第8話「ソアラとの別れ、そして新たな相棒アベニールへ」
GZ20ソアラ。
私にとって、この車は独身時代最後の贅沢な愛車だった。
高級感あふれるスタイルに憧れ、夢中になって手に入れた一台。
そして何より、今の妻と出会うきっかけを作ってくれた、人生の転機ともいえる存在だった。
だからこそ、この車との別れは簡単な決断ではなかった。
本当なら、もっと長く乗り続けたかった。
もっと思い出を増やしたかった。
しかし、その頃、ある噂が耳に入ってきた。
「ソアラはこれから中古車価格が下がるらしい。」
当時はインターネットも普及しておらず、車雑誌やショップで聞く情報が頼りだった。
「売るなら今かもしれない。」
そんな気持ちが少しずつ大きくなっていった。
ちょうどその頃、自動車業界ではワゴンブームが始まりつつあった。
荷物がたくさん積める。
広い室内。
レジャーにもぴったり。
そして私自身も、ただ車に乗るだけではなく、「旅そのもの」を楽しみたいと思うようになっていた。
特に心を惹かれたのが、車中泊だった。
後部座席を倒し、小さな寝床を作って旅をする。
時間に縛られず、好きな場所へ行き、好きな景色を見る。
そんな新しいカーライフに、大きな魅力を感じていた。
そう考えると、ソアラでは少し役不足だった。
もちろん、ソアラは素晴らしい車だった。
しかし、私が求め始めていた楽しみ方とは少し違っていたのである。
悩みに悩んだ末、私はソアラを手放す決断をした。
今思い返しても、胸が締め付けられるような気持ちになる。
車を売るというより、一緒に過ごした青春の一部と別れるような感覚だった。
そして、新しい相棒探しが始まった。
候補はいくつもあった。
スタイリッシュなアコードワゴン。
人気急上昇中だったレガシィツーリングワゴン。
コンパクトで実用的なカリブ。
どの車にも魅力があり、最後まで本当に悩んだ。
その中で私が選んだのは、赤いボディが印象的な日産アベニール。
搭載されていたSR20DEエンジンも魅力の一つだった。
走りと実用性を兼ね備えたワゴン。
まさに私が求めていた一台だった。
アベニールを手にしてからは、カーライフが大きく変わった。
後部座席を倒してフラットなスペースを作り、車中泊をしながら各地へ出かける。
宿を予約することなく、自由気ままなドライブ。
朝日を迎え、知らない土地を走る時間は、新しい楽しみを教えてくれた。
ソアラとはまったく違う魅力が、そこにはあった。
一方で、ソアラに対して少しだけ心残りもある。
本当はもっと自分らしく仕上げたかった。
ホイールを変えたり、少しずつ理想のスタイルに近づけたり…。
そんな夢はあったものの、当時の私には十分な資金がなかった。
結局、大きなカスタムをすることなく手放してしまった。
それだけは、今でも少し後悔している。
そして時代は流れた。
今ではGZ20ソアラも、AE86と同じように価値が見直され、中古車市場では簡単に手が届く存在ではなくなった。
当時は想像もしていなかった価格で取引されているのを見るたびに、「もう少し保管できていたら…」と考えてしまう。
もちろん、それは結果論だ。
当時の私には、その選択が最善だった。
だから後悔ばかりではない。
ソアラは、人生の大切な出会いを運んできてくれた。
そしてアベニールは、新しい趣味と、新しい仲間を運んできてくれた。
ワゴンという世界に飛び込んだからこそ、多くの友人と知り合い、カーライフはさらに広がっていったのである。
一台の車が終われば、また新しい物語が始まる。
私の愛車遍歴も、ここで終わりではない。
むしろ、ここから新しい旅の始まりだった。
次回からは、新たな相棒・日産アベニール編がスタートします。ワゴンブームの中で見つけた、新しいカーライフと数多くの仲間との思い出をお届けします。
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