『ミラクルをちょうだい』の精神はどこへ?マンジャロをめぐるダイエット商法への違和感
厚生労働省が注意喚起する事態にもなった、糖尿病治療薬「マンジャロ」の美容・痩身目的での不適切な使用。
以前から、SNSなどで「スペ120を目指すならマンジャロ」といった言葉が出回っていることは知っていたので、薬の名前自体は耳にしていました。
しかし、そのマンジャロを製造販売している会社が『イーライリリー』であることを、今回の騒動をきっかけに初めて知りました。
イーライリリーの創業理念について

WEBライティングを仕事の一端としていたこともあり、これまでにストーリーライティングについて学ぶ機会が何度かありました。
そのときに学んで、印象に残っていたのが、イーライリリーにまつわる「ミラクルをちょうだい」というエピソードです。
これは、イーライリリーの創業精神を象徴する話として語られることがある有名なエピソードです。
その内容は、おおよそ次のようなものです。
1860年代のある年の瀬、創業まもないイーライリリー薬局に、ひとりの少女が訪れました。
少女は、小さな手に握りしめていたわずかなお小遣いを差し出しながら、「ミラクルをちょうだい」と言ったといいます。
話を聞くと、少女の母親は重い病にかかっており、医師や周囲の大人たちが「もうミラクル、つまり奇跡に頼るしかない」と話していたそうです。
少女は、「ミラクル」という薬があるのだと思い、それを買いに来たのです。
当時は、まだ迷信や根拠の乏しい薬も少なくなかった時代でした。
それから時を経た1876年、イーライリリー大佐は「人々にとって真に有用な薬の開発」を目指し、米国インディアナポリスでイーライリリー・アンド・カンパニーを設立しました。
科学に裏づけされた、本当に人の役に立つ薬を届けるために──。
この「ミラクルをちょうだい」という少女の言葉は、イーライリリーの創業精神を象徴するエピソードとして広く知られています。
実際に、日本イーライリリーの社員インタビューでも、「『ミラクルをちょうだい』から始まった会社の歴史」に惹かれて入社したという言葉が紹介されていました。
つまり、この話は単なる昔話ではなく、現在の社員にも受け継がれている企業文化の一部になっています。
イーライリリーの創業理念を踏みにじるようなサービス
「ミラクルをちょうだい」と願う人に、必要な薬を届ける──。
それがイーライリリーの創業精神を象徴する物語だとするならば、医薬品を美容商品のように扱う行為は、その理念を自分たちに都合よくねじ曲げた劣悪な物語にしか見えません。
法に触れていなければ、何をしてもよいわけではありません。
医薬品には、それを本当に必要としている患者さんがいます。
そして、製薬会社の研究開発には、長い時間と多くの人の努力があります。
だからこそ、医薬品に関わる人や事業者ほど、薬を扱うサービスには慎重であるべきです。
たとえば、『DMMオンラインクリニック』のように、ダイエット目的でマンジャロの処方・提供を訴求しているようなサービスに対して強い疑問を感じます。
※権利上の配慮から画面キャプチャは掲載しませんが、2026年6月16日現在、該当ページ上でGLP-1/GIP注射薬(マンジャロ)をダイエット目的の選択肢として紹介していることを確認しています。
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薬は、誰かの人生を支えるためにあります。
本当に必要としている人に、本当に必要な形で届くこと。
その当たり前のことが守られる社会であってほしいと思います──。
