野良犬
我が家には、職場がたまたま実家から近いという理由で、一緒に住んでいるM(注1)がいる。
どうせならば、我が家に住めばいいと私から提案したのである。
Mは、根は凄く優しい子だが、私にはキツいところがある。
例えば、冷蔵庫にある、もともと食べようとしていたお弁当を、私が食べてしまったらこう言われる。
「コジくん!食べたなぁ!私の許しも得ずに!」
何度かそういう失敗をしたのち、ようやく私も学習して、食べる前には必ずMに許可をもらうことにしている。
ところが。
我が家には、さっちゃん(注2)がいる。
さっちゃんが微妙に、私とMの関係性に入り込んできて平和を乱すのである。
「コジくん、これ、ちょっと古くなっているから、フードロスハンターとして食べてしまって」
そういう誘いに乗り、なんの気なしに食べてしまうと、帰宅してきたMに、烈火のごとく叱られるのである。
「またコジくん、私の食べようとしていたものを、食べたな!」
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
だって、さっちゃんが、いいって言ったんだもんっ!
「私に必ず確認する約束でしょ!」
長女は家があるのに、まるで野良犬のように吠えまくるのである。
なんのはなしですか。

そんなこんなを家内と語らおうとしてソファーに目をやると、家内が脚を指さしてニッコリと笑っていた。
咄嗟に自主練を申し出た。
「コジくん、ちゃんとMに確認しなきゃね。何事もね。約束だからね。はい、罰として倍返しね」
「…」
マッサージをすると、家内は上機嫌である。
家内が上機嫌だと、我が家は平和である。
だから。
これで、いいのだ。

(注1)Mとは、長女のことである。私にはかなりキツいが。根は、優しい子である。
(注2)さっちゃんとは、家内のことである。我が家の実質の最高権力者なので、別名、女王陛下という呼び名もある。
(注2)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。

