不在
とうとう、この時期がやってきたのである。家内は、あるプロジェクトに参画していて。
時折、2カ月ほど都心のホテルで泊まり込んで仕事をし、家にはほとんど帰って来ないのであるが。
その季節が、やってきてしまった。
このプロジェクト。家内が、参画しようかどうしようか迷っているときに、私は、手を上げないようにと提案した。
ところが。
色々と家内は、考えた末、やれるだけやってみようと決断したのである。
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
コジ、さっちゃん(注1)は、家計のことも考えてくれているんだよ。
それが、かなりの激務で。休みは、週に一度しか無い。朝は、いつもの超早朝からではないものの、よるが遅い。
全く、夜昼逆転の生活となる。
正直、よくやると、思っている。
今回のプロジェクトは、一応は夏までで。この秋から、また、新たなフェーズで始まっていくらしい。
そして、年末辺りからまた新たなプロジェクトが、固まって、あるようだ。
こんなことがいつまで続くのかと聞いてみても。恐らくは、あと2年。長ければ3-4年なのではなかろうかと言う。
私も、部署が変わり仕事が変わり、毎日疲労困憊なのであるが。家内は、それに輪を掛けて疲労困憊なのである。
いつまでこんなことを続けられるのだろうかと、ふと、不安に駆られることがある。
家内が、言うのである。
「コジくん、私の夢は、いつか専業主婦になることだよ。家事は、出来ないけれど。コジくんに、全部、やってもらうけれど」
……。
なんのはなしですか。

そんなこんなを家内に語ろうとして後ろを振り向くと、空のソファーが、静かに笑っていた。
昨日から家内は、あるプロジェクトで、都心のホテルに泊まり込んでいる。
シーンとした部屋の空気に、なんだか、心が追いつかない。
昼間のやりとりからすると、家内は、元気なようである。
家内が元気だと、我が家は、明るくて平和である。
だから。
これで、いいのだ。

(注1)さっちゃんとは、家内のことである。我が家の実質の最高権力者なので、別名、女王陛下という呼び名もある。
(注2)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。


