってないですね。

熊谷:僕、髙橋光成(投手)が高校で同じクラスだったんですよ。3年間、一緒で。

ーーえ、あの長髪の?

熊谷:そうです。去年、秋田の時に対談もしましたね。YouTubeの企画みたいなので。

ーーなんと! リサーチ不足でした。

熊谷:彼は去年、2回くらい僕の試合を見に来てくれて。岩手にある菊池雄星さん(MLBロサンゼルス・エンゼルス)の施設で彼がトレーニングしている時、秋田のホームゲームを見に来てくれたんです。

ーーそうなんですね。熊谷選手は、他のスポーツも観られたりします? あるいは昔、他のスポーツもやっていたとか。

熊谷:サッカーは少しやってましたね。僕らのクラスはスポーツクラスだったんですけど、当時のサッカー部も今、たぶんJ1に10人くらいいるのかな。

ーーすごい。前橋育英高校は、スポーツの名門ですよね。

熊谷:はい。色んな競技で活躍している選手がいるので、「うわ、頑張ってるな」とか、刺激をもらえますね。やっぱり皆、同じ環境というか同じ職業でやってるので、「負けられないな」と思います。

ーースポーツエリートの集団ですね。

熊谷:そうですね。僕らバスケ部は、最後の3年生の時、インターハイでベスト8だったんですけど、その前の年、野球部が甲子園で優勝したんですよ。光成(髙橋光成選手)が2年生の時、優勝して。サッカーも3年生の時、全国大会で確か準優勝くらいまで行って。だからバスケ部は、すごい肩身が狭かったんです(笑)。ベスト8って、全然大したことなかったんで。他の競技を、すごいな、って思って見てましたね。

ーー熊谷選手も、ライオンズの試合を見に行かれたりしているんですか?

熊谷:いや、まだ行ってないんですよ。光成には「俺は何回も見に行ってるのに、なんで」ってめっちゃ言われます(笑)。こっちでソフトバンク(福岡ソフトバンクホークス)との試合がある時とか行きたかったんですけど、もう終わっちゃったらしくて。どうしよう、って思っています(笑)

ーー来年ですかね(笑)。高橋選手との対談動画、あとで見てみますね。改めて、今日はありがとうございました!

(完)