戦時経済研究 019
仮にという前提で、C国が日本に攻撃をはじめるとして、それはどんな攻撃かをシミュレーションする。専門家の分析では、日本への攻撃はいきなりの全面戦争ではなく、段階的かつハイブリット型になると考えられている。
① 最初にありえるのは非軍事的、グレーゾーン攻撃
これはミサイルよりずっと前段階で起こる。
大規模サイバー攻撃(官庁、電力、通信、金融)
SNSや情報工作による混乱(フェイク情報)
海警船、民兵船団による尖閣への圧力
GPS妨害、衛星妨害
商船妨害、EEZでの海洋資源の占拠
戦争ではないが、実質的な侵略に近い圧力である。これらはすでに世界で常習的に行われている手法で、日本にも部分的には起きている。
② 次の段階はミサイルによる威嚇攻撃(限定的)
日本の本土に対していきなりの全面攻撃は、米軍との全面戦争になりリスクが巨大となるため、威嚇目的の限定的なミサイル発射などがシナリオに含まれる。
想定される種類
弾道ミサイル
巡航ミサイル
高超音速ミサイル(対基地攻撃が目的)
目標として想定されやすいもの
自衛隊基地(航空、海上)
レーダー基地
米軍基地(横須賀、沖縄、三沢など)
都市部を狙うことは、国際的正当性を失うため、第一段階では可能性が低い。
③ 最悪なシナリオでは、全面的なミサイル攻撃に進む
これは国家の存立がかかる大戦争レベルである。
同時多発の弾道、巡航ミサイル攻撃
ドローン群による飽和攻撃
サイバー攻撃と電磁パルス攻撃の併用
有人、無人航空機の大量投入
多くの専門家は、台湾有事が起きてもC国が日本本土に全面攻撃する可能性は極めて低いとしている。
④ 日本への攻撃がまず起きやすいのは沖縄、南西諸島
もし、台湾危機が起きた場合、戦場は日本本土ではなく南西諸島(与那国、宮古、石垣、沖縄)が中心となる。
海空封鎖
島嶼部への上陸を伴わない攻撃(ミサイル、ドローン)
自衛隊基地の無力化
日本本土が巻き込まれるのは、台湾侵攻が大きく失敗した場合など、かなり限定的。
まとめると、
いきなり東京にミサイルが降るというシナリオは考えにくい。実際にありえる順番は、
1. サイバー、情報戦
2. 海警、民兵などのグレーゾーン圧力
3. 南西諸島の軍事的緊張
4. 基地に対する限定的ミサイル攻撃
5. 全面戦争(これはほぼあり得ない)
【コラム】
日本が戦争に巻き込まれ攻撃されると聞くと、多くの人は直感的に、都市部へのミサイル攻撃を思い浮かべるかもしれない。だが、一般に公開されている防衛研究や安全保障分析を前提にすると、その想像は必ずしも現実的ではない。
専門家の多くは、日本への攻撃があるとすれば、それはいきなりの全面戦争ではなく、段階的かつハイブリットな形になると見ている。
最初に起こりうるのは、戦争と呼ばれない領域の圧力である。官庁や電力、通信、金融に対するサイバー攻撃、SNSを通じた情報操作、海警船や民兵船団による尖閣周辺での継続的な示威行動、GPSや衛星通信への妨害、これらはいずれも非軍事的だが、主権を実質的に侵食する行為であり、世界ではすでに常習化している。日本に対しても、部分的には現実に起きている。
次の段階として考えられるのは、限定的な軍事行動である。日本の都市部を直接攻撃すれば、米国との全面戦争を招き、国際的な正当性も失われる。そのため、仮にミサイルが使われるとしても、標的は自衛隊基地やレーダー施設、在日米軍基地などに限定される可能性が高い。これは軍事的勝利というより、政治的・心理的な威嚇を目的とした行動である。
全面的なミサイル攻撃やドローンによる飽和攻撃も、理論上は想定される。しかしそれは国家の存立を賭けた大戦争に直結するため、多くの専門家はその可能性を極めて低いと評価している。
現実に緊張が高まりやすい場所は、日本本土ではなく沖縄や南西諸島である。台湾をめぐる危機が起きた場合、焦点となるのは与那国、宮古、石垣といった島嶼部であり、海空封鎖や基地の無力化が中心になると考えられている。
整理すれば、想定される順序は次のようになる。サイバー、情報戦、グレーゾーンでの圧力、南西諸島の軍事的緊張、限定的な基地攻撃、そして全面戦争。ただし最後の段階に至る可能性は高くない。
当連載シリーズは不安を煽るものではない。構造を冷静に理解することが重要である。戦争は、多くの場合、静かに始まる。だからこそ過剰な恐怖ではなく、落ち着いた認識が求められている。
