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猫のように生きていけ

大丈夫だよ、自分で持ってるよ。

ハンカチを差し出そうとした私に次女が言う。

上2人と違って、我が家の次女はしっかり者である。
今のところ反抗期という感じでもない。
長女のときはこの時期に反抗期が始まっており、いまだにありえないほどの口論をするのに、次女はそれをスルーできるチカラと、間に入るチカラさえ兼ね備えている。

我が家の3兄妹はあまり歳が離れていない。
そのせいもあって、仲も良いし、喧嘩もする。
これが兄妹ならではの良さだと思っている。
外では猫を何匹も被って、重たくなったその猫たちを、家に入る前にすべて脱ぎ落として入ってくる。
だから、家にいる時は、3人とも猫そのもののように自由に生きている。

次女は上2人の姿をよく見て生きていた。
私のこともかなり良く見ている。
観察力がすごい。
辛いとも苦しいとも滅多なことでは口にしない。
感謝の気持ち、優しい気遣いはタイミングよくそっとなげかけてくれる。

小学生だよ?大丈夫?出来過ぎじゃない?
最初はいい子だな、すごいな、と思っていたが、途中からちょっと心配になってきた。
このまま大人になったら、心が疲れすぎてしまうのでは、と。
でも、そうやって育ててしまったのは、私である。
ごめんね、上2人の分までちょっと期待をかけすぎてしまった気がした。

もちろん、子供らしい一面もある。
ある日のこと。
家族LINEに次女からこんなLINEが。

だれかー!!
今、家の玄関のドアの前にいるんだけど、ドアにカメムシみたいなのついてて開けられないよー!助けてー!

苦手なものは誰だってある。
何でも我慢しがちな次女が、たまに見せる弱さにホッとする。

そうやって、たまには弱いところを出したらいい。
辛いときは辛いと言ってほしい。
上の子と喧嘩をしていても、何も言わずに我慢していたことが多かったが、何年か前から言い返すようにもなった。

学校でもあまり自分から前に出ていく子ではなく、気づいたら誰かの背中をそっと押してあげていた。
そのことに担任の先生が気づいてくれていたからよかった。
でもね。
そういうことに気づかない人もいる。
気づいても気づかなかった振りをする人もいる。
自分の意見を言わなかったことで、自分の立場が危うくなることもある。
だから、少しずつ自分の意志を言葉にするようにしてほしい。

私、この学校に行きたい。

そう言った次女は、受験する道を選んだ。
自分の意志で。
ずっと、私は何でもいいよ、残ったものでいいよ、だった子が。

普通に考えても、2年は遅れて入った塾。
どれだけ辛い思いをするだろうかと私の方が不安だった。
それなのに、次女は前向きだった。
そして、今、ありえない程の集中力で前に向かって走っている。

マイクラ(ゲーム『マインクラフト』)やりたいな…。

久しぶりに次女がつぶやいた。
受験が終わるまではやらない、と決めてここまで来た。
あと少し。あと少しだよ。

大好きなゲームも封印し、自分の生きたい学校を目指して進む次女。
何も言わなかった子が、言葉にしたら強い。

猫を飼いたいな、といった次女。
でも、猫も好きだけど、犬の方が好き。
そうも言った。

なぜなのかはわからない。
もしかしたら、次女自身が猫なのかもしれない。
だからこそ、犬のようにまっすぐで人懐っこい存在に、どこか憧れがあるのかもしれない。

でも、もし次女が猫だとしたら——。
猫のように自由気ままに、
そして、どんなに高い壁もその強い意志で、スッと乗り越えていけ。


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