遠出張
コロナ禍までは、出張と言えば、私の専売特許だった。
あのタイミングで、少なくとも私の人生に限っては、180度変わった。
毎週、名古屋なり大阪なり九州あたりには出張し。時には東北や北海道、広島にも行く。
昔からどさ回り営業で。出張三昧の生活は飽き飽きしていたので、落ち着いて仕事をしたいとは思っていた。
それがコロナ禍で出社禁止。リモートワーク主体。経費削減の最たるものとして出張制限がかかった。
あの年の1月末に、私の出張用のキャリングケースを買ったのだが、それはほぼ手に使わなくなったのである。
だが。
それに反し、さっちゃん(注1)は特別なプロジェクトに参画することになり。都心のホテルで泊まり込みでやったり、大阪や名古屋や、特に北海道を含む東の地域に出張を頻繁にするようになった。
彼のキャリングケースは、完全に家内のものとなった。
その変化は良いのだ。むしろ、出張には飽き飽きしていたのは事実なので、自分としては望む方向になった。
だが、強制的にま「行くな」とか「動くな」と言われて押さえ込まれると、必要な動きさえ封じられる。
ここに、大いなる違和感を感じる。目先の削減のみを優先し。本質的な接触の機会は無関係で。会社の方向性として、顧客に対して極めて不誠実だと思うのである。
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
コジは、天の邪鬼の悪ガキでもあるしな。人に矯正されると反発したくなるんだろうな。
うむ。それも、あるかも知れない。
ともあれ、さっちゃんは都心以外の地域への遠出張がよくある。
その時にはマッサージは不要なのだが。
なんとなく釈然としないのである。
なんのはなしですか。

そんなこんなを家内と語らおうとしてソファーに目をやると、家内が脚を指さしてニッコリと笑っていた。
「コジくん、マッサー(注2)すれば、くよくよしなくなるよ。きっと」
マッサージをすると、家内は、上機嫌である。
家内が上機嫌だと、我が家は平和である。
だから。
これで、いいのだ。

(注1)さっちゃんとは、家内のことである。我が家の実質の最高権力者なので、別名、女王陛下という呼び名もある。
(注2)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。

